ホームセンターチェーンを展開する株式会社カインズは、需要予測の精度向上にとどまらず、その「後工程」における膨大な表計算作業の刷新に取り組んだ。
Vertex AIによる需要予測にAIエージェントを組み合わせることで、190万行に及ぶSQL処理と複雑な表計算ソフト作業をどのように変革したのか、その取り組みの詳細が明らかになった。
表計算ソフト依存がもたらしていた限界
これまで、需要予測の結果を実務に反映させるプロセスは、表計算ソフトとの格闘の連続だった。
システムから出力される190万行に及ぶ膨大なSQLクエリ結果を発注点メンテナンス向けの作業用シートに書き出すだけで丸2日を要していた。
出力データは1ファイルに収まりきらず、20万行ごとに6~7個のファイルに分割して管理。現場の担当者は棚割りデータや在庫データ、直近の売上実績などから各種フラグを作成し、他システムのマスタデータをVLOOKUP等の関数で紐付けるなど、複雑で膨大な作業を行わなくてはいけないなどの課題も。
専任の担当エンジニアが数式の変更や列の追加要望に対応していたが、列ずれの確認やテストに多大な工数がかかり、現場のニーズに即座に応えることが困難な状況にあった。
ビジネスソリューション部 需要予測グループ グループマネジャーの矢口未知彦氏は「こうした表計算ソフト作業でメンテナンスを行うこと自体が、もはや正解ではないと感じていた」と当時の課題を振り返る。
AIエージェント導入で発注点メンテナンスを民主化
この課題を根本から解決するために導入されたのが、AIエージェントを活用したデータ処理基盤だ。Vertex AI Agent Builderを活用し、ユーザーが自由な条件でデータの絞り込みを行える仕組みを構築した。
AIエージェントを介することで、ユーザー自身が「この条件でデータを抽出してほしい」といった指示を出し、BigQuery上のデータを直接操作・抽出することが可能になった。
また、酒類などの発注における「車建発注(在庫回転日数をコントロールしつつトラック積載量を最大化する)」の最適化計算についても、数理最適化アルゴリズムの開発によりプロセスを自動化。従来は1日かけて表計算ソフトで算出し翌日に取引先へ送付していたが、現在はカインズ自身で車建発注量の計算を行えるように改善された。
利用しているサービスはBigQuery、Vertex AI、Cloud Run Jobs、Workflows、Vertex AI Agent Builder(SDK)。

劇的な業務削減・「あるべき姿」へ集中
今回の取り組みにより、主に3つの成果が得られた。
2~3日かかっていた発注点メンテナンスのためのデータ抽出および表計算ソフト作業が大幅に効率化された。
Vertex AI Agent Builderを使ったAIエージェントの導入により、自分たちで「やりたいこと」をAIエージェントを通じて即座に実行できる内製化のスピード感が実現した。
複数のファイルに分散しローカル保存されていたデータがBigQueryという単一のソースに統合され、属人的な数式ミスや列ずれの不安が解消された。
矢口氏は「需要予測を起点に発注管理から在庫管理まで、すべて統合された基盤で実行することが可能になった」と語り、点在していた業務プロセスがGoogle Cloud上で統合されたことが最大の価値だと強調する。
今後はローカル環境で行っている数理最適化計算のリクエスト処理をAIエージェント上に順次移行していく予定だ。シーズン商品の最適化や棚割の最適化など、より複雑な変数が絡む領域への数理最適化の適用も視野に入れており、小売・流通業界における真のDX実現に向けた取り組みを行う姿勢だ。
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