米AI企業のAnthropicは、対話型AI「Claude」をはじめとする自社モデルが生成するテキストには不可視のウォーターマークを、画像等のファイルにはC2PAによる来歴情報・署名付きメタデータを組み込む方針を明らかにした。
8月11日付で更新したサポートページで確認されたもので、欧州連合(EU)の新たな規制に対応する狙いがある。
EUのAI法・透明性コードに対応
背景にあるのは、8月2日から適用が始まったEU AI法(AI Act)第50条の透明性義務だ。AI生成・操作されたコンテンツについて、技術的に可能な範囲で機械可読な形式によって識別できるようにすることなどを求めている。
Anthropicはこれを受け、8月2日以降にリリースする全モデルについて、生成したテキストとファイルの双方に自動で透かしを付与する技術を組み込むとした。ファイルの透かしには、コンテンツの来歴を証明するオープン標準規格「C2PA」を採用する。旧モデルについても順次対応を拡大していく方針という。なお、EU側は2026年8月2日より前に市場投入された生成AIシステムについては、マーキング義務に2026年12月までの猶予期間を設けている。
コピー&ペーストしても透かしは維持
サポートページによると、透かしはテキスト自体に組み込まれるため、コピー&ペーストで別の場所に貼り付けても引き継がれ、一定の編集を加えても残存する可能性があるという。また透かしはモデルの段階で付与されるため、Claudeを利用するAPIやチャット画面、コーディング支援ツール「Claude Code」、共同作業ツール「Claude Cowork」、タグ機能「Claude Tag」など、提供形態を問わず適用される。どの程度の編集を加えると透かしが失われるかは明らかにされておらず、TechCrunchはAnthropicに詳細の確認を求めている。
テキストの「透かし」とは?
画像や動画への電子透かしはイメージしやすいが、テキストへの「透かし」はどのように実現するのだろうか。生成AIのテキストに透かしを入れる技術では一般に、文章生成時の単語やトークンの選択に、人間が読んでも気付かない統計的なパターンを持たせ、専用の検出システムでAI生成かどうかを判定する手法などが研究されている。画像に目印を重ねるようなものではなく、文章そのものに機械が検出できる特徴を持たせる考え方だ。
AnthropicはClaudeのテキストにモデルレベルで透かしを組み込み、コピー&ペーストや一定の編集を経ても検出できる仕組みとしている。ただし、具体的にどのようなアルゴリズムで透かしを埋め込むのか、また、どの程度の文章編集まで検出可能なのかといった技術的な詳細は明らかにしていない。
生成AI業界全体で対策が加速
生成AIをめぐっては、コンテンツの真正性を疑問視する声や、生成物であることを隠した悪用への批判が強まっており、各社が透かしなどの対策を急いでいる。音楽生成AIのSunoは、複数の著作権侵害訴訟を受けて自社プラットフォームで制作した楽曲に印を付けると発表済みだ。ニュースレターサービスのSubstackも、AI生成コンテンツを検知するPangramと提携している。EUの透明性コードには、Anthropicのほか、Black Forest Labs、Google、Meta、Microsoft、OpenAI、Synthesiaなども対応を表明しており、生成AIの出力にトレーサビリティーを持たせる取り組みが、業界全体に広がりつつある。
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