キヤノンが世界最高画素数の320万画素SPADセンサーを開発 暗闇でもカラー撮影を実現、XRやロボット、自動運転にも活用

キヤノンは、独自の画素構造によって検出した微弱な光の粒子を効率よくとらえ、大量の電子に増倍させることで、暗闇でもフルHD(約207万画素)を超える世界最高(キヤノン調べ)の320万画素のカラー撮影が可能な13.2mm×9.9mmの超小型SPADセンサーを開発した。
生産開始は2022年後半を予定。セキュリティカメラやXR、ロボット、自動運転などの利用にも期待できる。


SPADセンサーとは

光の量ではなく、数を測るイメージセンサー。
SPAD(スパッド)センサーはSingle Photon Avalanche Diodeの略称で、広義にはデジタルカメラやスマホ等で使用されているイメージセンサーの一種。AR、VR、自動運転、超高速度撮影、自律ロボット、自動運転などでの活用が期待されている。

画素に入ってきた光の粒子(光子)を1つひとつ数える仕組み「フォトンカウンティング」を採用したもの。また、1つの光子が雪崩のように増倍し、大きな電気信号を出力する。

デジカメやスマホでお馴染みの「CMOSセンサー」とは、溜まった光の量を測定する仕組み(電荷集積)という点で異なる。CMOSは集めた光を電気信号として読み出す際に画質の低下を招くノイズも混ざってしまうが、SPADセンサーは仕組み上、読み出す際にノイズが入らないため、暗い所でもわずかな光を検出し、ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影したり、対象物との距離を高速・高精度に測定したりすることができる。



闇夜より暗い環境でも見える

キヤノンは2020年6月に「世界初、100万画素SPADセンサーの開発に成功」を発表した。わずか1年半強で3倍以上の高画素化を発表した。
同社によれば、今回開発したSPADセンサーは、画素内に光子を反射させる独自の画素構造により、有効画素面全体で効率よく光子を検出し利用できる。同一照度下において、一般的なCMOSセンサーの10分の1の画素面積で、同等の撮影が可能となる。そのため、小さなデバイスにも搭載可能な超小型でありながら、近赤外線域を含む感度が大幅に向上し、星の出ていない闇夜よりも暗い0.002 lux(ルクス)の環境下において、320万画素での動画撮影を実現したという。0.002 luxがどれくらいの明るさかというと、星明りの明るさの目安が0.02lux、星の出ていない闇夜(やみよ)の目安が0.007luxとされ、それよりも暗い環境下にも対応する。

暗視や監視用のカメラに本SPADセンサーを搭載することで、暗闇でも、あたかも明るい場所で撮影したかのように、明るい場所にて肉眼で見た色と同じ色で対象物の動きを捉えられるようになる。
キヤノンは2022年後半より、自社のセキュリティ用ネットワークカメラ製品に搭載するSPADセンサーの生産を開始する。革新的なセンサーを搭載し、安心・安全な社会の構築に貢献する製品の競争力を高めたい考えだ。


光の粒のような、高速な動きも捉える

また、SPADセンサーは、100ピコ秒(100億分の1秒)レベルの非常に速い時間単位で情報を処理することができるため、光の粒のような、高速に動くものの動きをとらえることが可能。フルHDを超える高解像度、わずかな光をとらえられる高感度性能に加え、この高速応答の特長を生かして、自動運転や医療用の画像診断機器、科学計測機器などに用いるセンサーとして幅広い活用が見込まれるため、積極的に外販活動を展開し、社会の変革やさらなる発展に寄与したいとしている。

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ロボスタ編集部

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