アイロボット、部屋の間取りを理解する「ルンバi7」を発表 「掃除の常識を変える」新ルンバ


アイロボットジャパン合同会社は、ロボット掃除機「ルンバi7」を2019年2月22日から、「ルンバi7+」を3月8日から全国の認定販売店と公式ストアで販売開始すると発表し、2月19日、記者会見を開いた。アイロボット社創業者でCEOのコリン・アングル氏によれば「最も重要なルンバ」だという。



「クリーンベース」でゴミ捨て回数減

「ルンバi7」

「ルンバi7」は「Imprintスマートマッピング」機能によって部屋の状況を学習して記憶、的確に部屋から部屋へと移動する。最大10の異なる間取りを記憶し、各部屋に「キッチン」や「リビング」といった名前をつけて清掃スケジュールを管理できる。一つの部屋をアプリ上で区切って、特定エリアのみを掃除させることもできる。


クリーンベースのついた「ルンバi7+」

「ルンバi7+」には同社が「クリーンベース」と呼ぶ、自動ゴミ収集機が付帯する。「クリーンベース」は充電ステーションを兼ねており、掃除終了後に本体のダスト容器のゴミを吸い取る。ダスト容器30杯分のゴミを収集できる。


ダストボックス30杯分を収集できる

クリーンベースの裏側。吸引するダクトが見える

収集されたゴミは紙パックに入れられ、そのまま捨てられる。紙パックの価格は3つ1組で1,980円。


ゴミは専用紙パックに収集される

「ルンバi7」の価格は99,880円(税別)。「クリーンベース」が付帯する「ルンバi7+」は129,880円。予約開始は2月19日から。

本体のダスト容器は、「ルンバe5」に採用された、丸ごと水洗いできるタイプを採用している。


水洗いできるダストボックス

そのほか、ゴミを浮かせて吸引するルンバ独自の「AeroForce3段階クリーニングシステム」や、センサーで汚れを検知する「ダートディテクトテクノロジー」などは従来の980などと同じ。Wi-Fiに対応しており、iRobot HOMEアプリを使うことで、スマホで外出先からルンバの清掃を始めさせたり、清掃状況の確認が可能。GoogleアシスタントやAmazon Alexaを使うことで話しかけることで操作することもできる。


AeroForce3段階クリーニングシステムなどは従来どおり


人がやるよりも安全・安心・心地よく

アイロボットジャパン合同会社 代表執行役員社長 挽野元氏

発表会見ではじめに、アイロボットジャパン合同会社 代表執行役員社長 挽野元氏は、アイロボットが年間売上10億ドル達成、売上金額前年比24%成長、そしてロボットの累計販売台数が2,500万台を超えたことと、日本国内でもルンバとブラーバの累計出荷台数が300万台を超えたことなど、順調な業績を紹介した。


アイロボットグローバルの実績

日本国内の実績も堅調

ロボット掃除機には、1)価格の高さ、2)自分で掃除しないときれいにならないという気持ち、3)従来の掃除機で十分だと考えの、「3つの導入障壁」がある。


ロボット掃除機購入の三大障壁

そのために、コストバランスに優れた商品として2018年10月に49,880円で投入したのが「ルンバe5」だ。顧客からも好評だという。発売後4ヶ月経った今も大人気で、モデルベースシェアで30%を取っている。e5が牽引することで他の機種も売れているとのことで、「一家に一台の転機になった商品だ」と胸を張った。


「e5」はロボット掃除機のモデル別販売シェアでも好調

ルンバの世帯普及率は2018年10月時点では4.5%だったが、いまは4.9%と急激に伸びている。アイロボットでは、2023年には世帯普及率10%超えを目指している。そのためにユーザーが掃除のことを考えなくてすむ時代を作りたいと考えているという。


現在のルンバ世帯普及率は4.9%

これからの家電は、人間がやるよりも、安全・安心・心地よいものを実現することが求められる。洗濯、食器洗い、そして床掃除も同じだ。アイロボットは「ロボット技術で人々の生活を豊かにする」ことをミッションとしている。そして「これはコリン・アングルがずっと夢見てきた商品だ」と述べて、アングル氏を呼び込んだ。


人がやるよりも機械がやるほうが心地よいのがこれからの家電


自分の居場所を理解し、人が掃除のことを考える必要がなくなるルンバ

iRobot Corporation 創業者、CEO コリン・アングル氏

iRobot Corporation創業者でCEOのコリン・アングル氏は「今回のルンバは最も重要なルンバだ」と述べた。ロボットにとって「居場所を知る」ことが重要だと強調し、場違いな振る舞いは、たとえそれが優れたパフォーマンスであっても、おかしいと思われるとユーモラスに語った。


パフォーマンス発揮には「居場所を知ること」が重要

自分がいる環境を理解していなければ、ロボットも機能を十分に発揮することができない。ホームロボットが機能を発揮するためには、家のなかのどこにいるかを理解する必要がある。たとえば、家のなかのどこに何があるかを理解すれば、人が部屋を出れば家電の電源を自動でオフにすることもできるし、床が汚れた時に自動で掃除機を起動するようなこともできるようになる。

