コンクリートのひび割れ検査時間を約40%短縮「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を開発 イクシスと安藤ハザマ

床面コンクリートのひび割れ不具合は、竣工時や引渡し後一定期間が経過したのちに検査が必要となる。これまでの検査方法では、必要な知識を有する検査員が近接で目視によって確認、実測を行い、その結果を写真やスケッチで記録するなどのプロセスで行われてきた。そのため、一連の検査業務には人手と手間、多くの時間がかかっている。

近年はAIの画像識別技術が飛躍的に向上したこともあり、画像認識によってひび割れを自動で検出する技術が開発されているが、その多くは依然、人手をともなう画像取得作業が必要であったり、取得した高解像度画像のデータが重く、ひび割れ検出から記録書類の作成にわたって相当の時間を要しているのが実状だとされる。
これらの作業の効率化を図るべく、点検・業務用及び特殊環境対応型ロボット等の開発・販売を手掛ける株式会社イクシスは、総合建設会社の安藤ハザマと共に、「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を開発したことを2020年4月6日に発表した。

ひび割れ検出画像


「自律走行式ひび割れ検査ロボット」とは

今回開発した検査ロボットは、検査の自動化および記録書類作成作業の削減を目指すもの。検査業務の大幅な効率化を行うことで、従来の近接目視と比較して約40%の時間短縮を実現するという。
大空間構造物の床面におけるひび割れ検査において、軽量な台車型の検査ロボットが自律走行して自動撮影をおこなう。同時にAI(人工知能)により撮影画像からひび割れを検出し、その結果を自動で図面に表示する。実機試験において、検査ロボットで自動検出したひび割れ箇所と、近接目視で実測したひび割れ箇所を比較したところ、幅0.1㎜以上のひび割れに対し、適合率が90%以上となることが確認できた。同社は今後、この検査ロボットに更なる改良を加え、様々な大空間構造物の工事現場に導入し、検査業務の効率化による生産性向上を目指すと述べている。

自律走行式ひび割れ検査ロボット ※ロボットの総重量は35kg(撮影装置16kg、走行台車19kg)



同ロボットの特長
【1】 検査範囲を指定するだけで床全面を一定間隔で撮影し、幅0.1㎜以上のひび割れを0.1mm単位で自動検出する。また、検出したひび割れは、CAD図面上に幅ごと色分け表示し、出力することが可能。
【2】 検査ロボット専用の撮影装置は遮光カバーに覆われており、カメラと床面の距離やフラッシュライトによる照明の光量・角度が一定に保たれるため、外的要因に左右されず常に同条件での画像取得が可能となり、画像認識によるひび割れ検出が高精度で実施できる。
【3】 SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:レーザーセンサーなどで取得した周辺環境の情報から、自己位置の推定と地図の作成を同時に行うこと)による自律走行を行うことにより、柱やその他の障害物を回避しながら1,500㎡を約6時間で検査する。これにより大空間構造物における床面の一定範囲を一度に検査することが可能となる。
【大空間構造物における床面の一定範囲】大空間構造物における床面の一定範囲建築基準法施行令第112条 第1項に定められている防火区画(面積区画)。耐火建築物および準耐火建築物は床面積1,500㎡ごとに準耐火構造の床もしくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。
【4】 撮影画像は無線LANによりパソコンに随時転送され、AIにてひび割れ検出をタイムリーに行う。撮影画像をサーバーにアップロードして処理を行うといった手間や時間は不要になるため、走行後ただちに検査結果を図面にプロットし、速やかな記録書類の作成ができる。
【5】 検査ロボットとパソコンのみで位置情報の取得からひび割れ検出、図面表示まで一連の検査業務を行うことができる。また、検査ロボットは操作が容易であり、全体重量が35㎏と軽量で、さらに撮影装置と走行台車が分離可能なため、容易に持ち運べる。

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ロボスタ編集部

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