産業用AIソフトウェア大手のIFSと、モバイルロボティクスのグローバルリーダーであるBoston Dynamicsは2025年11月13日(木)、資産集約型組織における現場オペレーションの管理と最適化を革新する戦略的協業を発表した。Boston Dynamicsの自律型検査ロボットとIFSのAI技術「IFS.ai」を融合させ、現場での検知から予測的意思決定、アクションまでをシームレスに連携させるエージェント型AIを構築する。
この協業は、労働力や技能不足が課題となっている産業現場において、現場作業者を補完する技術の導入を加速させることを目的としている。
ロボットによる現場検知とAIによる自律的な意思決定
両社が共同で提供するソリューションは、2025年11月13日(木)にニューヨークで開催されたイベント「Industrial X Unleashed」で初めて披露された。このシステムでは、Boston Dynamicsの四足歩行ロボット「Spot」が産業設備や現場を自律的に巡回し、重要な運用データをリアルタイムで取得できる。
Spotは、サーマルカメラによる設備の過熱検知、音響センサーによる空気やガスの漏洩検知、アナログゲージの圧力・流量確認、表示灯の監視、こぼれ物などの危険検知、電圧異常の検出など、多岐にわたる検査業務を担う。収集されたこれらの情報は即座にIFS.aiに送信される。IFS.aiはエージェント型AIとしてデータを分析し、知的判断を下すことで、予防保全のスケジューリングや故障の予測、異常の自動検知といった適切なアクションを自動的に実行する。これにより、現場での検知から企業システムでの「実行」まで、一貫した自律運用ループが完成する。
安全性・効率性・稼働率の向上で産業現場の課題を解決
本協業は、製造、エネルギー、公益事業、鉱業など、現場業務が事業の根幹をなす産業を主な対象としている。両社は、このソリューションを通じて以下の3つの重要な運用指標で測定可能な改善を目指すとしている。
1. 安全性(Safety):危険な環境での自律型検査により、人間の作業員が危険にさらされる機会を削減
2. 効率性(Efficiency):インテリジェントな自動化により、意思決定と対応速度を向上させ、リソース配分を最適化
3. 稼働率(Uptime):予測的なインサイトと自動化されたアクションにより、設備が故障する前に対応し、資産の稼働可能性を最大化
IFSの最高製品責任者であるクリスチャン・ペダーセン氏は、「Boston Dynamicsと共に、物理世界とデジタル世界を初めてシームレスに結ぶ真の自律型システムを提供する」とコメント。また、Boston Dynamicsのプロダクトディレクターであるメリー・フレイン氏は、「この協業は産業オペレーションの未来を示している。従来は不可能だったレベルの運用効率と安全性を実現できる」と述べた。
ユーザー企業からも期待の声が上がっており、米国のエネルギー事業者EversourceのCIOであるロン・アターベック氏は、「従来のリアクティブな保全から予測的保全への本質的なシフト」と、運用の大きな変革につながる可能性を指摘している。