東芝デジタルソリューションズ株式会社は、Amazon Web Services, Inc.が運営するAWS Marketplaceで、量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」のAmazon Web Services版ソフトウェア「SQBM+ for AWS」を公開し、提供を開始した。
SQBM+は、株式会社東芝が開発した技術「シミュレーテッド分岐アルゴリズム(SBアルゴリズム)」を用いた組合せ最適化ソルバー「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」を核とした量子インスパイアード最適化ソリューション。従来の最速マシンによる計算と比較しても10倍の高速性を持つという。
同社は、さまざまな領域にSQBM+を適用し、複雑化する社会課題の解決に貢献していくと述べており、今後も、ユーザーのニーズに応じたオンプレミス版の提供や、導入を支援するプロフェッショナルサービスの開発を進め、SQBM+のラインアップを拡充するとのことだ。
SQBM+ for AWSについて
同社は、 2019年7月より、AWS Marketplaceで、SBMのPoC(概念検証、proof of concept)版を無償で公開し、さまざまな分野での社会課題解決に向けた実問題探索を行ってきた。
PoCの次の段階として、ユーザーの自社システムへの組み込みやビジネスユースでの実問題への適用が求められており、今回発表したSQBM+のソフトウェアモジュール「SQBM+ for AWS」により、金融・創薬・遺伝子工学・物流・AIを始めとするさまざまな領域での組合せ最適化問題の解決をめざす利用者が、自社の業務アプリケーションやシステムへSQBM+を組み込んで利用できる。また、金融取引、産業用ロボットの動作、移動経路や送電経路などの最適化、創薬のための分子設計など、社会や産業における課題の多くは、膨大な選択肢から最適なものを選び出す組合せ最適化に帰着する。組合せ最適化は、問題の規模が大きくなるにつれて組合せパターンの数が指数関数的に増大するため、既存の計算機で高速に解くことは困難であり、このため、組合せ最適化専用計算機の開発が国内外で活発に行われているが、SQBM+は、既存の計算機を使用して、複雑で大規模な問題の高精度な近似解(良解)を短時間で得ることが可能だ。
■【動画】【東芝】シミュレーテッド分岐マシン(TM)
SQBM+ for AWSの特長
同製品は、SQBM+ for AWSは、AWS環境で動作するAmazonマシンイメージ(Amazon Machine Image)で提供される。AMIは、オペレーティングシステムを含むソフトウェア構成を記録したテンプレートで、AMIから、インスタンスと呼ばれるAWSクラウドの仮想サーバーを起動する。また、速度・精度・規模を大幅に向上させる新アルゴリズムを採用したSBMを提供し、SBMの特性を生かし、最大100,000変数のイジング問題に対応するイジングソルバーを提供する。なお、同製品は、AWSのパートナーから提供されるソフトウェアやサービスを、必要な時に購入し、すぐに使用を開始することができるオンラインソフトウェアストア「AWS Marketplace」にて購入でき、従量課金と月定額のモデルを用意している。
組み込み利用ができるソフトウェアモジュール
・ AMIは、あらかじめ必要な設定がされているので、すばやく簡単にインスタンスを起動することができ、すぐにSQBM+が使えるようになる。SQBM+をインストールする必要はない。
・ インスタンスは、利用者が専有できるサービスだ。リソースを専有できるので、高速な実行が可能。専有したリソースは、利用者が自由にコントロールすることができる。(オートスケール、冗長化、起動停止)
・ ユーザー側のシステムに組み込むことができ、ネットワークなどのオーバーヘッドを抑えることが可能。
新アルゴリズムを採用したSBM
・ 短時間で良解を見つける高速アルゴリズム「弾道的シミュレーテッド分岐アルゴリズム(bSB/ballistic Simulated Bifurcation)」
・ より高精度な解を見つける高精度アルゴリズム「離散的シミュレーテッド分岐アルゴリズム(dSB/discrete Simulated Bifurcation )」
・ 上記2つのアルゴリズムを自動的に使い分ける機能を実装。
AWS Marketplaceでの提供
数回のクリックで、設定済みのソフトウェアを起動することができるAWS Marketplaceでは、柔軟な料金オプションが用意されており、SQBM+ for AWSも、従量課金と月定額のモデルを用意している。
SQBM+ for AWSの価格
SQBM+ for AWSは、研究開発用途に限定したLearn & Developmentと、Business Standardの2つのプランを用意しており、それぞれのプランについて、使用時間に応じた従量課金と月定額の2つの価格モデルが設定されている。なお、利用者側にてAWSのIaaS(Amazon EC2)を用意する必要がある。
▼ Learn & Development(研究開発用途限定)
価格モデル | 従量課金 |
---|---|
価格 | $200/時間 |
備考 | 利用開始から30日間無料 |
価格モデル | 月定額 |
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価格 | $1,000/月 |
▼ Business Standard
価格モデル | 従量課金 |
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価格 | $1,800/時間 |
価格モデル | 月定額 |
---|---|
価格 | $9,000/月 |
https://aws.amazon.com/marketplace/seller-profile?id=d204c622-7c0d-4510-8686-2bfb3213afa8
東芝デジタルソリューションズ株式会社
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