第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソンday3に行ってきました。(前編)

6月12日(日)、サムライスタートアップアイランドで開催された「第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソン day3」に行ってきました。

こちらは IBM Watson 日本語版を活用したソリューションやアプリケーションを作成するハッカソン。今回が3回目で、過去の開催記事はこちらをご覧ください。

 第2回 IBM Watson日本語版ハッカソンレポート – ロボスタ
 https://robotstart.info/2016/03/15/kozaki_shogeki-11.html

今回行ってきたのは、Day3です。

今回のIBM Watsonハッカソンも前回同様Day1-4の日程となっており、5月28日(土)のDay1は事前ワークショップ&アイデアソン、6月11日(土)〜12日の(日) Day2-3はハッカソン、6月29日(水)のDay4が決勝戦となります。

今日のDay3ハッカソンで参加13チームの中から決勝進出する5チームが決まります。

第3回目の公式テーマは「Smart Japan with Watson」、自由選定テーマは「スマート〇〇」。〇〇には「人々の生活を豊かにする」ことを基準とした自由な単語を各自入れてOKです。

今回のハッカソンでは、以下の IBM Watson日本語版APIいずれかを1つ以上を必ず使うルールとなっています。

Natural Language Classifier (NLC)
自然言語を理解し、学習に基づき適切な「意図」を返答(自然言語分類)

Retrieve & Rank (R&R)
機械学習アルゴリズムを利用した検索エンジン(検索&ランクつけ)

Document Conversion (DoC)
テキスト文書へのフォーマット変換(文書変換)

Dialog (DLG)
アプリケーションとエンドユーザーが対話する会話応答システム(対話)

Text To Speech (TTS)
テキストの音声変換(音声合成)

Speech To Text (STT)
音声のテキスト変換(音声認識)


会場のサムライスタートアップアイランドに来ました。発表前の追い込みでみんなもくもくと作業を行っています。

今回は「Pepper連携も大歓迎」ということで、Pepperを使ったソリューションを開発するチームもいくつかあります。個人的にはPepperを活用した作品に注目しています。

ということで、タイムアップ。ここから発表の時間です。

まずは、今回の審査員は、ソフトバンク、日本IBM、今回のハッカソンのメンターの方々です。

審査基準は以下の割合トータル100%となります。それぞれの項目が配分されていて、総合力が問われます。

 30% アイデア
 30% ビジネスモデル
 20% アプリプロトタイプ 
 10% コンテンツ有効性
 10% プレゼン能力

今回の発表は以下の13社。最後の5社がPepperを使ったプレゼンとなります。

  1. 情報技術開発株式会社 「スマートZoo会話」
  2. コムチュア株式会社 「スマート会議」
  3. リコーITソリューションズ 「スマートイノベーション」
  4. アクセンチュア株式会社 「スマート行政」
  5. 株式会社インキュビット 「スマートTV AD」
  6. D.A.Consortium 「スマートQ&A」
  7. システムリサーチ株式会社 「スマート自治体」
  8. 株式会社セイノー情報サービス 「スマート長距離運転パートナー」
  9. アビールコンサルティング株式会社 「スマートホテル」
 10. イサナドットネット株式会社 「スマート介護」
 11. 株式会社プロトコーポレーション 「スマート商談」
 12. 株式会社ジェイアール東日本企画 「スマートおもてなし」
 13. 富士フイルムICTソリューションズ株式会社 「スマート職場」



■1. 情報技術開発株式会社 「スマートZoo会話」

ハッカソンのテーマ「人々の生活を豊かにする」を「いつも楽しい動物園の創造」としました。

動物園を楽しむために以下の3つのアプリケーションを提案します。

 (1) おすすめマップ:最適な見学ルートを提案
 (2) アニマルチャット:撮影した動物と会話
 (3) あの日の思ひ出:会話ログの保存、活用

動物園の課題と本サービスのコンセプトです。

来場者にとっては、混雑すると説明ボードが見られない、動物の名前が分からないと調べようがない、子供の知的好奇心は無限大で親が全ての質問に答えられない、広すぎて1日では回りきれないという問題があります。

これらをWatsonを使って解決します。

これにより動物園は、顧客満足度の向上、来場者数の増加が期待できます。また、来場者の要望や知りたいことを引き出すことも出来ます。

ビジネスモデルは、動物園にコンサルティング・導入・保守を提供することで、これらの費用を頂きます。動物園は費用の対価として Watsonを活用したより良いサービスを来場者に提供し、来場者の増加による入園料・グッズ売り上げの増加でペイするという形です。

このシステムは動物園に限らず、水族館・博物館・観光・美術館でも活用することが可能です。

アーキテクチャーの一覧図です。

スマートZoo会話では、外部情報連携による提案情報の広がり、ユーザー情報を加味した提案や情報発信、SNS連携によるトレーニングデータ・改善点の収集などの今後の展開も期待できます。

デモです。

撮影した動物の画像をアップすると、タイムライン形式でのやりとりが始まります。Watsonを活用して写真から動物の名前を教えてくれたり、動物の特徴を教えてくれたりもします。

発表は以上です。

質疑応答です。

Q)ユーザにサービスを使ってもらうための継続率はどう考えてますか?

