AIタクシーで先行するドコモ、追うソフトバンク「モバイル流動人口統計」ってなに?

「タクシーを探している人がどのエリアに何人いるか、が解るので効率的にお客が拾える。とても便利」
「お客様が待っている場所がピンポイントでわかる」(AIタクシー利用の運転手)

さまざまな方法でスマホユーザーの人数を検出することで、エリアごとにほぼリアルタイムで人数を把握したり、数分後の人数を予測する「モバイル流動人口統計」の活用が加速する気配だ。


人の流れを地図やグラフで表示

位置情報を用いたビッグデータ事業を行う株式会社Agoop(アグープ)は、最短10分前の人の流れを地図やグラフなどを使ってわかりやすく可視化するサービス「Kompreno」(コンプレノ)を開発し、2018年2月5日から国内外で提供を開始した。Agoopはソフトバンクグループの企業だ(ソフトバンク株式会社100%出資)。

流動人口データを可視化した「Kompreno」利用イメージ

「Kompreno」は、スマートフォンのアプリケーションから取得した位置情報データを独自の技術で解析して人の流れを見える化した「流動人口データ」を、地図やグラフなどのビジュアルを用いて表示する「ダッシュボード」の形で可視化したサービス。

10分前から2週間前までの「流動人口データ」を、ウェブブラウザでいつでも簡単に確認・分析することが可能になる。まずは、人の流れや密集度、滞在時間、移動速度などの情報を可視化して提供し、観光地の分析や都市計画、出店計画などに利用できるようする。世界の200以上の国と地域に対応する。また、今後は細かな分析機能などを順次追加していく予定とのこと。


「Kompreno」の主な機能(可視化)  ※同社ホームページより


GPSで位置情報ログを取得し、2種類の流動人口データを生成

「Kompreno」(Agoop)の「流動人口データ」を取得、計算、予測するしくみはこうだ。
同社のスマホ向けアプリのユーザーのうち、許諾を得たユーザーからGPSの位置情報を取得する。GPSデータを「動く点」として細やかに把握、人の流れとその傾向をつかめる「ポイント型流動人口データ」と、アプリユーザーを日本の総人口規模に換算して、各サイズに仕切られたメッシュ単位での推移を時間帯別につかむ「メッシュ型流動人口データ」の2種類がある。商業施設のエリアマーケティング、地方自治体の経済・観光政策や防災対策など、様々な分野で活用できるデータだと言う。基本料金30万円/月(税抜)〜 (※料金は利用範囲に応じて変動)

GPSを利用している点が特長。また、集計人数がソフトバンクのスマホに依存しないのも特長だが、その反面、アプリ利用者に依存する


基地局エリアの流動人口統計を活用した「AIタクシー」

「モバイル流動人口統計」で先行しているのはNTTドコモだ。
NTTドコモは、東京無線協同組合、富士通、富士通テンと共同開発した「AIタクシー」の実証実験を行うことを2016年5月に発表している。
この技術のポイントは、利用者のスマホなどの通信機器とドコモの基地局が通信することで、エリア内の人数を500m単位で推定する。三角測量などを利用して人数を割り出している。その人数に適宜補正をかけた人口統計を、運行データのほか、気象データや周辺施設(POI:建物や店舗等の施設情報)データ等に機械学習等の人工知能技術を適用、タクシーの需要予測モデルを作成する。それを利用することで地域別に30分後にタクシーを利用したい人数(需要予測モデル)を推定し、タブレットに表示するしくみだ。
NTTドコモのスマホ等ユーザ数が人口のベースになる。


タクシーの運転手はエリアごとに潜在顧客がどの程度いるかを見て、タクシーを移動させる。これによって顧客が探しやすくなり、売上げに貢献できると言い、実証実験では需要予測技術を使ったタクシーは使わなかったタクシーに比べて売上げが49%も向上した。

モバイル人口統計「AIタクシー」によって、運転手に地の利のない場所でも顧客が多いと推定された地域に行くことで顧客を獲得しやすくなる

■「AIタクシー」のご紹介(NTTドコモ)


近未来人数予測

ドコモは人工知能を活用した「近未来人数予測」の実証実験を2017年9月に実施した。
「AIタクシー」は、現在から30分の間に発生するタクシーの乗車台数を予測するものだか、「近未来人数予測」はそれを更に発展させ、数時間先のエリア内における人の数を予測するものだ。
これにはNTTグループのAI関連技術「corevo」の「時空間変数オンライン予測技術」を用いている。人口統計の時系列データから時間と空間の影響パターンを学習し、エリア内にいる過去の人数の増減が周辺エリアの人数の変動にどのような影響を及ぼしているかを学習し、数時間先の人数を10分単位で予測する。

今後、「モバイル流動人口統計」システムによる人口推計や予測によって、商圏の把握や移動経路の分析など、様々なマーケティング活用が見込まれる。精度を上げることがこれからの課題だが、ビッグデータの活用が成功の鍵となる。

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ロボスタ編集部

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