【IoT業界探訪vol.2】「鍵」をセキュアでスマートに。Qrio Smart Lock(2)「IoT業界にライバルはいない」

IoT機器の中でも早くから市場として立ち上がっているスマートロック業界。その中で強い存在感を放つQrio株式会社 事業開発部 シニアマネージャーの高橋諒さんにお話を伺ってきました。

今回は徐々にスマートロックが一般的な存在になるにつれて見えてきたユーザー像や導入事例、現在のIoT業界の動向などについてお話ししていただいています。(その1はこちら

編集部

前回は会社の強みと企画の原点、立ち上げ期の反響と機能追加によるネガティブイメージの払拭などを語っていただきました。

ファームウェアアップデートによる弱点の改善や、Wearable対応などの機能追加などを経て、市場からも良い手ごたえを感じていると思うのですが、Qrio Smart Lockの現状をどうとらえておられますか?


高橋(敬称略)

IoTの分野の中ではスマートロックという分野は最初に立ち上がっています。その中で、QrioはIoTの活用を検討されている様々な企業様から最初に声がけされやすい立場にいると思っています。

まず、ソニーとの関係性から、サポートの継続性や、セキュリティの信頼性など、企業として基本的な部分で信頼してもらいやすいんです。

また、B2Bで仕事をしようとする場合でも、納入基準のポイントを抑えたモノづくりができているというのは強いですね。そのうえで、一般的なハードウェア系スタートアップに比べて、量産行程のノウハウも活用できるため、導入にもいたりやすい。


IoTは現状トレンドワードになっていますが、一過性のものにしないためには、そういった基本的な部分に力を入れていれていかないといけないと思っています。


編集部

なるほど、生産や設計に対する底力を感じますね。現状IoTがトレンドワード化しているというご指摘がありましたが、そんな状況下で競業する他社との関係はどのように考えておられますか?


高橋

現状では市場を開拓していく時期なので他社をライバル、とするような意識は特にもっていません。

他社を意識するよりも、いかに市場を開拓して手に取ってもらいやすくするのかを考えていく方が大事だと思っています。発売当初は販売店などでも「置く場所がない」というようなことを言われていましたが、最近は受け入れてもらいやすくなってきているのを感じます。

たとえば、Qrioではパソコン工房さんにも商品を置かせていただくなどすることで、100店舗規模の販路を開拓しています。

現状は他社さんであっても、同じように販路をひらいて世の中にスマートロック・IoTの価値を広めていく仲間だと思っています。





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IoT業界で活動する他社についての思いを語る事業開発部 シニアマネージャーの高橋諒氏

編集部

なるほど、ロボット業界も似たような空気を感じますね。この空気は先進的な業界全般にみられるものなのかもしれません。競業他社、というよりも「世間一般に対して価値を認めてもらおう」、という気持ちのほうが強いんですね。

では、他社との協業のなかで生まれてきた事例のなかで、印象に残っているものはありますか?


高橋

アパマンショップさんへの導入事例は印象に残っていますね。

これは生活提案というよりも、連携するハードウェアの開発とソリューションという切り口になってしまうのですが、キーパッド(法人向けのみ対応)を追加して後付けの電子錠として利用してもらっている事例です。

開発当初考えていたようなサーバー連携、スマホ連携といった、いかにもなIoTの形ではなく、「後付け、取り付け外しが簡単で、パスコードの設定、頒布が簡単な電子錠」という切り口で製品を捉え直した事例だったので印象に残っています。

Qrio Smart Lockは柔軟に鍵の種類を増やしていくことができる点も特徴の一つなのですが、それを活かした使い方だと思います。

ちなみに、「キーパッドで開けるのならInternet of Thingsじゃないのでは」と思われるかもしれませんが、この場合でも、月一回程度、不動産の所有者などが見回った際にスマホから開錠するタイミングでクラウド側と通信し、蓄積しておいた開錠記録を取得する、といったことが可能です。


編集部

B2Bの場合は周辺機器の開発も含めて、ユーザーに合わせた面白い利用法があるんですね。

では、B2Cで面白いと思った事例などありますか?


高橋

そうですね。予想していなかったユーザー層から反応があった、という点は面白かったですね。

開発当初はメインの購買層はガジェット好きの若い一人暮らしの男性だと思っていました。たとえば、テック系WEBメディアの紹介記事を読んで購入するような人です。

ただ、実際に購入した人を見てみると、意外なほど、40代、家族持ち、というユーザーが多かったんです。

家族持ちで、奥さんが財布を握っている中、お父さんが自分のお小遣いで購入して家族にシェアして使っている、というような事例です。

そんな家庭では、小学生の息子さんが自分のスマホでQrioを使いこなしていて、「友達を呼びたいからシェア権限ちょうだい」なんてことを言われた方もいるそうです。


また、普段はスマホで開錠していなかったご家族の方が「鍵を忘れた時に便利さを感じた」というお話もよく聞きますね。鍵をシェアしてもらって開けられるのは「開錠手段のバックアップ」という分かりやすい便利さです。

こんな風に、確実に毎日使うもので家族全員に受け入れられるIoT機器というのはなかなか珍しいと思います。

一般の家族のような、多様な年齢層、性別の人たちに使ってもらうシーンが見えてくることで「くらしに溶け込んでいく製品の姿」を実感することができました。


編集部

鍵は毎日使うものだけに、だんだんと日常生活の中でIoT機器がなじんでいく姿が想像できますね。


B2B、一般のご家庭、それぞれでの利用シーンや業界の現状について紹介してもらいましたが、意外なほどに一般の方の日常生活に取り込まれているお話が聞けたのが興味深かったですね。

ただ、皆さんが「意外なほどに」と感じるように、社会全体にいかにスマートロックがもつ魅力を広めていくのかを考えると、まだまだ道は半ばであるとも言えるでしょう。

しかし競業他社を仲間と捉え、自分たちの業界の価値を社会に対して訴えていくIoT業界ならば、「これは」と思うような魅力的なキラーサービスが見つかるのもそう遠くはないのではないかと思います。

次回は鍵本来の機能とのバランスを踏まえて、スマートロックの未来について、どのような考えを持っているのかについてお話しいただきます。

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梅田 正人
梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。