【ロボット×クラウドAI】Microsoft AzureとPepper最新導入事例「MicrosoftコグニティブサービスはAI機械学習をカスタマイズ可能」

「企業が”デジタルトランスフォーメーション”を推進していくためには、既に”AI技術”は欠かせない要素になっているが、「AIは難しそう」と感じている企業や開発者が多い。MicrosoftはAI技術を身近なものにしていくため”AIの民主化”を掲げている」

11月22日、都内で開催された「SoftBank Robot World 2017」において、日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンターのエバンジェリストである鈴木氏が登壇した際に、冒頭で語った言葉だ。「AIの民主化」は、米MicrosoftのCEO サティア・ナデラ氏も講演で使っている言葉で、AIのスペシャリストを持たない一般の企業でも、AI技術を手軽に使える環境を提供していくことを意味している。
鈴木氏の講演は「接客から分析まで! MicrosoftとPepper最新事例 Cognitive/BI/Serverの全てをフル活用!」というテーマで行われた。

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター エバンジェリスト、上智大学非常勤講師 鈴木敦史氏

「デジタルトランスフォーメーション」(デジタル変革)は企業や業務のデジタル化を意味する。もともとは「ITの浸透によって、人々の生活や社会がさまざまな面で良い方向に変革していく」という概念に基づいているが、デジタル化の推進は組織や企業だけに留まらず、パートナー企業や異業種間でも広げていくことが重要になってくる。


鈴木氏は、AI技術は既に身近に利用されるものになってきていて、Windows10では本人の顔を登録しておけば、パソコンの前に座るだけで認証が完了する、それもAIの解析技術によって実現していることを紹介した。

続いて鈴木氏は「Face API」と「Emotion API」を紹介した。AIはデータからさまざまな分析や解析を行うことに優れているが、「Face API」と「Emotion API」を使うと写真画像や映像から顔を認識して、何人が写っているか、それぞれの性別、年齢を予想し、感情(喜び、驚き、中立、悲しみ、恐怖、怒り、軽蔑、嫌悪感)を数値で測定することができる。

「Face API」と「Emotion API」を使うと、AI技術を活用して写真の中の顔を認識して感情を解析できる

同イベントの展示ブースではMicrosoftの「Power BI」と組み合わせたデモを展示。店舗では、来店客数や客層の把握、プロモーションの効果測定、接客態度の数値化などに活用できる。上図は喜び、悲しみ、怒りを表情からほぼリアルタイムで分析し、数値化しているところ(株式会社アロバが開発)


PepperとバリスタiをMicrosoft Azureで連携

PepperとMicrosoft Azureを連携し、業務で活用した例が「ロボカフェ」だ。
ロボカフェは、ソフトバンクロボティクスとネスカフェが提携し、Pepperが顧客に呼びかけを行い、バリスタiと通信することで好みに合わせたコーヒーを提供するサービスだ。このシステムのクラウド・プラットフォームに「Microsoft
Azure」が使われている。さらに新しい「インタラクション分析」ではPowerBIを使いグラフィカルなレポート分析を実現した。

Microsoftの展示ブースではPepperが接客し、後ろのネスカフェ バリスタiと連携してコーヒーを提供。顧客が登録を許可すれば、顔認証してコーヒーの好みを記憶することができる

Pepperは最後に顧客に対して「お友達になってくれませんか?」と問いかける。顧客がお友達登録を許可すると、顧客の顔を覚えて(顔認識)次回から好みのコーヒーを提供することもできる。Pepperが「顔パス」で対応してくれるのは、顧客にはきっとうれしい体験になるに違いない。

Pepperとコーヒーマシンを連携し、さまざまな制御を行っているのが「Microsoft Azure」。顔認証や分析、AI関連技術による判別なども可能だ


誰でも簡単にAI技術(機械学習)が活用できる

同社はAI技術を「コグニティブサービス」(Cognitive Services)と呼ぶ。クラウドサービス「Microsoft Azure」では、手軽に誰でもAI技術が利用できるようにAPIで提供していることが最大の特長のひとつ、「AIの民主化」という言葉の真意もそこにある。画像、言語、音声、検索、知識などの分野で、29種類のAPIを提供している。

AI技術で最も重要でありながら、その反面手間と時間がかかる作業がAIに必要なことを機械学習させるトレーニングだ。機械学習のやり方によって、AIの精度にも大きく影響する。「Microsoft Cognitive Services」(以下、コグニティブサービスと表記)では同社が既にトレーニングして機械学習済みのものが標準で用意されているため、利用者はクラウド上でAPIを実行させるだけである程度のレベルの識別能力や分析能力を持ったAI機能を簡単に利用しはじめることができる。

気になるのは企業ごとの「カスタマイズ」だ。企業が持つ特有の情報やデータを使ってAIに機械学習をさせることで、企業や業務により有効な機能になる。コグニティブサービスでは、機械学習のカスタマイズを企業が独自に行うことができる。すなわち、標準で用意されているAI機能を活用すれば手軽にスタートすることができ、かつ、より高精度なAIを育成するためのカスタマイズ機能が、二段構えで用意されている。

Microsoft Azureのコグニティブサービスで提供されている各種API。基本的な機械学習済みのものが提供されるが、更に企業が自社用に「カスタマイズ」(最下段)できるようになった


LINEの会話画面で「アリ」の画像をAIが判定

鈴木氏はセッションの中で、LINEアプリの会話画面でアリの種類を判定する実演デモを行った。これはあらかじめ複数のヒアリの写真画像をMicrosoft AzureのAIに学習させておくことで、ユーザーがLINEアプリを使ってアリの画像を送信すると、コグニティブサービスが「ヒアリかヒアリ以外のアリかを判別」し、LINE上で回答を返すシステムだ。

