NVIDIA 最も過酷な産業での活用を想定した「Jetson AGX Xavier Industrial」を発表 激しい衝撃や振動、極端な温度変化にも耐える設計

工場や農場から製油所、建設現場に至るまで、世界には労働条件が過酷で危険が潜んでいるものの、産業を回すには不可欠な場所が数多くある。これらの場所はすべて毎日稼働しなければならないだけでなく検査と保守が必要だが、現場の安全性と作業条件によっては人を送り込むのに適していない場所もある。製造業や農業、建設、エネルギー、行政といった分野ではロボティクスとオートメーションの採用が進んでいるが、多くの企業は要件の厳しい用途にAIや機械学習の利点を持ち込むことに苦労している。

NVIDIAは過酷で安全が重視される環境にAIをもたらすために設計された頑強な新モジュール「NVIDIA Jetson AGX Xavier Industrial」を発表した。同モジュールは販売パートナーである菱洋エレクトロ株式会社、株式会社マクニカ、株式会社ネクスティ エレクトロニクスが7月末に全国同時に出荷開始する。開発者はJetson AGX Xavier 開発者キットを使い、JetPackをダウンロードし、NVIDIA Jetsonサイト上のドキュメントを参考にすることで、産業アプリケーション用の最もスマートなエッジや組み込みシステムの構築を今すぐ始めることができる。


Jetson AGX Xavier Industrial モジュール

NVIDIA Jetson AGX Xavier Industrialモジュールは、コンパクトで電力効率の良い設計で、1秒間に30兆回の演算(TOPS)というAI性能を安定して発揮することができる。厳しい業界規格に適応するようにテストされ、最新の機能安全を搭載したNVIDIA Jetson AGX Xavier Industrialモジュールは激しい衝撃や振動、極端な温度変化にも耐えることが可能。また、既存のJetson AGX Xavierとピン互換、ソフトウェア互換およびフォームファクター互換があるため、アップグレードも容易。


【NVIDIA Jetson AGX Xavier Industrialの産業向けの主な機能】

衝撃 動作時衝撃:50G、半正弦波、11 ms
非動作時衝撃:140G、半正弦波、2 ms、FCT/DPA、340Gまで
振動 動作時振動:5G RMS 10 ~ 500 Hz、3 軸、FCT(ランダム/正弦波)
動作時振動:3G RMS 10 ~ 1000 Hz、3 軸、FCT
温度 動作時温度:-40 ºC ~ 85 ºC (TTP 表面での測定値)
湿度 非動作時湿度:95% RH、-10 ºC ~ 65 ºC
セーフティ クラスター エンジン ロックステップ ARM Cortex-R5 x2
エラー訂正コード DRAMとGPU ECC
動作寿命 10年


最も過酷な産業での活用を想定

Jetson AGX Xavier Industrialは工業、航空宇宙、防衛、建設、農業、輸送、在庫管理、配送、検査およびヘルスケアといった分野での使用を想定し、これらの分野全体で実現されるアプリケーションには、作業員や作業現場の安全性、作業現場への連絡とモニタリング、および危険で過酷な環境での検査などが含まれている。


石油・ガス業界でのJetson AGX Xavier Industrialはパイプライン、バルブ、機器および保守作業の監視または検査に基づいたリアルタイムの洞察を提供することで、エッジでの異常および故障の予測を簡略化する。拡張されたモジュールの信頼性によって、安全性、予知保全およびコンプライアンスといった用途への使用や、環境条件が変化する中で機器を常に稼働させる必要がある状況下での使用が可能になる。

自動車メーカーの施設の場合、1日に1,000台以上の車両を生産する工場では、600万以上の溶接部をすばやく点検する必要がある。NVIDIA Jetson AGX Xavier Industrial を通じてAIとコンピュータービジョンを使用することで、溶接ガンからプロセスと品質に関するデータを直接入手して分析できるようになるため、検査時間の短縮と品質予測の改善が可能になり、最終的にはより安全な車両を消費者に届けられるようになる。

GTC21で紹介された別の事例ではダイカスト工程でAIを活用して異常を検知し、製品品質を事前に予測できるようになったため、工程費用が最大30%削減され、不良率も最大40%減少できたという報告もある。その結果、プロセスがより効率的かつ安全になり、生産性と投資利益率が向上している。

同様に建設現場ではさまざまな天候でも安定した運用が必要とされる重機が使用されている。農場では肥料や除草剤の噴霧器、ならびにさまざまな地形の広大な土地で収穫される作物を運ぶトラクターが必要。無人航空機やドローンは過酷な環境を飛行する際には激しい衝撃や振動にさらされる。診療現場での超音波診断や患者モニターは長い寿命を通じて継続的に動作することが求められる。Jetson AGX Xavier Industrialは、これらすべてのマシンの自律稼働に必要な機能を提供する。


信頼性、安全性およびセキュリティを重視した設計

Jetson AGX Xavier IndustrialではJetson AGX Xavierシステムオンモジュールのスーパーコンピューティング機能に、過酷な環境でAIを活用するのに必要とされる信頼性、可用性および保守性を実現する拡張機能が組み合わされている。これらの機能にはエラー訂正コード、単一エラー訂正、二重エラー検出およびパリティ保護が含まれており、内部 RAMのレジリエンス、アドレスバスとデータバスのエラー検知とエラー訂正、ならびにIPのレジリエンスを産業アプリケーションに提供する。

モジュールにはSafety Cluster Engine(SCE)が管理する機能安全が搭載されており、安全認定を受けた産業用製品での使用に適している。また、Jetson AGX Xavierと同じ主要なアクセラレーターと高速のI/Oを搭載している。

Jetson AGX Xavier Industrialには512コアのNVIDIA Volta GPU、64基のTensor コア、2つのNVIDIA ディープラーニング アクセラレーター、2つのビジョン アクセラレーター、1基の8コア NVIDIA Carmel Arm CPU、1つのエンコーダとデコーダーなどが搭載されている。新しいSCEには2基のArm Cortex-R5 プロセッサが搭載され、統合された障害検知メカニズム、ロックステップ方式のサブシステムに使用することができ、組み込みのシステムテストを可能にしている。Cortex-R5は常時稼動しているため、安全性とエラー検知の機能に使用できる。

さらに、ハードウェアで検証されるセキュアブート、ハードウェア アクセラレーションに対応した暗号化、暗号化されたストレージやメモリのサポートなど、ユーザーのソフトウェアを保護するセキュリティ機能を備えている。


産業向け AI を簡単に構築および管理できるソフトウェア サポート

NVIDIA CUDA-X アクセラレーテッド コンピューティング スタックとJetPack SDKを搭載したJetson AGX Xavier Industrialは、クラウドネイティブの機能に対応するソフトウェア デファインドのプラットフォーム。NVIDIAのCUDA-X アクセラレーション、NGCの実運用可能な無料の事前トレーニング済みモデルと NVIDIA Transfer Learningツールキットを活用することで、開発者はディープラーニングおよび AI のトレーニングと推論のシステムを最短時間で構築および展開できるようになる。

Jetson AGX Xavier IndustrialとJetPackによって、ユーザーはオーケストレーションと管理のためのクラウドネイティブのテクノロジを使い、耐久性と安全性が求められる現場のシステムを容易に保守およびアップデートできるようになる。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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