障害のある学生たちにICT教育を行う「DO-IT Japan」でソフトバンクがPepper講義

8月7日-11日に東京大学先端技術研究センターで開催された、障害のある若者の大学進学・就職を支援する大学体験プログラム「DO-IT Japan」の夏季体験プログラム「DO-IT Japan2016」にて、小学生から高校生を対象にした「Pepperのプログラミング教室」が開催された。

DO-IT Japanは、障害のある若者を、ICTの力で支援していく取り組み。読み書きができない子や鉛筆を握ることができない子ども等に対して、PCやタブレットの活用法を教えることで「社会が作る障害」を乗り越える術を教えている。彼らは学習するための一般的な思考能力を持ち合わせていながらも、読み書きに手一杯になってしまうため、学ぶという行為までなかなか辿り着くことができないのだという。


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今回ソフトバンクグループが協力したPepperのプログラミング教室も、そんな若者たちをテクノロジーで支援する取り組みの一環だ。仮に識字ができない子どもであっても、ビジュアルプログラミングできるというのがPepperのSDK・「Choregraphe(コレグラフ)」の素晴らしさ。ボックスを並べ、つなぎ、Pepperの動きにストーリーを与えていく。「Pepperに喋らせる言葉」の入力はキーボードや音声入力機能で行い、読めないマニュアルはiPadの音声読み上げ機能を活用し、問題に対応していく。

彼らは、よく笑い、よく遊び、勉強を楽しんでいる。授業中の賑やかさも、一般的な学校と同じ風景だ。しかし、彼らに対し社会は「障害」を作っている。文字が読めないことにより進学が困難になり、就職が阻まれる。

講師を務めたブリジアス株式会社の白坂さんはこう語ってくれた。
「普段学生向けに講義を行うこともありますが、この子たちは他の子供達以上に譲り合いや思いやりの心を持っていると感じました」


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5〜6名の各班に与えられたPepperは1台のみ。誰が独占するわけでなく、講師から指示を与えたわけでなく、自分のプログラムを試すタイミングでのみPepperを使い、それ以外は他の人に譲っていた。

今回行われた授業はPepperのプログラミング入門だ。講師がPepperの機能やコレグラフの使い方を説明し、子供達がデモンストレーションを作っていく。一人で黙々と作業を進める子もいれば、チーム全員でプログラムを作っていくチームもある。印象的だったのは、皆楽しそうに授業を受けていること。

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先端科学技術研究センターの平林ルミ氏はこう語る。「みんな普段よりも楽しそうに授業を受けていますね。普通の授業だと集中力が切れて席を立ってしまう子もいますが、今回はそれも少ないです。ロボットがいることで楽しく学んでいるんだと思います。」

Pepperを通して、プログラミングを楽しく学ぶ。これはソフトバンクロボティクスがPepperを通じて与えたい価値のひとつだ。

今年の5月にPepperの「Android SDK」への対応が発表された。元々使われていたSDK・コレグラフでも開発ができるとはいえ、マーケットプレイスが解放されている「Android SDK」でのアプリ開発が主流になっていくことだろう。

コレグラフを使うことで、エンジニアではなくても開発ができることは、Pepperの魅力の一つだった。しかしコレグラフが主流ではなくなり、いずれ忘れ去られてしまうとしたらそれは悲しいことだと取材をしながらしみじみと感じた。

プログラミング講座の最後には、子供達による制作物の発表が行われた。空港に置くことを想定して乗客に向けた搭乗案内をするPepperや、まるでPepperに自我があるように「僕のこと好き?」「もう帰りたいの?」などと聞いてくるPepper等が発表された。

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中には、ほんの1時間の間に複雑なプログラムを書いてしまう子もいた

文字の読み書きができない子でも、変わりなく生活することができ、進学も就職もできるような世の中。テクノロジーは、そんな世の中を作ることができる。ロボットは、障害のある子供達にどのような貢献をしていけるのだろうか。

ロボットに関わるすべての方々に考えてもらいたい課題だと感じた。

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ロボットスタート株式会社

ロボットスタートはネット広告・ネットメディアに知見のあるメンバーが、AI・ロボティクス技術を活用して新しいサービスを生み出すために創業した会社です。 2014年の創業以来、コミュニケーションロボット・スマートスピーカー・AI音声アシスタント領域など一貫して音声領域を中心に事業を進めてきました。 わたしたちの得意分野を生かして、いままでに市場に存在していないサービスを自社開発し、世の中を良い方向に変えていきたいと考えています。

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