2026年1月22日(木)、AIソリューション企業の株式会社Laboro.AIがメディア向け勉強会を開催した。同社CEOの椎橋徹夫氏が登壇し、2025年のAI業界で注目すべき3つのキーワードについて解説を行った。
Laboro.AIの事業と理念
Laboro.AIは、大手日本企業向けにオーダーメイドのAIソリューションを提供している。椎橋氏は「AIは納品して終わりでは本当のインパクトが出ない。事業や組織をどう変えていくか、企業変革まで伴走することが重要」と説明した。
また、日本企業のAI活用がコスト削減中心になりがちな点を指摘し、「グローバルでは新規事業創出やビジネスモデル変革など、売上・成長につながるAI活用が最も大きな成果を生んでいる」と述べた。
椎橋氏は年明けに米国ラスベガスで開催されたCESに参加。「今年のCESは完全にAIのイベントだった」と振り返り、そこで見えてきた3つのキーワードを紹介した。
キーワード1:AIエージェント 「道具」から「同僚」へ
2025年段階のAIエージェントについて、椎橋氏は「AIが思考と手足を獲得した」と表現した。リーズニングモデル(推論モデル)の登場で深く考えてレポートを作成できるようになり、MCP等の技術でブラウザ操作やコード記述などのツールも使えるようになっている。
しかし椎橋氏は「現状はまだ道具としての位置づけにとどまっている。これはグローバルでも同様」と指摘。今後はAIがタスクではなく「役割」を持ち、能動的に動く「同僚」へと進化していくと予測した。
同僚化に向けた課題として、椎橋氏は3点を挙げた。1つ目は「能動性」で、ユーザーからの指示を待つのではなく自ら動けること。2つ目は「文脈記憶」で、長期プロジェクトの流れを理解できること。3つ目は「個性」で、複数のAIがそれぞれ異なる役割を持って動けることだ。
「複数人のチームに複数のAIが混ざった多対多の関係で業務を回す形をいち早く作れた企業が、世界の最先端に立てる」と椎橋氏は述べた。

キーワード2:フィジカルAI 日本の勝機と脅威
フィジカルAIは、ロボットや自動運転車を制御するためのAIだ。動画生成AIと技術的に近く、「世界モデル」と呼ばれる物理空間の予測能力が基礎にある。NVIDIAが「エージェントAIの次はフィジカルAI」と打ち出し、注目が高まっている。
フィジカルAIの開発は米中が圧倒的に先行しており、日本はほとんど取り組めていないという状況に椎橋氏は警鐘を鳴らした。
一方で可能性も示された。「今のヒューマノイドが取り組んでいるのは、日常生活レベルの精度。しかし工場では0.3mmの精度が求められるなど、高精細な制御が必要。ここは日本の産業ロボット技術が生きる可能性がある」と椎橋氏は述べた。
ただし「戦略的に取り組まなければ、チャンスよりも脅威の方が大きくなる」とも付け加えた。

キーワード3:ソブリンAI 不可欠性を作れ
ソブリンAIは、経済安全保障の観点から国産のAI基盤を作ろうという動きだ。ChatGPT等の主要モデルがすべてアメリカ製である中、依存を減らすべきという議論がある。
椎橋氏は経済安全保障の2つの概念を紹介した。
「戦略的自律性」:他国への依存を下げること
「戦略的不可欠性」:逆に他国の自国への依存度を上げること
「日本の主要LLMをすべて国産にするのは現実的に難しい。中途半端に自律性を目指すより、不可欠性の構築に注力すべき」と椎橋氏は主張した。不可欠性があれば、依存があっても交渉の武器になるからである。
具体例として、先端半導体製造を目指すラピダスの取り組みを挙げ、「小ロットの試作を素早く多品種で行えるプレイヤーはまだ世界にいない。戦略的不可欠性を作る観点では的を射ている」と評価している。
政府の支援プログラムについても「戦略的不可欠性につながるテーマを特定し、そこに集中投資すべき」と提言した。

まとめ
今回の勉強会では、AIエージェントの「同僚化」、フィジカルAIにおける高精細制御の可能性、そしてソブリンAIにおける戦略的不可欠性の重要性が示された。
いずれも単なる技術論ではなく、戦略的視点を持った取り組みの必要性が強調された内容となった。



