【IoT業界探訪vol.19】ランプの灯りで絆をつなぐ「wesign」 Javasparrow社で実践する「たった二人のIoT開発体制」とは - (page 2)

初めての販路開拓

起業するにあたって、新しく開拓していかないといけない物の一つとして販路がある。

モノづくりには慣れたJavasparrowの二人にとっても、販路の確保は初めての経験だったようだ。サポート等の業務に関しても手探りで進めているという。今後にどう生かしていくのかお二人にお話を聞いてみた。

編集部

販路の開拓ついてにはどうされたんですか?


稲田氏

今回の商品はハイテクなもの、というよりも、生活の中になじむものを、というコンセプトでものづくりをしていたので、インテリアショップや販売店さんなどをまわって新規に販路を開拓しました。


編集部

販路開拓の反響は良かったんですか?



幅広い商材を扱う生活提案型のショップ、蔦屋家電AssistOnなどの店頭などでも扱われるのは、商品が使われるシーンや空間が想像しやすいためだろう。

稲田氏

大変でしたが成果はありましたね。

あと、お店の側からアプローチしてくださるパターンもあって、製品を発表した後には蔦屋家電さんからもご連絡いただき商品を置かせていただくことが出来ました。

商品というよりも「心地よい空間」を提案する方々に「スイッチのON-OFFという日常の行為で人と人がつながるというサービス」が刺さったのかと思うと嬉しいですね。


編集部

なるほど。購入したお客さんからの反響はどうでしたか?


稲田氏

購入してくれたお客さんからは「こういう商品を待っていたんだ」という声を頂けました。また、普通はIoT機器の売り上げは東京の比重が高くなる傾向があるんですが、地方のお客さんも購入してくださってます。これも「離れて暮らす人々をつなぐ」という狙い通りなので嬉しかったですね。

ただ、まだリーチできていないだけで、こういう商品を欲しているお客さんはいっぱいいるんだろうな、と思うと、広報活動をもっと考えていかないといけないですね。


國舛氏

想定するユーザーさんのITリテラシーがCerevo時代のお客さんと違うので、色々な気付きがありました。

例えばルーターの設定などに関しては、製品を置いてくれた雑貨屋さんの意見を製品に活かすことができました。

もともと日常している行為になじむものを、と考えていたので、「スマホアプリで操作」するような製品にはするつもりがなかったんです。

なので、wesign同士のペアリングは設定済みのものを同梱販売し、ネットへの接続設定もブラウザから簡単に出来るように設計していました。

ただ、「それでもできないお客さんは多いだろう」というお話でした。


編集部

たしかにうちの両親も、ネットもSkypeも使うけれども、家のルーターの設定は、回線業者さんがやってくれたままですね。wesignを使いたい層でも、そういう方は思った以上にいそうですね。



設定や接続の手間を減らし物理的な配線だけでセットアップが完了する「簡単セットアップキット」。ITに弱い方やお年寄りにこそ刺さる商品なだけにこういった配慮が行き届いている。

國舛氏

そこを改善するために「簡単セットアップキット」が同梱されているタイプも制作しました。これは「LANケーブルや電源に物理的な配線をするだけで使える」ものです。

3G回線などを利用するプランも考えたんですが、リテラシーが低いお客さんに「ランニングコストがかかる」ものは避けたかった。



稲田氏

こういった商流開発の現場から得られたフィードバックによって、商品がよくなる着想につながる実感が得られました。
本当に良い経験だったと思います。


國舛氏

IoT機器は売って終わりという商品ではないので、どうしてもサポートコストがかかります。しかし、今のところ不具合があっても、解決に向けて一緒に動いてくれるいいお客さんとお付き合いすることが出来ていますね。

バグにしても、使い方がよくわからない、という指摘にしても、商品の改善につながる情報が詰まっています。

ある程度、大きな組織になってしまうと、分業化が進みます。そうすると販売現場やお客さんから開発、企画の人間が製品の改善情報を直接吸い上げることがどんどん難しくなってしまう。今回のwesignプロジェクトでは今後につながる非常に良い経験が出来ました。


編集部

開発コストが高く、アフターセールスが重要なIoTだからこそ、ユーザーとの接点が必要だという事は非常にもっともですね。
そういったことが実現できる柔軟な組織設計がIoT機器の開発現場では必要なのかもしれません。

今後に繋がるいい経験というお話でしたが、次のプロジェクトは決まっていますか?


稲田氏

今までは、プロジェクトの開発が終わるとすぐに次のプロジェクトへ、という慌ただしさだったので、wesignのプロジェクトに関しては、ゆっくりと反応を見て振り返ってみたいですね。



國舛氏

次期商品に関しては振り返りを含めてwesignプロジェクトを終わらせてからブレストをしていきたいと思っています。あとはコラボプロジェクトですね。

一つは他のメーカーさんと一緒にアドバンスドデザインや試作をするお仕事。もう一つは生産支援や量産支援こちらに関してはコンサルティングのような形ですね。


稲田氏

wesignは10万台、100万台売れるようなものではありませんが、この商品を着想してから世に出すまでの各工程で必要な技術、知識が全てJavasparrowの二人にあるということを示すことが出来たと思っています。


編集部

前職で得た企画力、設計力、調達ノウハウなどに加えて、今回得たセールスやサポートの経験、現場から商品開発にフィードバックする組織設計の知見まであると説得力は十分ですね。

その知見を活かして今後発表されていくプロジェクトの情報を楽しみにしております。今日はありがとうございました。







選択と集中

今回の話を聞いていく中で、たった二人でもIoT機器の量産化が可能だという実感を持てたのではないだろうか。このことは、IoTデバイスの開発に興味がありつつも躊躇している人達にとって勇気が出る内容だったと思う。

ただ、その為には「ここまで絞り込まないといけないのか」と呻くほどに機能の選択し、なおかつユーザーに豊かな生活を印象づけるようなストーリーを練りこんでいく必要がある。

コンセプトに誠実に向き合って必要な機能に絞っていくこと、ストーリー作り、どちらも困難を極める作業だが、Javasparrowさんをはじめ、そこの部分をサポートするサービスも出始めているようだ。

ぜひ、様々なサービスを活用してIoTサービスの実証に足を踏み出してくれる人が増える事を期待したい。

ABOUT THE AUTHOR / 

梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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