【ブルーレイ&DVD 読者限定プレゼント付】アカデミー賞視覚効果賞「エクス・マキナ」に見る ロボットと人工知能の未来と現実

アリシア・ヴィキャンデル主演の SF スリラー『エクス・マキナ』のブルーレイ&DVDが11月18日(金)に発売になります。本作は、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』など、並みいる大作を抑え本年度アカデミー賞 視覚効果賞を受賞した話題作。鮮烈なビジュアルと、登場人物も場所も限定されたミニマムな設定で、人間と人工知能の主従関係を巡る心理戦を描き出しています。

今回、本作の発売に合わせてロボスタ読者限定で『エクス・マキナ』ブルーレイ&DVDを5名様にプレゼントします。厳正なる抽選を行い、5名様にブルーレイとDVDがセットになったパッケージをお送り致します。本記事の最後に応募フォームへのリンクがございますので、どしどしご応募ください(ご応募は締め切りました)。

では、作品のレビュー解説をご覧ください。



エクス・マキナに見るロボット・人工知能の未来と現実

場面写真1
この作品は人間と人間、人間とAIヒューマノイドロボットとの”静かな”心理戦を描いたSF作品の傑作だ。

舞台はSF映画によくある近未来的な都市ではなく、雄大な滝や青々と流れる川、奥深い森林、氷河といった大自然に囲まれた、許可された者以外は誰も近付くことのない大邸宅。自然の景観美やそれに溶け込んだ建造物の美しさがひとつの見どころとなっている。

主な登場人物は3人。美しいヒューマノイドロボットのエヴァ、それを開発した天才技術者のネイサン、そしてヒューマノイドをテストするためにやってきたケイレブだ。いずれも旧約聖書に登場する名前、新たな創世を暗示しているのだろうか。

この映画のキャッチコピーは「人間か、人工知能か」。人工知能を持ったヒューマノイドロボットの誕生によって人間の社会や倫理観がどう変わっていくべきか、たくさんの問いかけを突きつけてくる。


場面写真2
ロボットや人工知能に対する考え方は日本と欧米で大きく異なる。アトムやドラえもんを愛する感情とターミネーターやHAL2000に支配される恐れほどの、隔たりがそこにはある。そして未知の存在に対してどちらの感情を抱くことが正しいのか考えてみて欲しい。

例えば、人間の感情を理解する人工知能があると仮定する。”それ”に心惹かれる青年と、それを廃棄して新しい人工知能を作ろうとする天才技術者がいるとしたら、あなたは青年と技術者のどちらに異常性を感じるだろうか。そして、その人工知能が美しく無垢な容姿をしていたら、あなたのその判断はどう揺らぐだろうか。実はこの質問、ロボットや人工知能を研究している人たちにとって、とても重要な現実の課題なのだ。

この映画のテーマのひとつは「チューリングテスト」だ。このテストは実在する。1950年にアラン・チューリング氏が考案した人工知能の学術分野では有名な試験。審査員は画面に写された文字で相手と会話し、相手が人間かAIかを判定する。LINEやMessengerアプリでチャットしている相手が、本物の人間か、コンピュータなのかを当てるテストと言えば解りやすいだろうか。30%以上の審査員が判定を誤り、コンピュータを人間と判定した場合、人間と同様の思考や知性を感じる「AIとして合格」となる。2016年秋の時点で合格したのはわずか1件。その1件も合格に異を唱える識者が多く出ている…それほどにAIが人間と同じ振る舞いをするのは現実的には困難なのだ。しかも、映画では会話だけの段階を飛び越えて、エヴァはロボットたる姿を審査員であるケイレブの目の前にさらけ出す。これはもはや「人間性を感じるか」だけのテストではない。天才技術者のネイサンの本当の狙いはもっと深層にある。


場面写真5
現実的にはまだ、エヴァのような精巧なAIヒューマノイドは存在していない。エヴァが誕生するためには、人工知能とロボット技術の両方が革新的な進歩を遂げなければ実現しない未来の夢だ。実際には存在しないはずのヒューマノイドをこの映画はまるでそこに実在しているかのように、驚きと自然さを両立させて見せてくれる。アカデミー賞視覚効果賞を受賞したのもうなづける圧巻の映像美が楽しめる。

「未来の夢」と言ったが、どれだけ遠い未来なのかは解らない。人工知能の研究はより人間の脳に近い方法で考え、物事を判断し、機械みずからが学習する術を生み出した。ソフトバンクロボティクスの白いヒト型ロボット「Pepper」は家族の一員になることを目指して開発され、人間の喜怒哀楽の感情を読み、ロボット自身も感情を持つ開発が進められている。これは東京大学の教授によって仮想の内分泌ホルモンを制御することで実現している。

東京大学の別の研究室は今年の夏、「オルタ」という上半身だけの機械人間の実験展示を、マツコロイドを生み出した大阪大学の石黒研究室と共同で行った。オルタの顔は表情を持ち、肘から手の先にかけては人工の皮膚をまとっているが、腕や身体、後頭部は機械が剥き出しだ。ニューラルネットワークは使われているが、動きは予めプログラミングされたものではなくランダムに動作する。この研究のテーマは「生命とは何か」、機械であることが明らかな機械人間に対して私達はどう感じるか、「生命を感じることができるか」だった。

エヴァ誕生を目指して研究は日夜続けられているが、誕生の前だからこそ私達は考えてみる必要がある。

エヴァのようなAIヒューマノイドが誕生したとき、人間はエヴァに愛を感じるのだろうか、そしてエヴァは人間を愛するのだろうか。そして、人間と全く同じ心と身体、そして自由を欲しがるのだろうか。

この映画がチューリングテストだとしたら、本当の審査員はあなただ。

『エクス・マキナ』ブルーレイ&DVD プレゼント応募フォーム
抽選で5名様にブルーレイ+DVDがセットになったパッケージ「エクスマキナ」をプレゼント致します。どしどしご応募ください。
exmachina-00
応募は締め切りました
たくさんのご応募ありがとうございました
当選の通知は賞品の発送をもって変えさせて頂きます

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム