すかいらーくとGoogleが「店舗現場で生成AI活用」に挑む 挨拶の可視化とデータ民主化の事例を公開

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Google Cloudは、2026年1月7日、株式会社すかいらーくホールディングス(すかいらーくHD)が、Google Cloudと連携してデジタル技術を活用した店舗業務改善やデータドリブン経営の推進に積極的に取り組んだ導入事例を発表した。

すかいらーくHDは、ガスト、ジョナサン、バーミヤンなど20以上のブランドを展開し、約3,000店舗・年間約3.5億人の来訪客を誇る外食チェーン大手のすかいらーくグループの運営母体。

「いらあり」プロジェクトと「Gemini in BigQuery」の導入

今回、同社が展開する生成AIを活用した2つのプロジェクトが注目を集めている。1つは店舗における「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という基本の「挨拶」をデジタル技術で計測して可視化する「いらあり(挨拶あり)」プロジェクト。
もう1つは組織全体でのデータ活用を加速させる「Gemini in BigQuery」の導入だ。株式会社すかいらーくホールディングスマーケティング本部の池田 裕氏と藤本 祥恵氏が、その背景や開発の裏側、得られた成果について語っている。

顧客とスタッフの物理的接点は減少傾向、それが課題

配膳ロボットやセルフレジの導入が進む一方で、顧客とスタッフの物理的接点は減少傾向にある。こうした課題感から生まれたのが「いらあり」プロジェクトである。限られた接点の中で最大限のホスピタリティを発揮するため、基本である挨拶が気持ちよく行われているかを客観的に計測する取り組みだ。

具体的には、店舗に設置済みのデバイスを活用し、スタッフの発話をGeminiなどのAIで分析する。24時間分すべてを分析するのではなく、店舗のAIカメラとの連携などにより必要箇所のみを抽出する工夫が施されている。分析結果として得られた発話率や挨拶のクオリティは営業チームと共有し、効果検証を進めている。

Google Cloud TAPでプロトタイプを“2日で”構築

開発にはGoogle Cloudの「Technical Acceleration Program(TAP)」が活用された。これは通常のワークショップとは異なり、Google Cloudのエンジニアとすかいらーくの担当者がアーキテクチャを議論し、その場でプロトタイプまで作り上げる実践的なプログラムである。

当初2~3か月かかると想定されていた工程は、TAPによりわずか2日で構成検討からプロトタイプ作成まで完了し、プロジェクトを大幅に加速させた。池田氏は「ここまでのスピード感は圧倒的なメリットでしたが、技術的にも大きな転換点でした」と語る。従来の方式なら音声データをCloud Storageに置きプログラムで処理する設計が想定されていたが、今回の議論を経て、BigQueryから直接Storageのデータを読み込み処理するなど、よりシンプルで最新の構成にたどり着いたという。

現在は検証段階であり、発話の見逃しやスコア精度に課題が残る。今後は蓄積されたデータをもとにプロンプト調整を進め、低コストかつ高精度な店舗オペレーション分析基盤として完成度を高めていく考えだ。

業務部門が自らデータに触れる「データの民主化」

もう1つの柱が、Gemini in BigQueryを活用したデータ活用プロジェクトである。これまで一部の専門部署に閉じていたデータを組織全体で活用できるようにし、「データの民主化」と「業務効率の抜本的改善」を目指している。

2025年8月~11月に実施されたPoCでは、3つのユースケースを対象に、生成AIと分析基盤を融合させた新たな業務フローを検証した。BigQueryのAI関数(Gemini)を活用し、自社の1st Partyデータに、Web上のリアルタイム情報(キャンペーン、トレンド、気象実績・予報など)を掛け合わせた高度な分析が可能となった。

マーケティング本部では売上分析の高度化に着手。従来、「売上が5%下がった理由」を特定するには天候、販促、メニュー改定、前年比較など多岐の要因を個別調査する必要があったが、Gemini in BigQueryの活用により、複合要因を自然言語で多角的に分析できるようになった。

営業本部では、約3,000店舗におよぶPL(損益計算書)分析にGemini in BigQueryを導入。従来個別管理されていた店舗別PLデータをBigQueryに集約し、顧客対応やマーケティング部門が収益と各費用項目の関係を直接分析できるようになった。これにより、サービス向上や業務改善に資する新たな価値創出が期待されている。

藤本氏は「データの民主化により、現場担当者が直接データに触れ、トライアンドエラーを繰り返せるようになりました。これは非常に意義深いことです」と語る。「現場の肌感覚で『数字の違和感』に気づき、そのまま分析につなげられる」「担当者が自ら改善まで実行できる」という意識変革にもつながっているという。

AIエージェントを導入、データと経験を融合した予測精度向上

店舗開発の分野では、長年の“暗黙知”と表計算ソフトに頼っていた出店候補地の売上予測に「Data Science Agent」を導入。データサイエンティストではない現場担当者が自ら試行錯誤し、予測精度を高めていくプロセスが実現した。ベテラン社員の経験則をもとにAIの予測を補正する場面もあり、現在はこうした暗黙知を数値としてモデルに取り込むことで、さらに高度なデータドリブン経営を目指している。

技術と業務の垣根がなくなったことで、社員が主体的にデータへ向き合う土壌が育ち、「データの民主化」は確実に形になりつつある。今後は社内の成功例を広げ、この文化を組織全体に浸透させることで、すかいらーくの変革を一層加速させていくとしている。

■接客品質の可視化と開発の高速化
・店舗スタッフの「いらっしゃいませ」などの挨拶を Gemini で分析、計測し、サービス品質を客観的に評価する仕組みを構築。
・通常 2~3 か月を要する開発工程を、TAP の活用によりわずか 2 日間でプロトタイプ作成まで完了。

■自然言語による「データの民主化」
・Gemini in BigQuery の活用により、専門知識がなくても自然言語で多角的なデータ分析ができるようになった。
・売上の変動要因の特定や 3,000 店舗におよぶ PL(損益計算書)分析が現場で直接行えるようになり、分析業務の「自分事化」が進んでいる。

■現場主導の売上予測モデル構築
・Data Science Agent を活用し、現場担当者自らが試行錯誤しながら新規出店候補の売上予測モデルを構築、調整できる体制を実現。
・ベテラン社員の「暗黙知(経験則)」を数値化して分析モデルに組み込むことで、予測精度の向上とデータドリブン経営を推進している。

《ロボスタ編集部》

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