【中国ロボット市場最前線 vol.02】中国の産業用ロボット最新事情

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中国は今、製造力のアップグレード、製品品質の向上(均一化、高度化)、人件費の高騰、デジタル化シフトなどの課題を克服するために、「製造大国」から「製造強国」へシフトを進めています。そこで、2015年5月8日に「中国製造2025」(Made in China 2025)計画を発表し、よく言われているインダストリー4.0の発展促進戦略を打ち出しました。

この計画で推進されるロボット産業の重点突破、及び健全で持続的な発展をアクションに落とし込むために、2016年4月27日に「ロボット産業発展計画(2016~2020年)を発表しました。これに伴い、各地方政府も様々な産業用ロボットの発展促進施策を打ち出し、産業用ロボット発展の追い風になりつつあります。
一方でいまロボットブームになっており、投資が過熱ではないかと危惧する声も出てきています。

このロボットブームの背景には、中国は2013年から世界で最大の産業用ロボット市場となっていることに対して、国産ロボットの発展が日本・欧米と比べて、かなり遅れている状態が挙げられます。
いまは上流産業としての精密減速機、サーボモーター、コントローラなど、中核部品はほとんど海外メーカーに依存しており、国産中核部品が市場に出されているものの、海外製品と対抗できるレベルまでにはまだまだ道のりが長い現実。本土企業は、産業振興のアプローチを模索しながらチャレンジが始まっています。
今回は、工業ロボット産業の最新状況について紹介していきます。




国際ロボットメーカー:生産現地化及び現地企業との協業推進

よく知られているABB、ファナック、安川電機、クーカのロボット産業「四大名門」は、中国でのローカル化(研究開発、生産、販売)を進めています。


1.ABB

ABB社は「四大名門」のなかで、最も規模が大きい会社です。1995年に北京でABB(中国)投資有限公司を設立。2005年に上海にロボット生産ラインを建設するとともに、グローバルロボット研究開発センターを発足。2006年にグローバルロボット業務の本部を上海に設置。2007年にABB(中国)は、売上高・契約数・従業員数は各国・地域の首位となり、グループ業務のリーディングエリアとなってきています。
2010年に「In China, For China & The World」といったローカル戦略を打ち出し、全面的にローカル化を進めた結果、2016年現在、研究開発、製造、販売及びエンジニアリングサービスなど体系的な業務を展開し、従業員1.8万名、ローカル企業40社、全国147都市のセールスとサービスネットワークを保有しています。


2.ファナック

ファナックは、中国企業と合資会社を創る形で中国に進出してきました。1992年に北京機床研究所と合資会社北京発那科機電有限公司を設立し、中国でファナック製品の販売、メンテナンスサービス、技術サポート、トレーニングなどを提供し始めました。
また1997年に上海電気集団と合資会社上海発那科機器人有限公司を設立し、ロボットの生産・組立、メンテナンスサービス、販売などに注力しています。2015年末までは、上記2社を中心に、サービスセンター20か所、トレーニングセンター4か所、応用センター30か所を持ち、従業員500名規模になっています。



3.安川電機

安川電機は、完全子会社で進出する一方、中国企業と合弁会社のアプローチを取ってきました。安川電機(中国)有限公司を中核に、複数の事業会社を設立し、安川製品の生産、販売、メンテナンスサービスを提供しています。
1996年に中国鋼鉄大手の首鋼集団と安川首鋼機器人有限公司を北京で設立し、安川ロボットの販売を展開してきました。
2015年に中国家電メーカー大手の美的集団と広東安川美的工業機器人有限公司を設立し工業ロボットビジネスを、広東美的安川服務機器人有限公司を設立しサービスロボットビジネスを、発足しました。長期経営計画「2025年ビジョン」には、中国でのローカル開発体制の構築、中国常州工場の現地対応力・生産力の強化、中国瀋陽工場でのサーボ生産能力増強による海外生産比率の向上などの方針も定められ、開発、生産、販売のローカル化が進んでいます。



4.クーカ

クーカ社は、2000年から中国に進出し、クーカロボット(上海)有限公司を設立し、中国でロボットの開発販売を展開してきました。
ローカル化の一環として、2014年に敷地面積が2万平方メートルでドイツ本部以外唯一のロボット海外工場が上海で発足し、ロボット最大市場の中国においてユーザ企業にとってより便利なサービスを提供してきました。2015年に入り、中国家電メーカー大手の美的集団による買収が進んでおり、順調であれば2017年3月末までは買収手続きが完了する見込みです。




大手家電メーカー:ロボット領域への進出

家電メーカーは、自社競争力強化の一環としてロボット及び知能装備の導入(製造知能化)を推進する一方で、ロボット領域のビジネスにも積極的に進出していく動きが見受けられます。美的(Midea)は、企業の買収や協業などによりロボット産業に参画。格力(Gree)は、独自でロボットの研究開発を推進。ハイアール(Haier)は、自社及び外部リソースを生かして特にサービスロボットに注力。長虹(Changhong)は、協力会社と連携しながら工業ロボットもサービスロボットも発展していく模様。以下は、各家電メーカーの動きです。
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ロボット専門会社:技術研究開発の投資が加速

