スターバックスがMicrosoft Azureを活用した「強化学習」や「IoTによるトラブル予測」「ブロックチェーン」を導入

世界規模で展開する、シアトル発コーヒーチェーン店のスターバックスにおいて、様々な面でMicrosoftの技術が使われていることがわかった。

米マイクロソフト社は5月6日のプレスリリースやブログ、先日開催されたマイクロソフトのMicrosoft Build 2019カンファレンスにおいて、ドライブスルー注文の予測やIoTとの接続可能な設備など、スターバックスの事業改善への新規戦略を共同で行うことを発表している。プラットフォームはMicrosoft Azureが利用され、強化学習を用いたAI技術、IoT技術も活用されている。また、スターバックスは3月の年次株主総会で既にデジタル追跡機能のプレビューを行なっており、正式な導入が決定している。


強化学習を用いてより適切な提案を実現

スターバックスでは、強化学習技術を活用して「スターバックスモバイルアプリ」を利用している利用者一人一人に合わせたサービスや商品の提供を可能にしているという。強化学習とは機械学習の一種で、外部からのフィードバックに基づき、複雑かつ予測できない環境でもシステムが判断を下すもので、今回のプラットフォームはMicrosoft Azureで構築されている。

アプリ内にて利用者は、強化学習プラットフォームを通じ、近くの店舗の在庫や人気のセレクション、天候、時間帯、コミュニティの好み、過去の注文履歴をベースとして、専用にオーダーメイドされた注文の提案(レコメンデーション)を受け取れる。

写真:Microsoftのプレスリリース、ブログより

同サービスは、近い将来ドライブスルーでの展開も予定されており、スターバックス エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高技術責任者のジェリ マーティン-フリッキンガー (Gerri Martin-Flickinger) 氏と、同社分析および市場調査担当シニアバイスプレジデントのジョン フランシス (Jon Francis) 氏は、それぞれ次のように述べている。


スターバックス エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高技術責任者Gerri Martin-Flickinger 氏

モバイルアプリにとって、データを駆使したパーソナライゼーションは欠かせません。今度はそのデータをドライブスルーでの体験向上に活用していきます。
ドライブスルーのお客様に対しては、モバイルアプリのお客様と違い、この技術で個別の注文履歴を把握できません。そこで同技術では、店舗での取引履歴や、各店舗の 400 以上もの基準に基づき、関連性の高いドライブスルー向けレコメンデーションを作成することになります。このレコメンデーションは、デジタルメニューのディスプレイにて事前に表示され、お客様はそれを見て注文できます。最終的には、より自分に合ったパレコメンデーションを自ら受けるよう選択できるようになります。
スターバックスでは現在、同社のイノベーションの中心となるシアトルの Tryer Center にて同技術をテストしており、近々公開する予定です。

スターバックス分析および市場調査担当シニアバイスプレジデントJon Francis 氏

機械学習や人工知能を駆使することで、お客様が店舗内にいても車内にいても、さらには外出先でアプリを通じてでも、場所に関わらずお客様と接することができます。
機械学習は、ストアデザインやパートナーとの連携、在庫最適化、バリスタのスケジュール調整にも役立っています。この機能は、最終的にわれわれの事業経営全般に関わってくるでしょう。




IoT の実装でスムーズなコーヒー体験を

今回、マシンを安全にクラウド上にて接続するため、マイクロソフトのAzure Sphere を導入。背景には、3万に及ぶ各店舗に十数台存在するさまざまな器具は1日約16時間稼働しており、これらの器具に不具合があると、サービス担当者を呼び出さねばならず、これによる修理コストと、機具の故障による利用者への提供が滞るとの問題があった。

IoT 対応マシンは、エスプレッソショットを抽出するごとに、使われた豆の種類からコーヒーの温度、水質など、十数以上のデータを収集。8時間で5メガバイト以上にのぼり生成されるデータは、両社が開発した保護モジュール (guardian module) と呼ばれる外部デバイスにてさまざまな機具をAzure Sphereと接続し、データを安全に集約してマシンの不具合を事前に特定できるようにした。

また、これまで各店舗に配送を行っていた新しいコーヒーのレシピの提供を直接マシンに送信し、ボタンをクリックするだけでクラウドから Azure Sphere 対応デバイスに対し、安全なレシピの配信を可能にした。

MSリリース内、スターバックスの提供写真より

スターバックスは、Azure Sphere の全般的な目標を、事後対応型のメンテナンスから脱却し、発生前に問題を回避する予測型アプローチへと移行することとしており、長期的には、在庫管理や備品注文などの用途にも Azure Sphere を活用するほか、サプライヤに対しても各製品の次期バージョンに同ソリューションの搭載を希望しているとのことだ。




ブロックチェーンでコーヒーへの道のりを利用者と共有

また、昨年だけでも、38万以上のコーヒー農場と協力してきたスターバックスは「コーヒーが農場からカップに辿り着くまでの道のり」を追跡し、コーヒー豆を栽培した人とコーヒーを飲む人を結びつけるため、パッケージコーヒーに関する製造元や栽培場所はもちろん、コーヒー農家に対しどういったサポートをしているのか、豆がローストされた時期と場所、試飲メモなどを利用者に提供するモバイルアプリの機能を開発しており、今回、新たにマイクロソフトの Azure Blockchain Serviceを搭載し、デジタルでリアルタイムな追跡を可能にした。

5月2日に発表されたマイクロソフトの Azure Blockchain Service(米プレスリリースより:英語)
https://news.microsoft.com/2019/05/02/microsoft-delivers-new-advancements-in-azure-from-cloud-to-edge-ahead-of-microsoft-build-conference/
Microsoft Azure ブロックチェーン(公式サイト)
https://azure.microsoft.com/ja-jp/solutions/blockchain/

スターバックスは、同サービスにより、サプライチェーンの関係者がコーヒーの移動経路や、豆から袋詰めされるまでの課程が追跡でき、各経路は変更不可能な共用台帳に記録されるため、関係者全員が製品の辿った道のりをより完全に把握できるようになることで、農家の力を高めるだけでなく、利用者もコーヒーを購入することでサポートしている実際の人々に与える影響を実感できるようになると述べている。

写真:Microsoftのプレスリリースより

※【トップ写真】ニューヨークの 81 番地とブロードウェイ通りに面するスターバックス店舗/写真:Microsoftのプレスリリースより

■【動画】Starbucks Vision Keynote Demo // Microsoft Build 2019(英語)

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ロボスタ編集部

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