【中国ロボット市場最前線 vol.04】中国で話題となったロボットたち

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人工知能の浸透に伴い、中国ではロボットの認知度が少しずつ高まってきています。世の中に登場している多彩多様なロボットのなかで、中国ではどんなものがよく語られているか、どんなものが注目を集めているか、話題となっているロボットたちを中国系、日本系、欧米系に分けて紹介します。

中国系

中国系ロボットは、世界のロボット強国と比べると技術的に遅れている現実が報じられています。また、基礎的な技術開発よりもロボットの応用技術の方がよく話題になっています。



1.旧暦お正月の春節聯歓晩会に登場したダンサーロボット:アルファ1S

アルファ1Sは、深セン市優必選科技有限公司(英字:UBTECH Robotics Corp. 略称:優必選)が開発したロボットで、2017年2月7日旧暦お正月の中国中央テレビ春節聯歓晩会番組に540台も登場し、10億国民視聴者の目の前で集団ダンスを披露し、一気に有名となり大きな人気を浴びました。
アルファ1Sは、身長398mm、体重1.63kgで簡単に持ち歩くことが可能。歌、ダンス、武術、笑い話しなども堪能。娯楽と教育の両方を備えた知能ロボットの代表的な製品です。技術的には、優必選社独自開発した主力製品であるデジタルサーボを利用したことが特徴です。

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【出典】優必選会社のウェブサイト(http://www.cn.ubtrobot.com/
【動画】動画は以下をご参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=8IQFX2BjK9s



2.歴史上の人物をモデルにした書道ロボット:王陽明模倣ロボット

王陽明模倣ロボットは、北京甘為楽博科技有限公司(Beijing Ganwei Robot Technology Co.,Ltd.)が開発した歴史上の人物「王陽明」を模倣したものです。王陽明は、中国の明代の思想家、文学者、政治家、武将であり、儒学者として「知行合一」を提唱したことが有名で、中国人の好きな人物の一人となっています。このロボットは、王陽明そっくりの姿をしており、生き生きした格好が伝わってきます。王陽明の思想「知行合一」などの漢字を書道で揮毫できるほか、人との会話もできます。特に心理学の側面から人とのコミュニケーションがうまいです。

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世界ロボット大会(2016 北京)で撮った写真
【動画】動画は以下をご参照ください。
http://v.youku.com/v_show/id_XMTc2OTM1MjMwNA==.html



3.水の中を自由自在に泳ぐロボット:ロボット金魚

ここで紹介するロボット金魚は、塔米智能科技(北京)有限公司(Tami Robotics Technology (Beijing) Co., Ltd.)が開発したもので、水の中を自由自在に泳ぐことができます。身長530mmで、体重2.8kgで10~12時間泳ぐ仕様になっています。金魚の動作には手動モードと自動モードの二種類があり、手動モードではコントロールパネルで金魚とインタラクティブなやり取りができることに対し、自動モードでは水の中の障害物を自律的に回避し自由に泳いだりすることができます。この製品が公開して以来、金魚の自由な泳ぎに驚いた人が少なくありません。「本当の金魚とあまり変わらずカワイイ」、「家に置いたら手間もなく鑑賞できるようになるぞ」、「会話できるようになったらもっといいなあ」と幅広く感心を集めています。しかし、150万円以上もかかるこの一匹の金魚は、一般市民にとっては高嶺の花、手に入れるのはまだまだ道が遠いと思われます。

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世界ロボット大会(2016 北京)で撮った写真



4.ギネス世界記録を刷新したロボット:青島高新ロボット

ここで紹介する青島高新ロボットは、青島高新機器人(ロボット)技術有限公司(Ever Win Company & Ltd.)のロボットです。マスコミにも出ていますが、青島ビアフェスティバルにて1007台のロボットが同時にダンスし、ギネス世界記録を刷新したロボットでもあります。このロボットは、高さ43.8cm、17自由度で、ダンス、体操、武術ができます。パソコン、スマホを使って無線でロボットのコントロールもできます。ロボットの数でギネス世界記録の刷新があるだけで、一時的に話題となり関心が寄せられていますが、個別のロボットの技術や仕様についてあまり公開されておらず、ロボットそのものの認知度がそれほど高くありません。