工業自動化に伴い、運搬、検査、識別、溶接、監視等、産業用ロボットがだんだん工場の中で利活用されてきました。以下の典型的なロボット製品をもとに紹介していきます。


1.運搬用ロボット領域

運搬ロボットは、中国の工場で最も活用されているロボットの一つで、多くの工業ロボットメーカーがこの領域に参入しています。例えば、広東嘉騰機器人自動化有限公司(漢字略称:広東嘉騰、英字略称:Jaten)、瀋陽新松機器人自動化股份有限公司(漢字略称:瀋陽新松、英字略称:Siasun)、上海沃迪自動化装備股份有限公司(漢字略称:上海沃迪、英字略称:Triowin)などの会社は運搬ロボットを生産・販売しています。
広東嘉騰社は、中国搬送ロボット領域のリーディングカンパニーです。AGV領域において製品シリーズが出荷されています。2016年3月に、磁気ナビAGV(Magnetic Navigation AGV)製品「Bumblebee」と慣性ナビAGV(Inertial Navigation AGV)製品「 White Dolphine」は、Red Dot Design Awardを受賞しました。

以下の「Bumblebee」の様子です。

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2.溶接用ロボット領域

溶接領域には、多くのロボット企業は進出しています。瀋陽新松機器人自動化股份有限公司、安徽埃夫特智能装備有限公司(漢字略称:安徽埃夫特、英字略称:Efort)、広州啓帆工業機器人有限公司(漢字略称:広州啓帆、英字略称:Yardway)などは主要なプレーヤーです。

瀋陽新松社は、中国科学技術研究院瀋陽自動化研究所から生まれた中国ロボット産業のリーディングカンパニーであり、中国国産ロボット領域の№1企業です。ロボットの製品ラインも豊富で、工業ロボット、移動ロボット、クリーンルーム(真空)ロボット、特種ロボット、知能サービスロボットを主力製品として取り組んでいます。
以下は溶接ロボットの作業の様子です。

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3.塗装ロボット領域

塗装ロボット領域では、安徽埃夫特智能装備有限公司、江蘇滙博機器人技術股份有限公司(漢字略称:江蘇滙博、英字略称:Huibo)、広東利迅達機器人系統股份有限公司(漢字略称:広東利迅達、英字略称:LXD)などの会社は代表的なプレーヤーです。

安徽埃夫特社は、もともと中国奇瑞自動車(Chery)の設備部門から生まれ、「自主創新」といった方針のもとで奇瑞自動車の自動化に携わってきて、いまは社会一般に向けて通用ロボット、塗装ロボット、ハイエンド金属加工及び自動車装備自動化領域にフォーカスしてビジネスを展開しています。2015年にイタリアのCMA社を買収し、塗装領域の競争力を強化し、2016年にまたイタリアのEVOLUT社を買収しハイエンドロボットのインテグレーション領域に参入し始めました。

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4.研磨ロボット領域

研磨ロボット領域では、広東利迅達機器人系統股份有限公司、青島創想機器人製造(漢字略称:青島創想、英字略称:Chuangxiang)、上海新時達機器人有限公司(漢字略称:上海新時達、英字略称:STEP)などは代表的なプレーヤーです。

広東利迅達社は、研磨、溶接、組立、搬送などのロボットの研究開発・生産・販売業務を展開しており、ABB社との協業も進めています。そして北京航空航天大学、華南理工大学と共同で「金属表面処理ロボット応用技術工程センター」の建設を進めています。研磨ロボットについては中国国産ロボット企業の№1とされています。

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5.成型ロボット領域

成型ロボットは、製造工場で幅広く利用されています。いま、青島科捷機器人有限公司(漢字略称:青島科捷、英字略称:Kinger)、寧波偉立機器人科技有限公司(漢字略称:寧波偉立、英字略称:Welllih)、広東拓斯達科技股份有限公司(漢字略称:広東拓斯達、英字略称:Topstar)などの会社は成型ロボットの開発・生産・販売に取り組んでいます。
青島科捷社は、工業ロボット、サービスロボット及びロボット技術の応用を中心としたトータル・アートメーション・ソリューションのプロバイダーとしてロボットの研究開発、製造、販売を行っています。2004年に中国初の成型ロボットを出荷し、2011年に日本にも輸出しています。

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中国ロボット市場最前線は短期連載(全10回の予定)です。
更新時はロボスタ・メールマガジンでもお知らせします。
お楽しみに!


About the author / 

Dequan Tang
Dequan Tang

イーパオディング株式会社代表取締役社長、北京璞華機器人(ロボット)情報技術有限公司CEO。東京・北京にてITシステム化、日中間ビジネス、グローバルビジネスコンサルティング業務に十数年間携わり、いま中国でロボットのメディア、展示、販売、研究開発を行うロボット事業、及び「個客」ビジネスの「自由自在」を支援するグローバルリサーチ、コンサルティング、インターネットサービス事業に従事。IT関連の講演・著書多数。 Email:tang_dequan@epaoding.com

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