マイクとスピーカー部が分離した独特のスマートスピーカーが発表される!GDPRのプライバシーを考慮した「Snips Air Concept」日本進出も視野

パリとニューヨークに本拠を置くAIのスタートアップ「Snips」が、2019年にスマートスピーカーを発売する計画を発表、あわせてICOによる資金調達を発表した。




発表された「Snips AIR Concept」のコンセプトは既存のスマートスピーカーとはかなり違っている。ハードウェアは壁に設置する小型ポータブルマイクデバイス「AIR Satellite」と、高音質スピーカー「AIR Base」、リモコンの組み合わせで構成される。それぞれがメッシュネットワークで接続され、例えば複数の「AIR Satellite」を各部屋に設置して、シームレスに相互運用できる「AIRネットワーク」と呼ぶ設計が採用されている。



「AIR Satellite」はバッテリーで駆動する小型デバイス。マイク搭載かつ、表面にはLEDのドット表示で様々な状態を表すことができ、タッチも検知する仕組みを持つ。このハードウェアにより、音声制御だけでなく、スワイプやタップなどマルチモーダルな操作が可能になっている。部屋の壁にこのデバイスを貼って使うイメージとなるが、LEDの表示もセンスが良く、インテリアに馴染みそうだ。

一方、「AIR Base」は強力なCPUを搭載した高音質スピーカーだが、更にファーフィールド対応マイクアレイも搭載している。


Snips AIRの特徴はハードウェアだけではない。むしろソフトウェアのアーキテクチャにこそ最大の特徴がある。音声アシスタントとして自社開発のSnips Voice Assistantを搭載し、ユーザーの音声データのプライバシー保護を最大限考慮している。音声データをクラウドに送信せずにローカル側で処理することで、インターネット接続のない環境でも利用できる、ネットワークに依存せず高速に処理できる、クラウド利用料が不要、監視やデータ侵害に強いといったメリットがある。この100%デバイス上での処理というアプローチにより、今話題のEU一般データ保護規則(GDPR)に100%準拠できるという。

Snipsによれば、既存の音声アシスタントはクローズドソースで、ゼロプライバシーで、アグリゲーターの立場であり、一方のSnips Voice Assistantはオープンソース、プライバシー考慮、分散化されたプラットフォームの立場という違いがあるという。

Snipsは、標準のビルトインスキルに加えて、カスタムスキルもスキルストアから選択可能だ。開発者向けコミュニティも準備されているので今後スキルの増加が期待される。



Snipsは現在、英語、フランス語、ドイツ語、日本語に対応。今後スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、北京語、韓国語に対応し、2019年にはさらに多くの言語に対応する計画だ。

プライバシーを最重要視するというコンセプトがどこまで歓迎されるのか、今後の展開にも注目していきたい。また、日本語版のSnips AIRが早期に発売されることも期待したい。

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中橋 義博

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。

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