【神崎洋治のロボットの衝撃 vol.18】伊勢志摩サミットでPepperが観光ガイドを担当 アプリ概要と機能、予言と言い伝えの考察

Pepperがこの時期に誕生し、伊勢神宮がある三重県のPR担当に抜擢されたことに、もしかしたら特別な意味があるのかもしれない…そんなことを感じる出来事でもあります。

5月に開催される伊勢志摩サミットにおいて、Pepperは三重県 PR担当の臨時職員となって、サミット会場の国際メディアセンター内「三重県情報館(仮称)」で報道関係者を対象に三重県の観光、食、歴史文化などについて案内します。

サミット開催31日前ということで、Pepperロボアプリの公開イベントが開催されましたので、その時の様子と、日本の伝統と革新、予言と啓示に関わる話をします。



Pepperが世界の報道陣に三重県を紹介

Pepperが配置される予定なのはサミットの取材拠点となる国際メディアセンター内にある三重県情報館です。会場には国内外から約5,000人の記者や関係者がやって来ることが見込まれています。

「えっ? たった5,000人が対象なの?」と感じる人も多いでしょう。確かに一般の人や観光客が集まるところではありません。しかし、その5,000人は膨大な数の購読者を持つ世界中のメディア。しかも、サミットですからITや観光関連の報道記者ではなく、世界各国の屈指のメディア陣がやってきます。三重やPepperが記事として紹介されればPR効果は計りしれません。

その三重県情報館は「伝統と革新〜“和”の精神」をテーマにしています。伊勢神宮のように常にみずみずしくて若々しいという常若(とこわか)思想をもとに「伝統を守りつつ革新を積み重ねることで進化してきた」ことをアピールするとしています。

常若の思想では、日々の行いを正しく積み重ねていくことが大切とされています。日々の積み重ねによって革新が生まれ、新しいものへ引き継いでいくことで永続性や普遍性につながります。

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「Pepperはまさに革新、イノベーションにぴったりな存在。これまで三重県について様々なことを勉強してくれた」と語る三重県知事の鈴木英敬氏。イベントの冒頭に登壇


世界的に経済が激動する時期に誕生したAIロボット

伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)、いわゆる神様のお引っ越しが20年に一度行われています。20年ごとに内宮・外宮、14の別宮などの全てを、東西にあるもう一方の敷地に新たに作って神座を遷す遷御(せんぎょ)が行われます。

この20年という周期は宮大工さんの技術の伝承にも意味があり、大ベテラン、ベテラン、新入りの大工さんが3代に渡って日本の心と建築の技術を受け継ぐ機会となっているようです。

このとき宝殿外幣殿や鳥居等、65棟の殿舎や宇治橋も新調され、御装束や御神宝等も新しいものへと引き継がれ、伝統は常若思想とともに新しい装いとして若返ります。なお、古い社殿や木材は他の地方の神社として再利用されたり、修繕用の木材として利用され、エコの精神も育まれてきました。

前回は2013年に神様が東側から西側にお引っ越ししました。東側に神座があるときは「米座」(こめくら)、西側にいる今は「金座」(かねくら)と呼ばれます。この周期に伴って世の中の動きが変わるという、いわば言い伝えのようなものがあります。

米座の期間は平和や安定が訪れ、いまの西側に神座がある金座には世界的に見て社会や経済が激動する時期とされ、1,300年の間、変わらないと言う人もいます。金座は、戦争、動乱、震災、経済的な発展や繁栄、衰退が多い期間であり、世界恐慌や第二次世界大戦、高度経済成長、バブル景気、インターネットの普及などがあげられています。そしてそれは、同時に新しい価値観が生まれやすく、人の考え方も変革に迫られる時期ともされています。

今、ロボットやAIがブームと呼べるような盛り上がりとともに世界経済を大きく変えていこうとしています。この度の金座は社会そのものや価値観が一変するそんな激動のときを暗示しているのか、少しの不安とともにとても大きな期待を感じます。

Pepperは新しいものとして海外のメディアにも注目され、ニュースとしても取り上げられやすいと思うので、革新を象徴する存在のひとつとして世界中に伊勢神宮や常若思想が紹介される機会になれば素敵ですね。



