MR技術を医療に応用 世界初の歯科治療MRシミュレーションシステムの意義としくみ - (page 2)




実用化の目標は?

説明会には株式会社モリタの代表取締役 森田晴夫氏、企画とコンセプトを持ち込んだ歯科医師である窪田努氏と芳本岳氏、システム開発を担当したリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社の取締役 勝本淳史氏が登壇した。

このシステムは2017年3月にドイツのケルンで開催された展示会「第37回ケルン国際デンタルショー」でも発表し、評価されたシステムだ。医療全般でのCG活用としては従来から、お腹に骨格や内臓の映像をプロジェクションマッピングで投影するなどの活用方法が提案されていて、MRなどの活用も考えられてはいるものの、柔らかい臓器を対象とすると寝た状態で位置が変わるなどの理由から現段階では実用化が難しい。それに対して歯科医療への応用の場合、歯は外部に出ている唯一の骨であり、身体の向きなどを正確に検知さえすれば、MRでの利用に比較的向いていると言う。
このシステムの商用化については、まずは歯科大学や研究機関向けの教育トレーニング用として約2年程度で実用を目指す、としている。

株式会社モリタの代表取締役 森田晴夫氏

歯科医師 窪田努氏

現状のシステムの課題としてはカメラの解像度がまだ十分でないこと。Microsoft HoloLensを使ったシステムも考えたが、やはりカメラの解像度が足りないなど、克服する課題があるようだ。また、解像度が上がるとコンピュータの処理が重くなり、次はその課題をクリアする必要が出てくる。

歯科医師 芳本岳氏

リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社 取締役 勝本淳史氏

筆者も実際にこのシステムを体験した。もちろん筆者は歯科医ではないが、作業するために注意すべき神経や血管などの情報が現実の映像に重ね合わせて薄く表示されるのは便利だし、確実性が上がるように推測できた。一方で顔を動かしたときに視界が変わるのに若干のタイムラグとカクカク感はまだ違和感を感じた。
ただ、この課題はCPUの高速化やGPU導入など、ハードウェア的な進化で近く改善されるに違いない。
VR、AR、MRというと、ゲームや映像を楽しむエンタメ面がクローズアップされているが、このシステムのように医療や教育での利用や、実際に人間の仕事や作業を助けるツールとしての活用に今後も期待したい。

【説明会でのデモンストレーション(動画)】

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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