エッジコンピューティングの進化を加速するGPU「EGX A100」「EGX Jetson Xavier NX」をNVIDIAが発表 5Gやロボティクスなど

5月14日でオンラインで配信された「GTC2020」基調講演の最大のトピックのひとつは「NVIDIA A100」の発表だろう。NVIDIAの創業者でありCEOのジェンスン フアン氏はビデオ配信を通じてキッチンから、世界でもっとも強力なプロセッサのひとつとして紹介した。AI機能では従来比約20倍も高速化したとされ、マイクロエッジ サーバーからHPC、大規模データセンターでの活用まで幅広く活用できる。
A100を展開する次世代のアーキテクチャは「Ampere(アンペア/アンピュアという発音に近い)」。Ampereは今後注目のキーワードとなる。

NVIDIA A100

また、エッジ側で高性能かつセキュアなAI処理を可能にするための大規模市販サーバー向け「EGX A100」(冒頭の写真)と、マイクロエッジ サーバー向けの小型の「EGX Jetson Xavier NX」というNVIDIA EGX エッジAIプラットフォーム用の製品も発表した。今回の記事はこちらの製品群の紹介をしたい。


エッジコンピューティングやマイクロエッジ サーバーのニーズ

長らく「クラウドコンピューティング」がもてはやされてきたが、数年前から「エッジコンピューティング」や「マイクロエッジ サーバー」「マイクロデータセンター」というワードが注目され始めた。いわゆる現場側、もしくは現場に近いところで大量のデータをレスポンスよく、高速に処理しようという考え方だ。「5G」通信サービスや「自動運転」でも注目されている技術だ。
IoTによって現場側のデータが膨大になっていること、特にカメラの映像データ等、大容量のデータを大量に処理するのはインターネットを介したクラウドでは非現実的だ。エッジデバイスで処理する方法もあるが、ユースケースによってはパワー不足になる。
空港やスマートシティなどで数百台のカメラを管理したり、病院や店舗、農場、工場等では時として、膨大なストリーミングデータを現場近くのエッジセンサーで処理するニーズが生まれている。


EGX A100とEGX Jetson Xavier NX

「EGX A100」コンバージドアクセラレータおよび「EGX Jetson Xavier NX」マイクロエッジサーバーは、サイズ、コストおよび性能におけるさまざまなニーズに対応するために開発された。EGX A100を搭載したサーバーは、前述の空港などで数百台のカメラを管理することを想定し、EGX Jetson Xavier NXは、コンビニエンスストアなどで数台のカメラを管理することが想定されている。クラウドネイティブであるため、EGXの全ラインアップが共通の最適化されたAIソフトウェアを使い、AIアプリケーションを簡単に構築および展開することができるようになる。
EGX A100は、本年末に発売予定。すぐに設置が可能なEGX Jetson Xavier NX マイクロエッジサーバーは、エッジシステムの大量生産を目指している企業向けに現在販売している。

NVIDIAの創業者/CEOあるジェンスン フアン(Jensen Huang)氏は次のように述べている。

NVIDIAの創業者/CEOあるジェンスン フアン氏のコメント
「IoTとAIの融合により『Smart Everything』革命が始まりました。多くの産業で、電話業界にとってのスマートフォンのようなインテリジェントコネクテッドの製品やサービスを提供できるようになっています。NVIDIAのEGXエッジAIプラットフォームは標準的なサーバーを、小型のクラウドネイティブでセキュアなAIデータセンターに変革させます。また、NVIDIAのAIアプリケーションフレームワークを使えば、企業はスマートリテールからロボット化した工場や自動化されたコールセンターに至るまでの、AIサービスを構築できるようになります。」


NVIDIA Ampereアーキテクチャをベースにした「EGX A100」

EGX A100はNVIDIA Ampereアーキテクチャをベースにした、初のエッジAI向け製品。エッジへのAIの普及が続くなか、企業や研究機関はサーバーにEGX A100を搭載することで、エッジセンサーからストリーミングされる膨大な量のデータをリアルタイムで処理および保護できるようになる。

