【書評】林要「トヨタとソフトバンクで鍛えた 0 から 1 を生み出す思考法 ゼロイチ」

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5/27に発売となったGROOVE X代表、林要さんの書籍「トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法 ゼロイチ」を発売日初日に読み終えましたので、簡単にご紹介したいと思います。



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どんな本?

読む前から、林要さんから直接、「中橋さんのお口には、合うと思います。キリッ」とのコメントを頂いていたので、非常に楽しみにしてた一冊なんです。

当然、新会社GROOVE Xのこと、まだ明かされていない秘密のロボットのことががたくさん書いてあるのかと思っていたわけです。しかしまず本の内容からして予想外。



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なんとゼロからイチを生み出す思考法についての本、つまりロボットの本ではなく、ビジネス書、イノベーションに関する発想法の本なのでした。

このテーマを大企業のサラリーマンだった林要さんが書くというのがとても興味深いです。僕はイノベーションの本は過去たくさん読んできましたが、その著者は研究者や起業家が多いですよね。そして研究者が書くものはデータを分析して説明しておりパッションの部分は足りてない物が多いし、起業家が書く物は読み物としておもしろくても、その人がスーパー過ぎて実際には参考にならないことが多いなと思っていました。かといって、成功してない起業家の本は読んでもしかたないでしょうしね。

さて、一体どんな本なんでしょう。読み進めていくことにします。



感想

数時間で一気に読み進めました。林要さんは元々エンジニアということで理路整然とした語り口で、しかもとても易しい言葉で解説されています。つまり理解しやすいんです。

本は一貫して「0から1を生む出すための方法論」。この「ゼロイチ」を林要さんみずらから経験してきた言葉でリアルに語っていきます。

本を読んでまず感じるのは、林要さんのいままでの仕事経験はとてつもないものだということ。トヨタのエンジニアとしてスーパーカー「レクサスLFA」の開発に携わり、そして自動車技術の頂点「トヨタF1チーム」に異動して活躍、その後ソフトバンクアカデミアで勉強しながら孫正義から「Pepper開発リーダー」を任され見事にプロジェクトを取りまとめて世の中にPepperを送り出す・・・こんな経験積んでる人は彼しかいません。普通じゃないです。

ただ本を読み進めていくと林要さんが体験してきたことは、誰もがするような失敗、挫折、苦労も多く含まれています。その経験を元に着実に成長してきて、結果を出してきたということなんですね。だったら僕らも失敗を活かして次に繋げられれば、新しいモノを生み出せるのではないか・・・そんな気分になります。

彼がまとめたノウハウは全22項目。以下項目の一部抜粋です。

●「無意識」がゼロイチの主戦場である
●「おっちょこちょい」は美徳である
●「不満」の多い人ほどゼロイチ向き
●「制約条件」こそアイデアの源である
●「イノベーションのジレンマ」は前提条件
●「失敗してない」のは危険な兆候
●「物語」がゼロイチのエンジンである
●ユーザーの「言葉」を信じない
●「効率化」がゼロイチを殺す
●「計画」と「無計画」の間を進む
●プロフェショナルな「素人」が最強
●「無理難題」こそチャンスである

意外性にあふれたトピックス。なぜそうなのか気になって読みたくなりませんか?

ゼロイチに重要なポイントは発想法であったり、組織論であったり、キャリア形成であったり、多岐に渡ります。この本を読んですぐにゼロイチができるというものでは多分ありません。この本をヒントに実践を繰り返して成長すれば、ゼロイチができるようになる。そういうものだと思います。

冒頭で林要さんが語る「ゼロイチこそが人間の本能にかなった仕事」という主張は、僕には非常に納得できるものがあります。やりたいからやってるんであって、ゼロイチせよ、って人に言われてやることではないんですよね。

ということで、大企業にお勤めでイノベーションを起こしたい人、大企業でなくてもポジティブに仕事したいビジネスパーソンにはきっと役に立つ本だと思います。新しいコトを実現するための貴重なヒントがこの本にはあります。

特にロボット業界で働く人はそもそもゼロイチの仕事が求められているわけなので、是非本書を読んもらえればと思います。

購入はAMAZONからどうぞ。



起業家視点で考えると「マイナスからゼロ」

僕はかれこれ起業家歴12年ぐらいで、現在2回目の起業をしたばかりです。その僕自身の体験から思ったことは、起業は「ゼロ」からスタートという気分では全くないということ。起業は「ゼロ」ではなく「マイナス」からスタートなんです。

大企業の中でイノベーションを起こすのはまさに「ゼロイチ」のイメージだと思います。給料もあるし手元キャッシュは傷みません。失敗しても評価が下がるぐらいで、生活の不安はありません。

一方起業では、資本金を最初に出す必要があるし、貯金がなくなった上に、しばらく役員報酬が出ないなんて当たり前だし、個人保証でお金借りたり、会社も利益を出せるようにするまでにはとてつもない労力と運を必要とするのです。つまりかなり個人的にはとてつもなく「マイナス」のスタートなんです。そしてハイリスクです。

起業家は「マイナス」をまず「ゼロ」にして、そこから「イチ」にする必要があるのです。そして僕の経験では「ゼロイチ」より「マイナスからゼロ」にするほうがはるかに難易度が高いと思っています。

またベンチャー企業はクリエィティブなものを生み出すゼロイチ仕事だけにフォーカスできるほど、組織が整ってないのが常で、あらゆる雑務をこなしながら経営を進める必要があります。ゼロイチ発想にフォーカスして、プロダクト・サービス開発に全力投球できればいいんですが、現実は資金調達、採用、営業といったあらゆる仕事も全て同時進行しながらのカオス状態なんですよね。なんか愚痴みたいになってきましたけど、楽しいんですよ、起業は!(^ ^)

それは多分、起業が「会社というプロダクトをゼロイチする」という仕事であり、人間の本能にかなった仕事のひとつだからだと思います。

そう考えると、製品のゼロからイチを経験した林要さんが、次にGROOVE Xを起業して会社というプロダクトをゼロイチする、という新たなにマイナスからのチャレンジをしているのも、自然な流れに思えてきました。



GROOVE Xのロゴが!

本書にはGROOVE Xのことはあまり触れられていません。しかし、表紙にはPepperの元開発リーダーとして、Pepperとのツーショットの写真がありますが、胸のディスプレイに写っている画像はさりげなくGROOVE Xのロゴ!



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いやぁ、控えめというか、通好みな演出に鳥肌たっちゃいました(^ ^)



ネタバレ!

なお、以下ダイヤモンド社のコンテンツで一部無料で読めますので、どんな本なのか事前に見たい人は以下をどうぞ。

Pepper元開発リーダーが明かす、「少しバカ」でも「○○」な人ほど結果を出す理由

Pepper元開発リーダーが明かす、「非エリート」だからこそゼロイチができる理由

Pepper元開発リーダーが初めて明かす会社で「ゼロイチ」を実現する唯一の鉄則



次回作もあるといいな

林要さんの過去の経験が惜しみなく詰められた本書。次の作品はGROOVE Xでのゼロイチ体験を是非書いていただきたいなと思っています。

では、また!



▽ GROOVE X 株式会社
HP:http://www.groove-x.com/ (サウンドON推奨!)
FB:https://www.facebook.com/groovex.robot/
AMAZON:http://www.amazon.co.jp/…



About the author / 

中橋 義博
中橋 義博

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。

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