A)ルートはユーザ情報に紐付いているので、何回行っても別のルートを提示することができますので、新鮮な気持ちで楽しむことができます。そして、一度訪れても新しいニュースが動物園から発信されるので「猿の赤ちゃんが生まれました」といった、前回とは違う情報を受け取ることでリピーターになってもらいます。

質疑応答は以上です。



■2. コムチュア株式会社 「スマート会議」

今回 Watson を使って実現したいことは、会議の内容を分かりやすくまとめること。その理由は、議事録を作成することにトータルで膨大な時間を要しているからです。

ビジネスのターゲットは、全市町村(1789自治体)としました。その後の広がりとして、市町村関連団体(学校など)や、一般企業も検討しています。

どうして、市町村議会をターゲットにしたかというと、ある程度議事内容に定型化が可能、属人化の排除が必要、議会の内容を住民に分かりやすく伝える必要、負担の大きい人件費コストの削減が可能だからです。

例えば、ある自治体の議事録作成費用を算出すると、年間で約76万円の支出とあります。これが Watson で削減できるのであればいいですね。

市場進出の戦略です。

まずは無償か廉価にて5市町村程度に提供し、導入実績を作ります。変更してブラッシュアップを行い、他の市町村への横展開を行います。その後は、市町村のITコンサルを行っているベンダーと協業検討します。

デモです。

発言内容のファイルを読み込みます。すると、Watsonが主張発言の一覧を要約してくれます。

発表は以上です。

質疑応答です。

Q)テキストの要約はどのように行っているのですか?

A)Watson の Natural Language Classifier (NLC) を使い、過去の議事録を学習データとしました。

質疑応答は以上です。



■3. リコーITソリューションズ 「スマートイノベーション」

会社で新ビジネスを考えなければならない時、いろいろな壁にぶち当たります。新しいアイデアをどうやって考えるか、考えついたアイデアが既に世の中にあった、上司に実現性はあるのかと言われたなど。

Watson をつかって実現したいことはアイデア創造のスマート化です。
アイデアを考えついた時に、自然言語で問いかけると、特許情報のデータから関連しそうな特許情報が返ってくるというものです。

特許情報から発送のヒントを得るためには、専門家の知識なしで特許情報を検索できる仕組みつくりと、新しい発想のヒントを生み出す仕組みつくりが必要です。

今回の「スマートイノベーション」を使うことにより、以下のようなメリットが生まれます。

ビジネスモデルと市場は以下の通り。

デモです。

「iPhoneで使っている特許」と検索してみます。すると、10件のヒントになる特許凶報がヒットしました。

発表は以上です。

質疑応答です。

Q)今も特許情報検索のシステムはありますが、それと違う点を教えてください。

A)知財担当の知識を自然文で検索することができるのが持ち味となります。

Q)「遠からず、近くない特許情報の取得」について、技術的に補足説明をお願いします。

A)膨大な特許からNLC (自然言語分類)を使い情報を探します。元ネタはWikipediaを使っています。その後R&R (検索&ランクつけ)を使った上で、知財担当の知見も加えます。この知見も加えるのがミソです。

質疑応答は以上です。



■4. アクセンチュア株式会社 「スマート行政」

今注目の東京都知事による政治資金不正問題。国民の97%が納得しないという調査結果もあります。

政治不信の今、必要とされているのは「厳しい第三者の厳しい公平な目」と言えますWatson活用により、機械的に学習を行いチェックの精度を上げ、スピードも人間の何倍もの速さで行うことができます。また、ソーシャル分析により、国民の意見も今後反映できる可能性もあります。

資金不正問題で失われる経済的損失は以下の通り大きい金額です。「スマート行政」では、この中の「市民オンブズマンの発見」「包括外部監査レポート」の部分を担います。

日本における議員数は合計で 35,193人。

各議員の年間経費見積もりは合計で 1,074億円となります。

システムは、各議員のセグメント毎に機能と価格を分けての販売を検討します。

システムの構成図です。

デモです。

収支報告のファイルを読み込ませると、その中から不適切と思われる支出を確率とともに抜き出してくれます。

発表は以上です。

質疑応答です。

Q)不適切と判断した根拠を示すことはできますか

A)システムでは適切・不適切・不正の3段階があります。不適切かの学習データは、今回は報道のデータを使いました。将来的には裁判所のデータを学習データとして使いたいと考えます。また、各自治体ごとに手引書があるので、それも学習データとしたいです。

質疑応答は以上です。

前編はここまでです。中編に続きます。

▽第3回 IBM Watson 日本語版ハッカソンday3に行ってきました。(中編) – ロボスタ

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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