JALとウェザーニューズ 乱気流で揺れる航空機の情報をAIが解析、後続機に自動通知 空の安全を守る仕組みを共同構築

日本航空(以下、JAL)とウェザーニューズは航空機の揺れによる利用者および、客室乗務員への影響を未然に防ぐための仕組みを共同で構築したことを発表した。

この仕組みは揺れの原因となる気流の乱れを表す指標「EDR」(詳細後述)を自動計算する技術を応用し、JALが日本で初めて開発をしたリアルタイムに揺れの情報を地上に自動報告する仕組みと、地上に報告された揺れ情報を機械学習(AI)を用いてより迅速に処理して即時に運航中の航空機に自動通知するJALとウェザーニューズが共同開発したシステムを組み合わせることで実現。JALとウェザーニューズは今後も協力し、航空業界の安全対策に貢献していく。


後続機体へ揺れ情報を共有するシステムの流れ



揺れの原因となる気流の乱れを表す指標を自動計算する技術

現在、乱気流に遭遇した航空機のパイロットは揺れが収まり十分に安全が確保された後に、手動によるデータ通信や無線によって揺れ情報を地上に報告している。そのため、乱気流に遭遇してから地上に揺れ情報が報告されるまでに時間差が発生する。

そこで、世界各国で飛行中の揺れを把握する新たな基準として「EDR」(イーディーアール)という技術の導入が検討されている。「EDR」(Eddy Dissipation Rate、渦消散率:渦が消えていく速さ)は気流の乱れを表す指標で、航空機のコンピュータに搭載した「EDR計算アルゴリズム」により、自動的に計算され、リアルタイムに地上に報告することができる。

JALは日本のエアラインとして初めて「EDR計算アルゴリズム」を航空機のコンピュータに搭載。この「EDR計算アルゴニズム」には計算された「EDR」を現在運用している運航乗務員の体感をもとに判定する揺れ情報に換算する独自の計算アルゴリズムも組み込まれている。(ボーイング767型機の一部、およびボーイング737型機全機に搭載予定)

これにより航空機から地上に報告された「EDRによる揺れ情報」はパイロットが出発準備の際に使用するウェザーニューズの運航管理支援システム「FOSTER-NEXTGEN」(気象情報や運航情報を統合した運航支援システム)にリアルタイムに反映され、パイロットが手動で報告する揺れ情報と同等に活用できるようになる。出発前のパイロットは従来の揺れ情報に加えて、「EDR」による揺れ情報も用いることで、より安全な運航を提供するための検討が可能。


揺れ情報を即時に運航中の航空機に自動通知

これまでJALでは乱気流に遭遇した航空機のパイロットから報告された揺れ情報を地上の運航管理者が後続機のパイロットに通知していたことから、後続機のパイロットに情報が届くまで時間差が生じていた。

揺れ情報を後続機のパイロットに迅速に伝えることで利用者や客室乗務員への影響を未然に防ぐことを目的として、JALとウェザーニューズはパイロットから一定以上の揺れが報告された場合に、その揺れ情報を後続機のパイロットへ自動的に通知する新たなシステムを開発し、2020年12月から運用を開始した。

同システムはパイロットが航空機用のデータ通信システムを通してテキスト形式で手動報告した揺れ情報を機械学習技術(AIエンジン)を用いて自動解読し、ウェザーニューズの運航管理支援システム「FOSTER-NEXTGEN」上に表示させる。一定以上の揺れが報告された場合、報告した航空機の位置および観測時間情報から、一定範囲内を通過中または今後通過する可能性のある航空機のパイロットに対して、自動で揺れ情報を通知。これにより、通知を受けたパイロットは揺れ情報をリアルタイムに把握することが可能になる。


揺れの観測から後続機への通知までを全自動化することで高まる安全性のイメージ

「EDR計算アルゴリズム」と同システムが2021年1月(予定)より連携することにより、航空機が揺れを観測してから後続機へ通知されるまでのプロセスが自動化され、通知を受けた後続の機体のパイロットはシートベルト着用のサイン、機内食提供のタイミングの変更、揺れを避けた飛行高度の変更などの安全対策をより早く実施することができるようになる。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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