EGX A100では、NVIDIA Ampere アーキテクチャの圧倒的な性能にNVIDIA Mellanox ConnectX-6 Dx SmartNICの高速化されたネットワーキングとクリティカルなセキュリティ機能が組み合わされている。これによって、標準的な特定用途向けのエッジサーバーをセキュアでクラウドネイティブなAIスーパーコンピューターに変えることができる。

NVIDIAの第8世代のGPUアーキテクチャであるNVIDIA Ampereアーキテクチャは、これまでの世代のなかで性能が最も大きく向上しており、エッジで実行されるAI推論や5Gアプリケーションといった、多様な演算集中型ワークフローに対応できるようになっている。これにより、EGX A100はカメラや他のIoTセンサーからの大量のストリーミングデータをリアルタイムで処理することができ、より迅速な洞察の獲得と、業務効率の向上を実現する。

Red Hat のバイスプレジデント兼最高技術責任者であるクリス ライト (Chris Wright)氏は次のように述べている。

Red Hat クリス ライト氏のコメント
「データ、AI、そしてクラウドネイティブでインテリジェントなアプリケーションは、あらゆる業界でエンタープライズ エッジを変容させつつあります。NVIDIAの新しいEGX A100コンバージドアクセラレータは、Red Hat Enterprise Linuxのためにプリコンパイルされたドライバおよび Red Hat OpenShiftを採用している認定事業者と組み合わせることができるため、ハードウェアの設置と管理を簡略化することでき、さらにそれぞれのお客様が最も要件の厳しいAIエッジおよび5Gワークロードについてのさまざまな問題に対処できるようになります。」


小さいけれど、パワフルな EGX Jetson Xavier NX

EGX Jetson Xavier NXはマイクロサーバーおよびエッジAIoTボックス向けの世界最小にして最もパワフルなAIスーパーコンピューターとして、現在、エコシステムパートナーから20以上のソリューションが発売されている。EGX Jetson Xavier NXにはクレジッドカードサイズのモジュールに、NVIDIA Xavier SoCのパワーが詰め込まれており、複数の高解像度センサーから送られるストリーミングデータを迅速に処理することが可能。

エネルギー効率に優れたこのモジュールは、15Wで最大21TOPS、10Wで最大14TOPSという処理能力を有している。そのため、EGX Jetson Xavier NXは、AIワークロードに対応するための性能の向上が求められているものの、サイズ、重量、電力量またはコストの制約がある、組み込みエッジコンピューティング デバイスに新たな可能性をもたらす。

Malong Technologies の共同創業者/CEO であるマット スコット (Matt Scott) 氏は、次のように述べている。

Malong Technologies マット スコット氏のコメント
「NVIDIA JetsonとNVIDIA EGXは、小売業を変容させようとしており、セルフチェックアウトをより速く、より確実にできるようにしています。当社の RetailAIスイートを通じてAIのパワーを活用することによって、数十万の商品をリアルタイムで正確に識別できるため、よりシームレスで、安全なショッピングエクスペリエンスを生み出すことができ、しかも大規模な展開も簡単にできるようになりました。当社は、今後もNVIDIAのパワフルなラインアップを活用し、エッジにインテリジェンスをもたらすことで、お客様の満足度を高め、小売業の業容縮小に対処してまいります。」



既存のエッジ サーバーは、大手コンピューティンプロバイダーから入手可能

NVIDIA EGXソフトウェア対応の既存のエッジ サーバーは、Atos、Dell Technologies、富士通、GIGABYTE、Hewlett Packard Enterprise、IBM、Inspur、Lenovo、Quanta/QCTおよびSupermicroといった、全世界の大手コンピューティング プロバイダーを通じて入手できる。さらに、AdvantechやADLINKといった大手のサーバーおよびIoT システムのメーカーからも入手できる。


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ロボスタ編集部

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