【世界初】大阪大学とJ-オイルミルズが咀嚼ロボットを開発　ヒトの咀嚼の仕組みを再現し食品の評価に活用

2024年4月3日 By ロボスタ編集部

J-オイルミルズは、大阪大学大学院工学研究科の東森充教授と共同で、ヒトの咀嚼過程を再現できる咀嚼ロボットを開発し、このたびその研究成果が「日本機械学会学術誌」に掲載された。

今回の研究成果の活用により、食品評価の質向上に寄与できると述べている。

食品メーカーとして食感を正しく評価することは必要不可欠

J-オイルミルズは油脂製品のほか、テクスチャー素材（でんぷんなど）の製造、販売も行っている。でんぷんは食感を多種多様にコントロールすることで、ジューシーさの実現や食感の改良など食品の機能性向上に役立っている。

食品のおいしさには味や香りだけでなく、歯ごたえ、弾力、舌触りなどの食感も重要な要素であり、食品メーカーとして食感を正しく評価することは必要不可欠。その食感の評価にあたって、重要な構成要素となるのが咀嚼だ。

咀嚼とは、食物を口に取り入れてから食べ物を飲み込みやすいように歯で食物を咬み、口の中で唾液と混ぜながら食塊を作る一連の動作をいう。咀嚼には、食べ物を歯で噛み（咬断）、すりつぶし（臼磨）、舌で唾液と混ぜ合わせ（撹拌）、整えて「まとめる」という工程がある。

食品開発の現場では、食感の評価として、ヒトが風味や物性などを測定する官能評価と、食品の硬さや弾力を測定する機械測定を行っているが、従来の装置は、ほとんどが咀嚼工程のうち「咬断」のみを対象としており、一部の装置でも「撹拌」の機能までで「まとめる」機能が再現されないために食塊を作ることができず、食感の一部分しか評価できず、具体的には、噛んで潰した食べ物の硬さや弾力性など力学データの評価にとどまっていた。

J-オイルミルズと大阪大学大学院工学研究科の東森充教授は、食品の評価に重要な咀嚼の全工程を評価したいと考え、2018年から共同研究を開始。今回、ヒトの咀嚼機能を整理し、必要な機構を検討したことにより、咀嚼の最終工程である「まとめる」機能を持った咀嚼ロボットを開発した。

咀嚼ロボットは従来の装置と同様に力学データを取得できるだけでなく、咀嚼過程の視覚データも取得が可能。従来の装置では不足していた、時間軸での変化や咀嚼過程の見える化が実現できることにより、今までよりもヒトの感じる複雑な食感の評価が可能となる。

今後は、咀嚼ロボットを用いてヒトの咀嚼の仕組みを再現することで、J-オイルミルズ製品の販売拡大やテクスチャー素材の新規開発につなげ、J-オイルミルズの目指すべき未来「おいしさ×健康×低負荷」の実現を目指す。また、咀嚼の評価を必要とする異業種とのコラボレーションなども検討しいくとしている。