ヒアリ等の画像を複数送信して学習させることで、AI機能がヒアリの特徴を学習し、ヒアリを判別することができるようになる

LINEのトーク機能でアリの画像を送信すると、すぐにヒアリか否か、信頼度の数値とともに回答が表示された

コグニティブサービスを使うと、高精度な判断や解析結果が得られることとともに、端末はPepperやLINEのトーク機能など、ユーザーのエッジとなる端末はフレキシブルに対応できることが理解できるものだった。

なお、ソフトバンクロボティクスは、Pepperを業務に簡単に導入できる「お仕事かんたん生成2.0」(新版)を11月20日に発表し、そのプラットフォームにはMicrosoft Azureが採用されていて、動作やレスポンスの高速化に貢献している。


ネッツトヨタ栃木やダンロップスポーツクラブでもPepperとAzureが連携

編集部では、セッションを終えたばかりの鈴木氏にインタビューを行い、MicrosoftがAzureなどのクラウド技術に注力するねらいとその特長、導入事例などを聞いた。

編集部

今回の「SoftBank Robot World 2017」の出展ブースや講演のポイントを教えてください

鈴木(敬称略)

Microsoftは今まで、パソコンのOSやOfficeなどの製品を中心に、人とコンピュータのインタフェースを提供してきました。これからは「働き方」を支援することを中心に、パソコンに加えてクラウドプラットフォームやAI技術など、ビジネスソリューションに注力していくことを講演で紹介させて頂きました。また、展示ブースでも同様に、AzureがPepperやカメラなどと連携すると、どのようなソリューションが実現できるのかをデモ展示しました。

編集部

ロボットはクラウドと連携することによって、どのように拡張できるのでしょうか

鈴木

ロボットが持つ頭脳と、クラウドプラットフォームの頭脳を連携することによって可能性は格段に拡がります。例えば、人間で言えば反射神経のようにすぐに反応を返さなければならないものはロボット単体で行わなければならないし、記憶や認識、じっくり分析して答えを出さなければならないようなことは、クラウド側の頭脳を活用することが望ましく、それにMicrosoft Azureの高精度のAI機能が役立てることはたくさんあるのではないかと考えています。

編集部

なるほど。展示ブースではPepperとネスカフェの連携が展示されていますが、ほかにもPepperとMicrosoft Azureが連携した導入事例を紹介して頂けますか

鈴木

ネッツトヨタ栃木様の店舗でPepperとWindowsタブレットが連携したシステムが活用されています。Pepperの会話とタブレットの画面が連動して、お客様に対して解りやすいご提案を行っています。システム上、Pepperとタブレットなどのデバイスを連携させるのにMicrosoft AzureのIoTの機能を使い、Azureがハブになって制御しています。
ダンロップスポーツクラブ様の店舗でもPepperとAzureの連携が活用されています。会員の方が設定した目標に対して、Pepperが効果的なワークアウトのメニューを提案していくのですが、すべて会話だけでご提案をします。そのためには会員の方が話した自然言語を正確に理解して最適な情報を検索してくることが必要で、AzureのLUIS(Language Understanding Intelligent Service)というAPIを使って実現しています。顔認証機能を使って、Pepperが「一昨日はこのワークアウトをしたので、今回はこのメニューでやりましょう」という、個々の会員の方に合わせた提案をしていきます。

編集部

Pepperの「お仕事かんたん生成2.0」のプラットフォームにMicrosoft Azureが使用されていますね

鈴木

Pepperの「お仕事かんたん生成2.0」では、業種別のテンプレートが100種類も用意されているので、手軽にPepperを使った業務のスタートができると思います。高速性を重視してシステム自体が改良され、更にMicrosoft Azureで運用されるようになったことでも、レスポンスは大きく向上したと感じています。その上で、「こんなことがやりたいんだけど、作るのが難しくて断念している」「こういった分析をしてみたいけどAIって難しそう」などのお悩みに対しては、ぜひMicrosoft Azureのコグニティブサービスを活用して、手軽に高精度な認識や分析機能をご提案していきたいと思っています。

編集部

企業から見ると、AzureのAI機能にはどんな特長があるのでしょうか?

鈴木

従来は、AIのトレーニングには膨大な期間と労力がかかり、期待した成果やROIが出せないという悩みがありました。私達のアプローチとしては、まずは「すぐに返せる回答を提供する汎用的なサービス」としてAI技術を提供していきます。加えて、カスタマイズで企業ごとに学習させるトレーニングや、間違えた部分を補正していくことはすべてブラウザで行っていくことができます。
また、最近はチャットボットの導入が盛んですが、チャットボットの開発で最も重要なのは、有効なQ&Aを企業が作成できるかどうかに関わってきます。私達はQ&Aをコーディングなしでボット化できる「QnA Maker」(Cognitive Services QnA Maker)を用意し、質問&回答のリスト、またはWebサイトのFAQからボットを自動生成できるサービスも用意しています。
コグニティブサービスはすべて従量課金です。開発に初期コストがかからないように配慮していますので、ぜひ気軽に活用してみてください。

専門的な技術が要求される機械学習だが、クラウドサービスを利用することによって、企業の規模にかかわらずAI技術が簡単に、かつ比較的廉価に導入できるようになった。また、AzureがAIのカスタマイズに対応することで、企業のビッグデータを使って更に高度で賢いAIを育成していくこともできる。育成したAIは時にはPepperで、時にはLINEやチャットボットで、そして時には複数のデバイスを連携して運用することで、さまざまな業務の課題解決のソリューションになるだろうと実感した。

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