【IoT業界探訪vol.3】「鍵」をセキュアでスマートに。Qrio Smart Lock(3)「便利さの先にあるものとは」

IoT機器の中でも早くから市場として立ち上がっているといわれるスマートロック。その中で強い存在感を放つQrio株式会社 事業開発部 シニアマネージャーの高橋諒さんにお話を伺ってきました。
今回はQrio Smart Lockの今後について、スマートさと鍵本来のサービスについて語っていただいています。(その2はこちら

編集部

前回はIoT業界の動向と事例、意外なユーザー像など、「現状」について語っていただき、どんどんスマートロックが普遍的な存在になってきていることを感じました。そうやって日常化していった先、今後はどのような展開を考えているのでしょうか?


高橋

スマートロック単体では、「便利だね」程度で終わってしまいがちですが、ユーザーが選んだ様々な家電、家具とスマートロックが連携できるようになれば、ユーザーが生活の中で感じる価値は”1+1”が”3”にも”4”にもなっていくと思います。そのようなスマートホームでの生活に価値を感じてもらうためには、他の機器と連携していくことは必要です。

また、他機種との連携イメージがつき、便利さが日々の生活に溶け込んでいくことができれば、マンションやハウスメーカーもスマートロックの導入に積極的になっていただけるのではないか、と考えています。そのためには、自社で開発するだけでなく、安心して連携できるパートナーとの提携を進めるなど、幅広い手段を検討しています。


編集部

先ほど(注:その1記事)もセキュリティ面の重要さを強調されていましたが、提携するにあたってクリアすべき点は非常に深く考えておられそうですね。


高橋

そうですね。機器同士が連携していくことは重要だと思っていますが、「鍵」という製品を扱う上ではセキュアであることが何よりも重要だと思っています。

現状スマートホームに関する規格はいくつかありますが、セキュリティ面を担保したうえで連携していくことができることが最低限の条件ですね。脆弱性を含む仕様、規格だった場合は協業しない、という判断をすることが鍵を作っている会社としての責任だと思っています。
また、連携する外部機器のトリガーで鍵が開くという形の協業だと、そのデバイスが脆弱性を持っていた場合、それを経由してQrio Smart Lockが開錠されてしまう可能性があります。そのため、外部のデバイスに開錠トリガーを持たせるような連携は難易度が高いです。ただ、Qrio Smart Lock側が開錠したことをトリガーにしてほかの家電やシステムと連動させていくような形ならば、信頼できるパートナーと連携していくことは模索していきたいと考えています。


「広く一般の開発者と連携しサービスを創出していく」ということは大事ですが、こと、鍵という製品を取り扱っている以上、セキュリティ面を第一に考えたうえで判断していかなくてはいけないですね。


編集部

安全な暮らし、という根源的な要求と便利さをはかりにかけて考えると、連携先に要求されるハードルは高そうですね。
例えば、今後連携を予定している機器、サービスでいうとどのようなものがあるんでしょうか。


高橋

生体認証やカード、ウェアラブル、時計など、「開ける方法」に関しては他社と連携するなどして増やしていきたいですね。アップデートで対応した際の「未来を感じる」という反響が大きかった、というのもありますが、スマートウォッチ対応は今後も頑張っていきたい分野の一つではあります。
ただ、Qrioでは機器の形にはそれほどこだわっておらず、ベストな形は鍵(錠前)の中に入ってしまうことだと思っています。鍵でも開けられるし、スマホでも開けられる、スマートロックであるということを意識させずに使えるような形ですね。




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AirBnBやシェアオフィスなど、現代的な使用シーンの設定や、設置から運用まで含めて気を配ったUXが評価されGOOD DESIGN賞を受賞した。

