オリエンタル白石は、建設工事現場における生産性向上とウェルビーイング実現に向けた取り組みの一環として、吊り足場上で巡回業務を行う四足歩行ロボットの稼働試験を2025年10月に実施したと発表した。
本試験では、障害物や細かな段差が存在する複雑な環境下で、ロボットが自律歩行できることを確認。同社は今後、ロボットによる自動巡回や体調不良者の検知機能などの実現を目指すとしている。
建設業界では、労働力不足や作業員の高齢化が深刻な課題となっており、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性や安全性の向上が急務とされている。特に、橋梁や高速道路などの大規模インフラ工事で多用される吊り足場は、高所であることに加え、現場によっては巡回範囲が数キロメートルに及ぶこともある。また、天井が低く、床材を支える吊りチェーンやワイヤーが林立するため見通しが悪く、設置された定点カメラだけでは作業員の安全を完全に把握することは困難。そのため、人間の目による定期的な巡視が不可欠だが、巡視者自身の負担も大きいという課題に直面している。
困難な吊り足場環境での自律歩行を実証
今回の試験は、実際に稼働している工事現場の吊り足場上で実施された。使用されたロボットはUnitree Robotics社の四足歩行ロボット「Go2」(寸法:幅31cm×高さ40cm×長さ70cm、連続稼働時間:約2時間)で、オリエンタル白石が独自のプログラミングを施したシステムが用いられた。
吊り足場は、細かい床材の集合体であるため軽微な段差が多く存在するほか、レーザー光で物体を検知する技術「LiDAR」では認識しにくい細い吊りチェーンが多数存在するなど、ロボットの自律歩行には厳しい環境であったが、結果は成功。
吊りチェーンを障害物として正確に認識し、接触することなく回避しながら自律歩行することができた。また、多数の細かな段差がある床面でも、バランスを崩すことなく安定した歩行が可能であることを確認した。


自動操縦試験の動画
動画内では試験中のためLANケーブルを繋いでいるが、無線LANでの稼働もできる。
建設DXを推進する多角的な技術開発
オリエンタル白石は、今回のロボット技術以外にも、建設業界のDX化に積極的に取り組んでいる。同社が特化技術とする「ニューマチックケーソン工法※」では、現場から離れた場所からショベルを操縦する「超遠隔操縦」の実証試験を進め、作業員の労働環境改善を目指している。
※地上で鉄筋コンクリート製の函(躯体)を構築し、躯体下部にある作業室に地下水圧に見合った圧縮空気を送り込むことで地下水の侵入をふせぎながら、躯体を沈下させることで地下に穴を掘り進める工法。
また、コンクリートの品質を左右する締固め作業をAR(拡張現実)技術で可視化する「AR締固め管理システム」を開発し、リアルタイムに数値管理できる仕組みを構築している。


