公立小学校で初めて人型ロボットのプログラミング授業を開催 子供たちの笑顔とロボットがある教室

渋谷区の広尾小学校、小学校3年生のある授業で、ソフトバンクロボティクス製の小さなロボット「NAO」(ナオ)が子供たちに質問しました。
「リンゴ、たす、ペンは?」
ひとりの子供が答えます。
「わかりません」
NAOが正解の「アッポー、ペン」と言うと、子供達の笑い声が教室に響きます。

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NAOはもう一度子供たちに同じ質問します。
「リンゴ、たす、ペンは?」
子供たちは今度は声を揃えて笑顔で答えます。
「アッポー、ペーン!!」
NAOが回答に反応して「ビンゴ!!」と答えます。

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NAOが「リンゴ、たす、ペンは?」と質問したのは、子供たちがそうプログラミングしたからです。そして、相手が「わかりません」と回答すればNAOが正解を、相手が正解を答えればNAOは「ビンゴ!!」と答えるようにプログラミングしたのも子供たちです。
NAOに発話させる質問に流行をすぐさま取り込むのも、子供たちならではの柔軟な発想なのかもしれません。

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3回の授業でロボットとの会話をプログラミング体験

10月29日(土)、広尾小学校ではロボット「NAO」を使ったロボット・プログラミング教室が行われました。
子供たちは複数のグループにわかれてノートパソコンを囲み、NAOを動作させるプログラム「コレグラフ」の操作方法を学びました。

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コレグラフはドラッグ&ドロップの操作で子供たちが指定したとおりにロボットが動くよう、指示をすることができるソフトウェアです。例えば、ロボットが手を振ったり、両手を拡げたり、ロボットからみんなに質問をさせたり。NAOがみんなに質問する言葉はキーボードで子供たち自身が入力します。回答の内容によって次の反応や返す言葉を変えるよう、「分岐」の指定もできます。

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ちなみにこのNAOは、ソフトバンクロボティクスの「Pepper」(ペッパー)とは同じシステムで動作する兄妹ロボットです。コレグラフでプログラミングした内容は、NAOでもPepperでもほぼ同じように動作させることができます。



ロボットの画像認識機能を体験

この授業で子供たちは、NAOの画像認識機能も体験しました。
予め用意されたカードには、バナナ、リンゴ、タマゴ、米などの写真が印刷されています。子供たちがひとりずつその写真をNAOの顔の前に差し出すと、NAOは画像を認識して「バナナですね」「タマゴですね」と回答します。

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NAOが正確に画像を認識するにはコツがあります。カードを差し出した位置や距離によって、正しく認識できなかったり時間がかかったりします。

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しかし、それは問題ではありません。むしろ、ロボットの能力はなんでもすぐに認識して理解できるほどにはまだ成熟していない・・カードを見せる側が工夫をしないとうまく認識できないこともあるという実状を、子供たちが理解することもまた教育の一部です。

同様に冒頭で紹介した会話も、グループによってはなかなか上手くいかないケースもありましたが、教育という視点でみれば、プログラミングや運用で工夫して、上手に会話していく方法を試行錯誤していくことも重要と感じました。

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公立小学校では初めての試み

子供達は10月25日、26日の授業でロボットのプログラミングに取り組み、この日はその発表の日として保護者参観も兼ねて公開されました。
プログラミングのカリキュラムや資料の作成など、運営を手がけたのは株式会社アウトソーシングテクノロジーです。同社は今までも、山形県と岩手県で小・中・高校生、社会人に向けてロボットのプログラミングに関するセミナーを開催してきました。そして今回初めて、公立小学校の授業としてロボットを取り入れた授業を実証実験として行いました。

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渋谷区には、ロボットを教材とした授業を行いたいという希望があったことから、NECフィールディングやソフトバンクロボティクス等と連携し、ロボットとプログラミングを教材とした授業が実現したのです。

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あっという間に時間が過ぎて、2時限(90分)の授業に終わりの時間が来ました。授業を受けてくれた御礼として、2台のNAOが連携したダンスを子供たちに披露しました。ダンスの少しのズレも見逃さない子供たちから突っ込みやダメだしも出ていましたが、一生懸命ダンスを踊るNAOに教室には歓喜の声が響きました。

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NAOとのお別れの時間が来ました。子供たちはNAOに集まって「バイバイ」と手を振ったり、顔を近づけて遊んだり、みんなロボットに挨拶をしてから、名残惜しそうに教室を後にしていきました。
ヒト型のロボットだからこそ、挨拶をしたり話しかけてお別れしよう、という感情が子供たちに生まれるし、その気持ちもロボット教育には重要ではないか、と同社のスタッフは語っています。

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子供たちが勉強したのはわずか6時限分の授業。
会話のための言葉の入力を含めて、子供たちが短時間でコレグラフの基本操作を習得し、会話分岐をプログラミングできるようになった、その成果には驚きました。

生活の中にロボットがいる社会、その未来は次の世代となるこの子供たちが担っていきます。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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