AIチャットボットの次に「AIエージェント」の時代がやってくると言われている。
Gen-AX株式会社(ジェナックス)とソフトバンク株式会社は2025年11月10日、コンタクトセンター向けの自律思考型AIによる音声応対ソリューション「X-Ghost(クロスゴースト)」の正式提供を開始した。

記者発表会では、先行導入のパイロットプロジェクトとして三井住友カード株式会社との実証を行い、日本航空(JAL)のJALカードとも連携していることが発表され、具体的な活用方法も公開した。

Gen-AXは、生成AIを活用したSaaSプロダクトの開発・提供に加え、業務のAX(AIトランスフォーメーション)を支援するコンサルティング事業も展開しており、ソフトバンクグループにおける生成AIプロジェクトの中核のひとつに位置づけられている。

X-Ghostとは:自律思考型AIが音声応対を担う次世代ソリューション
「クロスゴースト」は、AIが自律的に思考し、人間同様の自然な音声対話で顧客応対する“AIオペレーター”として、企業の業務効率化と顧客体験の向上を両立させるソリューションだ。

24時間365日の対応を可能にする音声対話AIエンジンを搭載している。(音声応対のデモ動画は関連記事「【動画】生成AIが自然に話して電話応対、ついにGen-AXがGPTリアルタイム搭載「X-Ghost」のデモを公開」参照)
Gen-AXの「クロスブースト」と「クロスゴースト」
Gen-AXの「クロスブースト」は、生成AIで蓄積ナレッジを解析し、問い合わせ対応の検索から回答生成までを自動化・支援するプロダクトで、専門知識がなくても運用改善できる LLM Ops を備える。
また「クロスゴースト」は、マルチモーダルLLMが音声を直接理解して柔軟に対話する自律思考型AIで、業界別の業務手順を基にカスタマイズして早期導入を可能にする。
将来的には、AI が対話データを活用して業務そのものを進化させ、企業と顧客のコミュニケーションを発展させていくことを目指す。

当面は大規模コンタクトセンターを中心に、音声応答業務の一部を生成AIへ置き換えていく方針で、まずは 1,000席以上の企業を対象にエンタープライズ向け販売を開始する。
Gen-AX 砂金CEOのコメント:AIを“現場に定着させる”仕組みづくり
記者説明会に登壇したGen-AXの砂金CEOは次のように語った。

「労働力不足が深刻化するなか、私たちは単にAIを導入するのではなく、AIが現場に定着し、人と共に働くための仕組みを提供しています。Gen-AXは“おもてなし”を支えるAIとして、企業の生産性向上と人の豊かさの両立を実現するAXを推進し、テクノロジーの力で誰もが安心して働ける社会と、心が通う顧客体験の実現を目指していきます。」
同社によれば、近年はコンタクトセンターとインハウスを合わせた市場規模が2024年度中に約2兆円規模へ拡大すると予測。「問い合わせ市場」は大きな成長を続けているという。

また、音声認識技術の発展により市場も中長期的に高い成長が期待されており、音声認識市場は年平均成長率(2023~2028年度)16.9%で推移し、2028年度には300億円超に達すると見込む。

一方で、市場の拡大とAI活用の進展に伴い、「ユースケース設計」や「データ品質の維持・改善」の難しさが新たな課題として浮上。「AIを導入しても継続的な改善が難しい」「現場運用に定着しない」といった問題が企業各社で発生しているという。
さらに日本の多くのコンタクトセンターでは依然として深刻な労働力不足と高い離職率が続いており、対応品質の維持や知識継承が困難になっている点も指摘した。
ソフトバンクが導入を促進、既に10社の案件が進行中
説明会の後半には、ソフトバンク株式会社の長野氏が登壇した。長野氏は次のように語った。
「人手不足や採用難など、コールセンターの課題を一気に解決できるソリューションだと確信しています。ソフトバンクの法人担当チームは国内エンタープライズ企業の9割以上と強固なリレーションを持ち、通信・ITソリューションの提案ノウハウを活かしながら、すでに先行営業を進めています。」

