ダイソン、Dyson360 Heuristを発売 「ヒューリスティック・ラーニング」で部屋に適応、継続的に機能向上できるプラットフォームを目指す


ダイソン株式会社は2019年2月27日、ロボット掃除機「Dyson360 Heurist(スリーシックスティー・ヒューリスト)」を発売すると発表し、記者発表会を行った。同社オンラインストアでは同日より、各家電量販店では3月19日から順次発売する。価格はオープンだが直営店での価格は118,800円(https://www.dyson.co.jp/dyson-vacuums/robot/dyson-360-heurist-jp/360-heurist-blue.aspx)。

「Dyson360 Heurist」の本体は高さ120mm x 幅230mm x 奥行き240mm。重量2.51kg。静音モード・通常モード・強モードの3つの運転モードがあり、最大使用可能時間は静音モード使用時で約75分。バッテリーはリチウムイオンバッテリーで充電時間は2.75時間。


他メーカのロボット掃除機に比べて幅と奥行きは小さいが、サイクロン方式のため高さがある

ダイソン独自の「Radial Root(ラジアルルート)サイクロン」、本体幅自体は小さいが機体幅いっぱいに配置されたクリーナーヘッドを売りにしており、他メーカーのロボット掃除機に比べると4倍の吸引力があるとしている。


機体幅いっぱいのクリーナーヘッド




地図を記憶し、掃除するたびに部屋のマップを精緻化

「Dyson360 Heurist」カットモデル

CPUには1.4GHzクアッドコアプロセッサを搭載。従来モデル(Dyson 360 Eye)に比較してRAM容量が8倍、ROM容量が32倍になり、部屋の間取りを記録できるようになった。掃除しながら部屋のマップを記録し、さらに随時、最新情報に更新していくことで室内環境を学習し、部屋に適応する。たとえば部屋のなかで動かない家具と、人や床に置かれたバッグやおもちゃなど、ずっとそこにあるとは限らない障害物との違いを学習できるという。

また、掃除の開始時に現在位置を認識して、メモリ内の該当マップを選択するすることで、最適な掃除方法を判断する。



暗所での自己位置認識精度を上げるためライトを搭載

本体中央に360度パノラマレンズのカメラを搭載しており、「インテリジェントSLAMビジョンシステム」により室内で自分の位置を認識する。


360度パノラマレンズのカメラ。周囲にLEDが搭載された

「Dyson360 Heurist」は、レンズの周りには従来機にはなかった8個のLEDライトを搭載した。これによって暗い廊下やベッド下などの照度が不足している暗い場所でも位置を把握できるようになり、より高い精度で掃除を続けられるようになった。照明は暗い方向にのみ自動で点灯する。

そのほかToFを用いて2mまでの距離が計測できる長距離マッピングセンサー、障害物センサー、壁面近接センサー、段差センサーなども一新した。センサーは30Hzで距離測定を行い、現在位置と掃除していない場所を把握する。障害物センサーは、障害物を検知して本体の移動速度を落とすために用いられる。




室内マップを区切って掃除モードをカスタマイズ可能

マップを任意のラインで区切って掃除させることができる

Dyson Linkアプリを使うことで外出先からもスケジュール設定や掃除モードの変更などが可能だ。もっとも特徴的なのは、室内全体のマップに対して、任意の区切りを設けられる機能。これによってゾーンごとの掃除モードや掃除周期の指定が可能だ。分割したエリアには任意の名前をつけることもできる。


名前をつけたエリアごとに掃除モードを切り替えられる




「未来に向けてアップデートできるプラットフォーム」としてのロボット掃除機

ダイソンのフロアケア部門 製品開発 シニアデザインエンジニア ジェームズ・カーズウェル氏

「Dyson360 Heurist」は今後ソフトウェアアップデートによって機能が追加されていく予定で、すでに「一年間分のソフトウェアアップデートが用意されている」とのこと。

ダイソンのフロアケア部門 製品開発 シニアデザインエンジニアのジェームズ・カーズウェル(James Carswell)氏は、「ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで家庭をより良くしていきたい」と述べ、「Dyson360 Heurist」は「未来に向けてアップデートできるプラットフォーム」であり、より良く家庭の環境を理解できるようになると語った。

特に今回のモデルはカメラがより良くなり、従来機種に比べて20倍になったプロセッサの処理能力は、今後のアップデートにも対応可能だという。

また、ダイソンは掃除機専門のメーカーであり「機体幅のブラシによって、きちんと掃除できる掃除ロボットだ」と強調した。またフィルターは0.3ミクロンの粒子を99.97%捉えることができ、きれいな空気を排出できるという。


ベースステーションは従来機種と変わっていない


画質向上によりナビゲーションの精度も向上

ダイソン シニアプリンパル エンジニア マイク・オールドレッド氏

ダイソンで1999年からロボット掃除機の開発に携わってきたというシニアプリンパル エンジニアのマイク・オールドレッド(Mike Aldred)氏も、「Dyson360 Heuristは全方向を見てより多くの情報を受け取れるようになった」と語った。また本体の組み立て精度は極めて高いとし、それもまた高品質の画像情報入力に寄与していると述べた。画質が上がったことにより、ナビゲーションの精度が大幅に上がったという。

なお「ヒューリスティック(発見的、経験則的なといった意味)」については、人間の脳にヒントを得たものだと紹介した。今回のHeuristにおいて特にオールドレッド氏が気に入っている機能は、事前に生成させたマップをアプリ上で区切り、任意のエリアに対しカスタマイズしたクリーニングができる機能だという。特にこれによって、「自分がロボットを操っているという感覚がある」と考えているとのこと。


ロボットが生成したマップは回転させたり、任意のラインで区切ることができる

2001年に開発されたが発売されなかったロボット掃除機「DC06」

開発においては香港などで150世帯の顧客に対してベータテストを行なったという。また、室内の地図データを他の家電で活用したり、サードパーティに提供することは現時点では考えていないという。

ABOUT THE AUTHOR / 

森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

PR

連載・コラム