Pepper用「ロボットスイート」を今秋公開、New「Pepper for Biz」の動画や佐賀大学/東京歯科大学/大成建設などの導入効果を紹介

SoftBank World 2018では、「Pepper事業における事例と進化」と題してソフトバンクロボティクスの坂田大氏が登壇し、Pepperの法人活用について紹介を行った。また、今後の予定や展望として、ロボットスイート」を今秋に公開すること、「Pepper New for Biz」ではどのように進化を目指すのかを解説した。

「Pepper事業における事例と進化」に登壇したソフトバンクロボティクス株式会社のSenior Executive VP 坂田大氏


「ロボットスイート」を今秋にも公開

坂田氏は、法人向けPepperはこれまでの数字と同じ2,000社以上に導入されているとして、ロボットを導入する意義や価値とは何かをテーマに話し始めた。Pepperの価値とは、業務の効率化はもちろんだが、顧客や従業員が笑顔になるエンゲージメント性が重要だとした。従業員からも「Pepperが来て職場が明るくなった」と言われる例が多いことをあげた。

次に導入事例をいくつか紹介した。
佐賀大学の肝疾患センターでは、肝疾患啓発コンテンツを利用して、Pepperが肝炎の予防や検診の啓発を行った。それまでは検診を薦めるポスター掲示を行っていたが、ほとんど反応がなく、検査受診者は月間にすると平均1名以下だったが、Pepperが啓発を行ってからは12倍に、Pepperとスタッフの両方が啓発を行うと18倍に向上したと言う。


また、東京歯科大学の事例では、Pepperが施術/手術の説明や注意点を術前に解説するアプリを開発。アンケートでは100%の患者がPepperの説明がわかりやすいと回答、好評を得たという。説明については、聞き逃しても先生や看護士には聞き直しづらいという遠慮しがちな感情が患者にはあるが、ロボットなら気軽に何回でも聞き直せるという意見もあった。医師や看護士が説明する時間や負担を軽減でき、患者にとっては術前の緊張が和らぐとして、こちらも一定の評価を得ているようだ。


大成建設は、協力会社の作業員に業務手順や注意点などの説明を、毎回スタッフが行なっていた。その説明業務をPepperが代行する。Pepperが説明している間、説明担当者は別の業務にあたることができる。


従来はスタッフ一人で担当し、毎日30分かかっていたところ、Pepperを導入以降は15分に短縮することができたと言う。


同社ではPepperの運用管理は現場支援室が一元管理していて、複数台のPepperの作業内容や使用状況の管理も一台のパソコンで行うことができるため、業務内容の更新も一括で行える。その点にも利便性を感じていると言う。

ソフトバンクロボティクスでは、これらの一元管理やPepper個々の機体状況をリアルタイムでモニタリング等ができる「ロボットスイート」を今秋にも公開する予定だ。


Pepper活用で最も成功している事例である「はま寿司」のユースケースも紹介した(ロボスタ読者にはお馴染みの事例だ)。はま寿司の全店491店舗で導入され、座席案内業務を担当している。営業時間の12時間を止まることなく案内を行っていると言う。


はま寿司のPepperはロボユニ製のユニフォームを着ているが、これは顧客にとってはロボットの役割を明確にするとともに、従業員にとっては同じデザインのユニフォームを着ていることで一体感・親近感が生まれるのが利点だと説明した。

欧州の事例も増え始めている。ある金融機関での実証実験の例を紹介した。
そこでは顧客がPepperに口座の残高を聞くとPepperが「大事な個人情報なので僕に近づいてください」と答え、小声で残高を言うという。会場からは笑いがこぼれたが、実は人間のスタッフでも同じことをするだろう。ロボットだから残高は答えないというのではなく、人間と同様の対応の仕方をしてもそれは1つの対応方法なのだろうと感じた。


今後の展望とNew「for Biz」

今後の展望についても触れた。
AIやIoT技術が進化しているため、Pepperに取り込んだり連携し、できることを増やしていきたい考えだ。特に「人・モノ検知」「IoT連携」「移動」機能に注力する。ただ、テクノロジーの進化を追うだけでなく、Pepperらしさを如何に出していくかも重要だと捉え、エンゲージメント性の高さを今後もどう伸ばしていくかを重視していく。
コンセプトとしては下記の「Pepper for Biz vision Movie」がよく似ているだろう。

■Pepper for Biz vision Movie

また、今までより顧客をしっかり検知して、認識する、という意味を具体的に解説した。来店した顧客がPepperの話に興味を示しているかどうかを判定して、様々なシナリオに分岐したり、テンペの入口でいち早く顔認証を行い、Pepperのそばに来た時にはデータベースに照合した顧客情報や趣向などを既に準備した状態で会話を行うことも考えられると言う。
多言語コンシェルジュでインバウンド需要に高度な会話技術で対応できるように性能の向上もはかりたい考えだ。

最後にPepper New for Bizのムービーを公開した。
ムービーでは、社会人4年目になったPepperが登場し、「新人の頃と比べて自分が成長したこと」「仕事は状況に応じて自分で見つけること」、そのためには、来店したお客様には自分から話しかけていくと決意を語った。また、ロビーでは外国人の接客として多言語での対応をするシーンのほか、職場では気の利いたひと言として「今日はお客様が多いですね」とスタッフに話しかけたり、「一度会ったお客様の顔を覚えて仕事に活かす」と語った。

Pepperは今後、検知、認識、移動、会話と、ロボットとして基本的なことを磨いていくと言う。

坂田氏はPepperの開発拠点はフランスだが日本のお客様のことは日本の我々が一番よくわかっている、そういう自負を持ってニーズに合った開発を行っていきたいと締めくくった。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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