今日の発表に先立ち、すでに 10社以上の案件が進行中であり、金融機関、鉄道、運輸、メーカー、小売など、大規模コンタクトセンターを抱える企業ごとに課題解決の支援を行っているという。先行事例として、三井住友カードとJALカードの2社を紹介した。
三井住友カードの事例
三井住友カードは、従来型の「一問一答型AI」ではなく、コールセンターに寄せられる問い合わせの“本質”を理解し、人間のオペレーターが行うような自律的思考型の応対を実現しているという。長野氏は具体例を挙げた。
カードが利用できなくなった顧客が問い合わせを行う場合、顧客が本当に知りたいことをそのまま質問として表現しないことも多い。従来のルールベースAIでは、あらかじめ用意されたQ&Aしか対応できなかった。
しかし今回のソリューションでは、顧客が話す自然言語を理解しながら、AIが自ら社内データベースに照会して顧客のステータスを把握し、状況に応じた最適な回答を導き出す。
「カードが停止されているのか」「料金未払いがあるのか」などを自動で調べたうえで課題解決に導く点が重要だと強調した。

このように人間のオペレーターであれば当たり前に行っているデータ照合や状況把握を、AIがリアルタイムで実現できるところまで技術が進んでいるという。
また三井住友カードは今回の導入理由として、採用難・人手不足が顕著な部門であることを挙げ、2028年度を目標に応対業務全体の7割をAIによる自動化へと移行する方針を示した。

ソフトバンク自身も約6,000席規模のコンタクトセンターを運営しており、AIによる自動化を進めている。これまで成功と失敗を繰り返しながら知見を蓄積してきた経緯があり、三井住友カードはそのノウハウ提供をソフトバンクに求めたという。
JALカードの事例
2件目の事例は日本航空(JAL)のJALカードだ。
JALは以前からAIによる効率化に取り組んでおり、JALカードは「顧客にストレスを与えない、よりスムーズな応対」を目標に掲げている。
例えば、IVRを導入している場合、コールセンターに問い合わせるとまず音声ガイダンスが流れ、質問の種類を選別するために該当する番号を何度かプッシュするのが一般的だ。これは本来想定していない問い合わせ内容が誤って入ってきてしまう「紛れ込み入電」を防止するためだ(製品の修理受付に料金請求の問い合わせが入る等)。このしくみは効率的ではあるものの、煩わしいと感じている顧客も多い。
クロスゴーストを導入することによって、人が応対するのと同じようにAIが応対して内容を選別し、AIが回答できるものは提示し、複雑な内容だと判断した場合はAIから担当のオペレータに変わって引き続き案内を実施する実証をおこなった。

JALカードのコメントとして、このソリューションとソフトバンクに対して、次のような効果を期待しているという。
待ち時間の短縮、および業務効率化
IVRの代替による顧客体験の向上
ソフトバンクへの「高精度AI技術」「安定した基盤」「継続的運用支援」の期待

ソフトバンクの今後の展開
長野氏は「まずはコンタクトセンター市場をターゲットとし、社内応答・照会業務、グローバル展開を含め、合算市場規模2兆円のマーケットを狙っていく」と述べた。

また、AIによる同時通訳の精度向上により、日本語以外の多言語にも対応できる可能性が高まっていると指摘。日本の高品質な応対システムを海外へ展開するビジョンも示した。
「X-Boost」や「X-Ghost」を砂金CEOが解説するセミナー開催
生成AIが「問合わせ業務」を強力に支援する「X-Boost」や「X-Ghost」。
CEOの砂金信一郎氏が登壇するオンラインセミナー「ソフトバンクの生成AI戦略の中核「Gen-AXが描くAIエージェント戦略」砂金CEOが語る成功の条件」を2025年11月21日(金)に開催します。先着100名様を無料でご招待、どなたでも参加できます。

サービス開始から数カ月を迎えた「X-Boost」と、生成AIによる音声応対に対応した「X-Ghost」について、それぞれの概要・機能・ユースケース・導入実績と効果等を紹介していただきます。
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