今回の「クリーンベース」は30杯分のゴミを集めることができるので、週一でルンバのダスト容器を掃除していた人は、一年間、ルンバに触る必要がなくなる。アングル氏は「それがまさにスマートホームデバイスだ。掃除についての考え方を変えるものなのだ」と述べた。


今回のルンバは掃除の常識を変える最も重要なルンバだと力説した

それを支えるマッピング技術が「Imprintスマートマッピング」だ。どの家にどの部屋があるのかを、およそ8割くらいの精度で自動推定することができるという。名前が間違っていたら、ユーザーの指定によって修正する。この機能によって、たとえば「キッチンは毎日、リビングは二日に一回」といった掃除の間隔を指定することができる。


Imprintスマートマッピング機能

また間取りを学ぶので、最初は無駄な動きをしていても、徐々に効率的な動きをするようになる。一部屋を掃除したあとに、次の部屋を掃除するといった動きを自動で実現する。学習によって、掃除するほど賢くなるロボット掃除機だという。たとえば前回ぶつかって動けなくなった場所などを記録し、次はそこを避けることができるようになる。いつも同じタイミングで電源を入れていたら、掃除タイミングをロボットから提案してくる。


効率的な掃除ルートを自動で選ぶようになる

コリン・アングル氏は、「このロボットはプラットフォームだ」と語った。そして「処理能力は900シリーズの30倍になった。新しいルンバは日々賢くなる。インテリジェンスをロボットにダウンロードし、より新しい機能を取り込むこともできる。購入当初はなかった機能を追加していくこともできる。アイロボットは今後もロボットが家庭でより効率よく動けるところに投資をしていく」と述べた。


声で呼びかけてルンバに部屋を掃除させることも可能に

たとえば、「ルンバ、居間を掃除して」と音声で指示を出すだけで掃除を開始させることもできる。スマートホームにおいては周辺環境の把握がキーとなるという。周囲の環境について学習し、キッチンがどこに、冷蔵庫はどこにあるのかを学ぶことができれば、長期的には腕がついたロボットが、何かを持ってくることもできるようになる。


将来は腕付きロボットがものをはこべるように。そのためのキー技術が周辺環境の認識

他のデバイスと情報を共有することによって、家をよりスマートにすることもできるようになる。たとえばスマートスピーカーに「テレビをつけて」と言えば、どのテレビをオンにすればいいのかわかるし、部屋を出れば自動オフさせることができる。また、遠隔地に住む高齢者がいつもいる場所にいないといったことも、家が気づき、子供達に通知することもできるようになる。


普段と違った行動なども把握できるように

そして「AIは非常に強力だが、制約が多い。だが、どこにいるかがわかれば、魔法のようなことができるようになる」と述べた。


ロボットが「自分がどこにいるか」がわかれば魔法のようなこともできるようになる

ルンバが作るマップはクラウドに暗号化されて保存される。スマートホームメーカーともアライアンスを組んで活用を考えているという。変化する家の環境に対応するためマップを毎回捨てていたことから、マップを進化・適応させることに転換した理由については、部屋のなかの家具配置などを記憶し続けることができる、より精緻化できるようになったからだと返答した。


コリン・アングル氏と挽野元氏


iAdapt3.0 最適ルートで指定された部屋に移動

アイロボットジャパン マーケティング本部 プロダクトマネージャー 山内洋氏

アイロボットジャパン マーケティング本部 プロダクトマネージャーの山内洋氏は、iAdapt3.0について解説。まずはiAdaptのバージョンの違いから紹介した。「iAdapt 1.0」は障害物があっても部屋全体を掃除し、充電器に戻る機能だ。


iAdapt 1.0

900シリーズに搭載されている「iAdapt 2.0ビジュアルローカリゼーション」は、ルンバ自身がカメラを使ってマップを作り、自己位置を推定する。これらが今までのルンバのナビゲーション技術だ。


iAdapt 2.0ビジュアルローカリゼーション

より高速なプロセッサを使っているi7は、従来機種とは桁違いの9880MIPSの計算を処理し、家中の間取りを学習し、使えば使うほど最適なパターンで清掃することができる。


i7はCPUが桁違いに高速化

これがiAdapt3.0で、従来のルンバは家のなかの変化に対応するため作成したマップを毎回忘れていたが、今回の機種は使うたびにマップを精緻化して、より効率的に掃除できるようになる。最大10フロアまで記録ができるので、1Fのマップと2Fのマップを別々に持てる。その判断はルンバが自動で行う。


iAdapt3.0とImprintスマートマッピング技術

部屋を指定した掃除もできる。アプリで部屋を指定されたルンバは、最適なルートを通ってその部屋まで移動し、掃除をし始める。ホームベースに戻るときも、どちらにあるのかわかっているので、最適な経路を通ってホームベースに戻る。クリーンベースに近づくと、徐々に速度を緩めて正確にドッキングする。ドッキング後には吸引が行われる。




最安値の643シリーズは29,880円に

アイロボットジャパン マーケティング本部長 山田毅氏

アイロボットジャパン マーケティング本部長の山田毅氏は、ルンバi7は既に海外では非常に高く評価されていると改めて紹介。ラインナップでロボット掃除機を買わない三大障壁を乗り越えたいと述べた。他機種の価格も値下げされる。最安値の643シリーズは29,880円となった。


ルンバラインナップと新価格

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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