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【出典】ギネス世界記録ウェブサイト(http://www.guinnessworldrecords.com/
【動画】動画は、以下をご参照ください。
http://www.guinnessworldrecords.com/news/2016/8/video-1-007-dancing-robots-break-world-record-in-china-438473

上記以外に、前回「中国コミュニケーションロボット市場の最新レポート」で紹介した家庭用知能ロボット優友(ユーユー)、美貌と智慧の両方を備えた佳佳(ジャジャ)も話題になっていますが、今回は割愛させていただきます。




日本系

中国では、日本ロボットの技術力やデザイン力が世界トップであると認識されています。数多くのロボットのうち、以下の三つを例として紹介します。


1.日本の最高技術を代表するホンダの人型ロボット:Asimo

日本の高度な技術力を代表するロボットと言えば「アシモ」、技術者のなかではよく話題になっています。階段を上ったり、サッカーをしたり、カップを持ち上げたり、高度な動きに魅了されています。「すごい!どうしてこのような高度なものができたのか」と不思議でびっくりしたという心境がほとんどです。そして「中国はいまの技術レベルから、このようなものができるまでには、あとどれぐらい時間がかかるのだろうか」と予測ができない無力感もよく聞きます。ホンダのように、数十年も一つの製品にフォーカスして研究し続ける精神、孤独ともいえる中で高度な技術を追求し続ける姿勢、自社技術で試行錯誤を繰り返し積み重ねた品質などが技術者のなかで世界最高と称賛されています。

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【出典】本田技研工業のアシモ紹介サイト(http://asimo.honda.com/downloads/



2.商用化の先頭を走るソフトバンクのロボット:Pepper

ロボットの商用化でロボットビジネスのシンボルと見られているのは、ソフトバンク社のペッパーです。独自の感情機能を搭載したペッパーは、世界初の感情持ちロボットとして注目される一方で、ソフトバンク孫社長のロボット領域への投資、アリババやフォックスコンの出資、及びPepperのアリババ「YunOS」搭載なども話題を呼んでいます。孫社長がわずか数分間でアリババへの投資を決断し、そして大成功したことで、孫社長の投資動向が注目されるなかで、最近、巨額で英国ARM社を買収したことが追い風になり、ロボット領域の主力製品Pepperへの関心が寄せられています。それに、中国で最も影響力があるアリババのソフトバンクロボット事業への参画もその想像範囲を広げています。ペッパーは、アリババの「YunOS」を搭載した「アリロボット」として市場に登場し、今後も中国市場の有力なプレーヤーとして語られるでしょう。

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世界ロボット大会(2016 北京)で撮った写真



3.歌もダンスも人間に近いレベルのロボット:未夢

中国ロボット業界では、産業技術総合研究所のHRP-4C未夢は、可愛くて、歌もダンスも堪能、顔の表情が非常に豊富というイメージです。2009年にデビューしたときは、中国で人型ロボット製品があまり出ておらず、ここまでできることは、衝撃と言っても過言ではありません。アシモと同じく、日本ロボットを代表する最高レベルと認識されています。特に未夢には人間に近い動作や音声認識にもとづく応答を実現できて、人間と一緒に歌いやダンスなどをしても、一人の人間と見られてしまうことは、ロボットの技術も外形デザインも称賛されています。

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【出典】産業技術総合研究所(http://www.aist.go.jp/




欧米系

欧米系ロボットは、サービスロボットより産業用ロボット・特殊ロボットのほうが注目されています。以下は、話題になっているもののうち、アメリカ、ドイツ、フランスから、それぞれひとつずつロボットを紹介します。


1.「ヤバい」人型ロボット:Atlas

Google傘下Boston Dynamics社の人間型ロボットとして発表された「アトラス」は、完全自律で障害物や人間の妨害をものともせず所定の目的を果たすことができるものとして、「ヤバい」ロボットと認識されています。動力ケーブルがないままで、雪の屋外を長距離移動したり、後ろから突き飛ばされて倒れても自力で起き上がったりすることで、バランス力が驚くほど進化してきました。動画が公開されてから、中国ロボット業界で新たな話題として広がっています。Boston Dynamics社の実力が知られているものの、こういう「ヤバい」ロボットは、「あと5年間、10年間でどこまで進化するのか」、「人間はこのようなロボットに対応・制御できるのか」、「ロボット三原則は今後大丈夫なのか」など技術研究のすごさとともに、技術応用の怖さを隠しきれない話題ぶり。
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2.すごい技を持つクーカの卓球ロボット:KR AGILUS

