「ケーブルなしで空中充電できる街づくり」へ 三菱地所が丸の内で22年春より「無線給電」実証実験 米スタートアップに出資

三菱地所株式会社は、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)における2020年以降のまちづくりを「丸の内NEXTステージ」と位置付け、イノベーションが生まれ続けるエコシステムの形成に、まち全体で取り組んでおり、その一環として、赤外線を用いた無線給電(ワイヤレス給電)プラットフォームを開発する米国カリフォルニア州オークランドのスタートアップPHION Technologies Corp.(ファイオンテクノロジーズ/PHION社)に出資したことを、2022年1月13日に発表した。

両社は2022年春を目途に、大手町にある三菱地所本社や、SAPジャパン株式会社と三菱地所株式会社が2019年2月に大手町ビルにオープンしたInspired.Labのラウンジで、同社の無線給電システムを設置し、携帯電話等のモバイルデバイスに給電を行う実証実験を実施する予定だ。なお、PHION社の今回の資金調達ラウンドは2021年12月に完了しており、同社の投資額(2021年12月に出資)は非公開となっている。



無線給電とは

無線給電とは、電源ケーブルやコード、電極接続を行わずに電力を伝送・供給する技術だ。電気機器や電気自動車などを有線ケーブルで充電する必要がなくなる、現在の常識をくつがえす新技術として世界で注目が集まっている。同技術の導入により、オフィスや住宅、ホテル等の室内レイアウトの自由度が増し、今後需要が増すカメラやIoT機器の設置に際しても新たな配線工事が不要となるなど、工事費削減効果も期待できる。また、各種ケーブルが不要となることで、その空間にいるだけで対応の電気機器を充電できるなど、利用者にとっても快適性・利便性が向上する。


同社が想定する無線給電技術を活用した将来の展開

無線給電は、米国等においては電気バスへの充電テストが開始されるなど近年商用化が加速している。日本でも、総務省が2021年度中にも電波法を省令改正し、3つの周波数帯(920メガヘルツ、2.4ギガヘルツ、5.7 ギガヘルツ)を無線給電に割り当て予定であるなど、今後、国内でも普及・発展が見込まれており、同社は無線給電の技術をいち早く実証し、同技術に関する情報を収集することにより、先端的で快適なオフィスや住宅、ホテル等の設計・商品企画に反映している。

無線給電を用いた空間(イメージ)

また、同社は、将来的には入退室情報や位置情報等との連携、広告・情報配信サービスとの連動など、様々なビジネスモデルの構築を図り、新しいオフィスサービスや来街者サービス、ビルの効率的な管理など、まちづくりの未来を探るとともにスマートシティの実現に貢献していくとのことだ。

PHION社 創設者・CEO ジョナサン・ナイデル氏

三菱地所を株主および企業パートナーに迎え、大変うれしく思っております。三菱地所は 2022 年に当社が展開するパイロットプログラムの一環として、積極的に技術実証に取り組もうとしています。日本は非常に重要な市場です。なにより、知名度が高く業界リーダーである三菱地所をパートナー・顧客に迎えられることを、大変喜んでおります。

※ジョナサン・ナイデル氏はスペースX社で約4年間シニアエンジニアを勤めた後、PHION社を共同設立し、PHION社を率いてきた。


PHION社の遠隔無線給電技術について

遠隔無線給電には電波によって給電する方式と、赤外線によって給電する方式の2つがあり、PHION 社の特許出願中の無線給電技術は、赤外線を用いることにより遠距離(10m超)・高電力(20Wまで)の遠隔無線給電を安全に行うことを目指している。電波方式と比較し、大容量かつ長い距離の給電が可能なことに加えて、位置情報、端末タイプ、充電レベル等のデータをセキュアに送受信することもできる。また、電波電波式は電波法の周波数帯の割り当てを必要とするが、赤外線方式は電波と干渉しないためそれを必要としない。パイロットプログラムで使用される第1世代のモデルは、モバイル端末に5Wの電力(通常の充電アダプタと同等)を供給する予定だ。将来的には10mを超える距離において20WでPCを充電することができ、送信機を天井に設置することにより、45~200 ㎡をカバーすることを想定している。

PHION社 無線給電のイメージ

▼三菱地所本社およびInspired.Lab における実証実験

実施時期 2022年春より約5カ月間
実証実験内容 Inspired.Lab内のラウンジや三菱地所本社の執務スペースにPHION社の送信機および受信機を設置、携帯電話等のモバイルデバイスに給電、有用な利用シーン・利活用方法などを検証
備考 ※実証実験の実施にあたっては、日本における許認可の取得等が前提となる。
※Inspired.Lab では、PHION社と三菱地所による実証実験以外の無線給電の実証実験も計画されている。

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