編集部

ハードウェアを作っているけれどもハードがなくなることが最終的な目標、というのは面白いですね。


高橋

さらにそれを超える形としては、「鍵という存在を意識しないでも家を安全に保つことができる」という形もありますね。たとえば、私の家ではこんな形でQrio Smart Lockを使っています。
家を出るときには、ツマミをひねって開錠します。鍵を開けて家に出てしまえば、オートロック機能を使って自動で施錠されるのでそのまま振り返らずに外出先に向かってしまいます。
それで、家に帰ってきた時には手ぶらで開錠機能(ベータ版)があるのでドアに近づくだけで開錠されます。
そして、家に入るとオートロックで施錠される。という形ですね。


手ぶらで開錠機能はまだベータ版ですし、位置情報がうまく取得できない環境もありますので、理想的な使い方ができない人もいるかもしれませんが、このようにどんどんタッチポイントを減らしていくことにより、「鍵」を意識しない生活を目指して行ければと考えています。


編集部

スマートウォッチやウィジェットもそうですが、開錠、施錠をするために必要な手数をどんどん減らしていくことで見えてくるUXにこだわっているんですね。理想の鍵の姿がどこに行きつくのかが非常に楽しみです。
では、さきほどは技術的な視点で連携先について語っていただきましたが、サービス的な面で連携したい企業や、分野などのイメージはありますか?


高橋

不動産、医療介護、健康、オフィスなど、興味のない分野はないといっていいぐらいです。私は、Qrio株式会社はハードウェア+αの会社だと思っているので、様々なビジネスに対してソリューションを提案していきたいと思っていますね。
たとえばスマホの画面の中だけでは完結しない領域に踏み込んでいくためのツールとしてスマートロックを使ってもらい、そこから先のサービス、ソリューションを提案していくような形です。


ハードウェアとしてのスマートロックにこだわってしまうと、どうしても「スマートロックを使うための提案」になってしまいがちですが、「世の中に必要とされているサービスの中でスマートロックを使うことで、もう一歩踏み込んだ形に深化させることができる」というようなシチュエーションがあれば、どんどん提案をしていきたいですね。
以前提携した不動産系の案件をきっかけにQrio Smart Lockが話題に出ることが増えてきているようで、様々な分野で課題を持っている方からお声がけして頂いています。まずはそこに対して良いソリューションを提示していくことが大事だと思っています。





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Qrioにとってスマートロックは「サービスのを実現するためのハードウェアである」と語る事業開発部 シニアマネージャーの高橋諒氏

編集部

では、その中でも特に連携していく必要を感じている分野はどこでしょうか?


高橋

あえていうならばですが、やはり住宅メーカーや不動産デベロッパーの皆様、「家自体を作っている」方々が挙がりますね。
彼らが、スマートロックを採用し、ほかのIoT機器と連携した生活をパッケージとして提案することができるようになれば、一般の人たちにとっても価値を感じてもらいやすいものになるのではないかと思うからです。
例えば、ハードウェアを製作している側からでも、学習リモコン的なものや、サーバー連携して様々なIoT機器が動く、というような技術的な世界観を考えることはできますが、「住む人がどう感じる家を作るのか。」というようなものをパッケージとしてきちんと提案する能力は、やはり「家づくり」に精通している人たちのほうが秀でていると思います。そういった方々とはぜひ協力していきたいですね。


編集部

今までになかった機能が住空間を豊かにするような提案が出てくるのは楽しみですね。
では、最後に、これから買おうと思っている人やこれまで買ったユーザーに対するメッセージがあればぜひお願いします。


高橋

これからもより安全で便利な製品を生活の中になじませていくよう努力していきます。
どんどん新しい製品やサービスを作っていきますので期待してください。


編集部

ありがとうございました。



3回にわたって、Qrioスマートロックについてご紹介をさせていただきましたが、いかがだったでしょうか。ユーザーの生命や財産に直結する「鍵」をIoT化していく中で、便利さと責任のバランスをうまくとりながら新しいサービスを創造していこうとする姿が目を引きました。

IoT化によってもたらされる「サービスの本質」とは何か、さまざまな方にお話を伺いながら探していこうと思っておりますので、今後もぜひ楽しみにしていてください。

(聞き手:梅田正人)

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梅田 正人
梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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