世界トップクラスの天才卓球選手ティモ・ボルとドイツの産業用ロボット「クーカ」のロボットアーム(KR AGILUS)による驚きの卓球対決動画が公開されてから、中国ロボット業界では、工業ロボットの先端技術を改めて認識するきっかけになっていました。この動画では最終的には人間は勝ったとはいうものの、技術の進歩に伴い、ロボットは人間を超える日は近いのではないかと観測が強まっています。卓球強国であるゆえに、ロボットの卓球対決話題が一段と広がっています。「将来的には卓球ロボットはきっと人間を超えるに違いない」、「腕はともかく、体力は絶対に人間が負けるでしょう」、「人間とロボットとの卓球オリンピックは面白いかもしれない」などロボットへの期待が寄せられています。この卓球ロボットの影響もあるだろうか、2016年10月に北京で開かれた世界ロボット大会では、中国国産のテニスロボットも登場し、人間とうまくテニスをする場面も披露されました。

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3.クールで格好いい人型ロボット:NAO

Aldebaran Robotics社(現ソフトバンクロボティクスヨーロッパ)はソフトバンク傘下に入っているものの、NAOというと、フランス製のロボットと認識されていますので、欧米系のロボットとして紹介します。NAOは、Pepperの身長の半分ぐらいで、クールな外形に加え、ダンスしたり会話をしたり机の上に乗せて遊んだりするができますので、子供の遊び相手としてとても人気を集めています。いま、中国で多くの家庭では一人っ子となっており、子供の寂しさ排除や先進技術への啓蒙などのニーズが高まっています。子供育成・教育投資の一環としてNAOのようなロボットが技術的にもデザイン的にも優れていると認識され、視野に入りやすいのではないかと思われます。ただし、現時点ではロボットの価格が一般家庭にとってはかなり贅沢なもので、コストダウンの様子見や代替品へのシフトが今後の動きになると考えております。

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世界ロボット大会(2016 北京)で撮った写真



自律飛行する不思議なロボット蝶々:eMotionButterflies

蝶々の飛翔を生き生きと再現しているロボット蝶々を最初に見た瞬間、蝶々の自由な飛翔ぶりに驚きを禁じえませんでした。この自律飛行の蝶々を開発したのは、ドイツのFesto社です。飛翔ロボット蝶々については、「本物そっくりで信じられない」、「夢みたい。かっこういい!蝶々も男も」、「この会社はよく知らないが、とにかく超クールだ」、「いつか人間も蝶々のように飛べるようになるか」など絶賛の声が殺到。Festo社は、自律飛行の技術的可能性を探求し続け、いろんなロボット製品を世の中に絶えずに送り出すことで、ロボット業界の刺激になっています。

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世界ロボット大会(2016 北京)で撮った写真

上記は、中国で話題になっているロボットの一部です。ロボットという概念は、ロボット業界ではよく語られているものの、一般市民の間ではまだまだ浸透されていない現実にあります。マスコミやロボットイベントなどでロボットの話題が取り上げられているなかで、ロボットについての情報や知識がすこしずつ広がってきています。それにしても、現時点では実際にロボットを見たり触ったりする場面がやっぱり少ないので「謎のような存在」として実感できる人は、ほんの一部に過ぎません。この意味で、世界ロボット大会のような大型イベントは、ロボット業界のコミュニケーションを促進するとともに、一般市民にとっての知識啓蒙・普及にもつながっています。世界最大のロボット消費国である中国においては、ロボットが身近になり、生活に入ることはこれからの楽しみではないかと思われます。

中国ロボット市場最前線は短期連載(全10回の予定)です。
更新時はロボスタ・メールマガジンでもお知らせします。
お楽しみに!

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Dequan Tang
Dequan Tang

イーパオディング株式会社代表取締役社長、北京璞華機器人(ロボット)情報技術有限公司CEO。東京・北京にてITシステム化、日中間ビジネス、グローバルビジネスコンサルティング業務に十数年間携わり、いま中国でロボットのメディア、展示、販売、研究開発を行うロボット事業、及び「個客」ビジネスの「自由自在」を支援するグローバルリサーチ、コンサルティング、インターネットサービス事業に従事。IT関連の講演・著書多数。 Email:tang_dequan@epaoding.com

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