移動式子供型のアンドロイド「ibuki(イブキ)」、石黒教授らが発表 アンドロイドの対話の進化も
マツコロイドやアンドロイドアナウンサーのERICAなどを生み出した石黒浩教授らが進めるプロジェクトが、新たなアンドロイドを発表した。
アンドロイドの名前は「ibuki」。身長120cmの子供型のアンドロイドで、車輪付きの移動可能なモデルだ。まずは動画をご覧いただきたい。
人と共に行動し、対話を行うことで、より親密な関係を築くアンドロイドの実現を目指して開発された「ibuki」。
人間の歩行時の身体の動き、特に重心の動きの特徴に着目し、車輪移動でありながら人間らしく動く機構を採用している。人間の重心は歩行時に前額面上で八の字を描くことで知られており、この軌跡を偏心した車輪と上下の直動機構により実現している。動作を調整することで、並んで歩く人の動きに合わせたり、「楽しそうに歩く」のような身体全体を使った感情表現も可能だ。
あえて120cmの子供型の小さなサイズにしたのは、転倒時の危険性を下げる目的に加えて、心理的な威圧感を下げる目的もある。子供サイズながら、これまで発表してきた成人アンドロイドと同程度の表情生成機能を持っている。
これまでのアンドロイドは空気圧シリンダの駆動装置を採用してきたが、電流センサを用いたトルク制御を行う基板を開発し、関節を電動駆動とした。
頭部に表情を生成するための15の自由度、首・腰に3の自由度、腕に6×2、手に5×2、下半身に4、合計で47の自由度をもつ。手の各指はワイヤをモーターで巻き取ることで関節が駆動し、それぞれの指を単体で動かすことができるため、ピースサインや物を持つことも可能だ。
今後はERICAやCommUの研究を通じて培った対話技術をibukiに適用すること、対話だけでなく移動機構や腕・手を用いた人とのインタラクション機能を実装することを目指す。
本アンドロイドは、JST戦略的創造研究推進事業において、ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトの石黒浩研究統括、大阪大学基礎工学研究科助教の仲田佳弘氏らが株式会社エーラボと共同開発を行なったもの。
石黒教授らが目指しているのは、「トータルチューリングテストをパスできるアンドロイドを実現する」ということ。見かけだけが問題ではなく、パートナーになれるかどうかを重視している。
本日行われた記者向けの説明会では、この「ibuki」の他、マルチモーダル対話制御システムとマルチロボット対話制御システムを発表。人間らしい存在感や対話感を対話相手に与えるロボットを実現したと説明し、デモなどを行なった。後日別記事にてお届けする。