約500箇所の乗降地点を移動するオンデマンド交通「しんゆりシャトル」実証運行 小田急が開始

川崎市と小田急電鉄株式会社は駅を中心としたまちづくりや公共交通機能の強化等に関する小田急沿線まちづくりに連携して取り組んでいる。
小田急バス、川崎交通産業、神奈中タクシーは連携し、2021年2月17日(水)から5月16日(日)まで、小田急線新百合ヶ丘駅周辺においてオンデマンド交通「しんゆりシャトル」を実証運行することを発表した。なお、施策は新型コロナウイルス感染症対策を講じたうえで実施する。


より実用に近づけたサービスとして提供

「しんゆりシャトル」は対象エリア内に、バス停よりも高い密度で配置する約500箇所の乗降地点「ミーティングポイント」間の移動を提供するオンデマンド交通サービス。小田急電鉄は2020年2月から4月に「しんゆりシャトル」の実証運行を無償で行い、主に配車に関する効率性や需要を検証した。配車アプリには「Shotl」を用い、1日あたり最大で約200名、実証期間を通じて約5700名の人に利用された。配車システムは大きなトラブルなく機能し、高密度の需要にも問題なく対応できることを確認でき、また利用者アンケートによる満足度調査では、80%以上の人が「満足」または「やや満足」と回答した。



今回の実証運行では昨年、小田急電鉄を中心に同エリアで取り組んだ実証運行から、有償化をはじめ、より実用に近づけたサービスとして提供する。小田急電鉄が提供する「EMot」(エモット)により、配車依頼から運賃の支払いまでを1つのアプリで行えるようにするとともに、EMotの複合経路検索機能において、鉄道、路線バス、タクシー、自転車シェアなどの多様な交通手段と一体的に情報提供する。



また、子育て世帯の送迎や日常的な生活シーンのニーズを確認するため、保育園、習い事・塾などの教育施設や、駅前の大型商業施設 新百合ヶ丘エルミロードの利用者を対象にしたお試しクーポンの配付を行い、サービスの利用促進と有効性(需要や負担軽減効果等)の検証に取り組む。なお、実証運行は国土交通省の日本版MaaS推進・支援事業に選定された「しんゆりMaaS実証実験」の一環として実施するもの。

川崎市と小田急電鉄は今後もMaaS分野での連携を強化し、「しんゆりシャトル」の実用化など、次世代交通の整備による公共交通機能の強化と駅を中心とした快適なまちづくりに取り組んでいく。

日本版MaaS推進・支援事業
地域の課題解決に資するMaaSのモデル構築を図る事業で、新たなMaaSのモデルとなり得る38事業が選定されている。MaaS(Mobility as a Service)とは、さまざまな種類の交通手段をひとつのサービスとして統合する概念。



乗車方法と運賃

「しんゆりシャトル」は配車アプリを通じた呼出に応じて、随時経路を変えながら運行する。利用者が指定した出発地、到着地近くのミーティングポイントで乗降可能。実証運行期間は2021年2月17日〜5月16日(予定)で新百合ヶ丘駅周辺 約5㎢を運行する。運行時間は7時~22時で、運賃はおとな500円、こども250円。1ヶ月間の定期券も販売するが、決済はいずれもアプリ上で行う。



車両はトヨタ アルファードを使用し、最大同時運行台数は4台。乗降地点数は約500箇所(対象地域は図の青線で囲まれたエリア)


「しんゆりシャトル」実証運行の狙いと利用促進策

しんゆりシャトルは誰でも利用できる交通サービスだが、実証運行では特に子どもの送迎による負担軽減効果や、自家用車からのシフトによる駅周辺道路の混雑緩和・連携施設の集客力向上効果について検証する。利用促進に向け、実証運行期間中に取り組む施策は以下のとおり。

1.保育・教育関連施設での施策
保育園や習い事の教室等の教育関連施設の利用者を対象に、しんゆりシャトルのニーズ把握のために行うアンケート調査に協力した人へ、しんゆりシャトルの無料クーポンを配付する。なお、対象施設は未定。(決定次第、対象施設にて案内。予定枚数に達し次第配付終了)

2.駅前商業施設での施策
新百合ヶ丘エルミロード(イトーヨーカドー・Odakyu OXを含む全館)で税込2,000円以上の買い物をし、2月中に「バス無料チケット」を取得した人を対象にアンケートを実施し、回答した人に「しんゆりシャトル」の無料クーポンを配付。(予定枚数に達し次第配付終了)

3.「しんゆりMaaS実証実験」で取り組むその他の施策

「EMot」による交通サービス検索・手配機能や列車混雑予報 「EMot」では鉄道・路線バス・タクシー・自転車シェアリングの検索等を一括して実施できるサービスを提供している。また、小田急線の各列車の各駅間における混雑予報(実績を元にした予測)を表示することで、鉄道の混雑確認に役立てて、公共交通の移動を便利にする。
「EMot」による観光情報の一体的な提供 小田急線沿いのおすすめ観光地を対象に、SNSからAIが抽出した観光地の定番スポットや見どころスポットを提案する「周遊プランニング機能」をEMotにおいて提供している。
公共交通等の交通サービスによる目的地までの経路検索と、観光地における定番スポットや見どころスポットに対応する周遊ルートなどの情報と周遊計画を旅マエから旅ナカまで一体的に提供し、さらに新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からも安心・快適に利用できるような情報提供を行うことによって、休日のお出かけのプランニングへの活用や、自家用車による外出から公共交通による外出への転換を促す。
関連サイト
EMot
小田急電鉄

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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