Pepperのアプリの画面を入手

今回の一連のイベントとしては、サミットの100日前にあたる2月16日に「Pepper臨時職員入庁式」が行われ、Pepperが伊勢音頭を踊って会場を沸かせました。そしてこの日は31日前、一ヶ月前イベントとして、“Pepperのおもてなし”として三重県PR担当Pepperに搭載される予定のロボアプリと機能、6つが発表されました。基本的な機能としては、三重県の観光、食、工芸品、歴史・文化などについて日本語および英語で案内するものです。

残念ながら、当日のイベントでも操作してみることができませんでしたので、リリースから概要を紹介します。また、既に完成に近いアプリについては画面の一部を入手しましたので合わせてご覧ください(開発中の画面ですので変更になることがあります)。

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三重県PR担当Pepperのメニュー画面。日本語と英語で用意されている
三重コンシェルジュ
Pepperが自分のセンサーで年齢・性別・感情などのユーザー情報を読み取り、その人にピッタリの三重のおすすめ情報を紹介する機能。紹介されたおすすめ情報はQRコードを読み取ってスマートフォンで持ち帰ることができる。

イベントでは、南海キャンディーズの静ちゃんにPepperが最適な観光場所を紹介した。

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オススメするスポットの表示例

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すべてのアプリ画面で英語版が用意されている
ライブラリ
三重の詳しい情報をカテゴリーごとに閲覧することができる機能。観光、食、工芸品、歴史・文化、自然などの情報を提供できる。掲載する観光地や食などの情報は約70くらい登録される予定。

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「ライブラリ」のトップページ

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観光案内の例
クイズ & 記念撮影
Pepperが三重に関するクイズを出題し、正解数に応じて写真のフレームが豪華になったり、少し安っぽくなったりする、記念撮影機能。撮影した写真をスマートフォンにダウンロードするためのQRコードが発行され、持ち帰ることができる

伊勢音頭(さわぎ)
伝統舞踊である「伊勢音頭さわぎ」をPepperが踊る機能。

それ三重ですダイアログ
世間話をするとみせかけて、何でも強引に三重の話に持っていく会話機能。

フロアガイド
三重県情報館(仮称)のフロアマップを表示し、展示内容を紹介する機能




ライブイベントでは静ちゃんに「榊原温泉」をリコメンド

イベントでは、ゲストとして「みえの国観光大使」の Wエンジン・チャンカワイ氏と小椋久美子氏(共に三重県出身)、さらに南海キャンディーズ(山里亮太氏・山崎静代氏)が三重県に興味がある芸人という名目の賑やかしとして登壇、イベントを盛り上げました。


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お笑いライブ形式の機能イメージデモでは、Pepperの画像認識機能で性別や年齢を推測し、感情認識機能でその時の気分を考慮した最適な観光スポットを紹介する機能が実演されました(お笑い込みで)。

Pepperは南海キャンディーズの静ちゃんに「こっちを向いて僕の目をじっとみつめてください」とお願い。「ペッパー・・スキャ〜ン♪」と言って静ちゃんの様子から「37歳男性、元ボクシング選手」と診断分析、会場から笑いが起こりました。

「今日はかなりお疲れ気味の様子ですので」と表情から読み取れることをアピールした後、「三重県が誇る癒しスポット榊原温泉」をオススメとしてチョイス。「清少納言ゆかりの名湯」「お肌がツルツル・スベスベになることから美肌の湯として知られる」ことを解説し、「ここで疲れを癒してますます綺麗になった静ちゃんはきっと男性からモテモテです」「温泉で疲れを癒した後には高級和牛”松阪牛”(まつさかうし)を食べて更に元気になってくださいね」と付け加えました。


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もちろん、これは演出の入ったライブでしたが、Pepperが持っている性別や年齢を識別する機能や感情認識エンジンを活用して、その人に合った観光スポットを紹介するアプリ「三重コンシェルジュ」のイメージ概要がつかめるものでした。

Pepperは観光案内ロボットとして、多くの自治体や案内所、電鉄会社などの交通機関、駅や空港等で導入がすすめられていることから、この三重コンシェルジュPepperも典型的な導入事例のひとつとなることを期待しています。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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