Pepper for Bizの次なる進化を初公開、Pepper Worldの次のイベントとしてロボットワールド(仮称)を11月に開催か?

ソフトバンクワールドの初日に吉田健一氏による講演「初公開! Pepper for Bizの次なる進化」が行われ、今後のPepper for Bizの方向性がプレゼンテーションされた。

また、次の「Pepper World」の開催は本年11月に仮称「ロボットワールド」として開催される可能性があることを示唆した。

ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 本部長 吉田健一氏




3段階で進められるロボットの業務活用

講演で吉田氏は、ロボットの業務活用には3段階あるという解説からはじめた。
レベル1が「客寄せ」、Pepperなどのロボットがいることで注目されたり、顧客が寄ってくるなどの文字通り客寄せだ。次のレベル2が、人がやっている業務をロボットが代替する段階。来店客の受付もそのひとつで、「実際ロボットが役に立つ、人件費を減らす、コストを削減する」などの実質的なに導入効果を生み出す段階だ。そして最後のレベル3がデータ活用や学習。AI運用との連携もこれに含まれる。

ロボットの導入段階は「客寄せ」から「業務運用」の段階へシフト



ロボットは労働人口の減少を補完する

更に吉田氏は現状で「ロボット導入には3つの誤解がある」とした。
そのうちのひとつが「ロボット導入の目的はイノベーションだ」と言ったイメージ先行で導入すること。ロボットをなんのために導入するのか、という目的をしっかり定義することが重要と言う。ロボット導入の目的は今や「人の代替」だ。現状では飲食業界などからも「人が雇えない、人件費が上がり続ける」という声が上がってくる。これは日本独特のもので、このような声は米国や欧州ではあまり聞こえてこないと言う。
更に「ロボットによる代替」を詳しく分析すると、1,000万人のスキルワーカーがいると想定する。その詳細をさらに分析すると7つの産業で50〜200万人ずつと想定、将来は働く人は年々減っていくことは明白なので、ロボットによる業務の代替は不可欠だとみる。

スキルワーカーの業務をロボットが代替していく

では、ロボットで代替できるものはどんな仕事があるのか。
これを3つのステップで説明する。

「ステップ1」が接客業務。
接客業務は一部が既にPepperでも置き換えられていて、ロボットによる代替が比較的進めやすいと言う。具体的には、販売、注文、決済業務などだ。

「ステップ2」はモビリティ。
移動を意味する。人間でいえば、足を使って行う仕事だ。現状のPepperでは難しいが、最近のアップデートでSLAMに対応し、筆者は今後、積極的に移動するPepperが見られるかもしれないと期待している。

ここで吉田氏は更に、「レストラン」を例に業務を5つに分解した。
「案内」「注文」「キッチン」「配膳」「会計」だ。「案内」は既にはま寿司に導入したPepperがみごとにこなしている事例がある(筆者がよく行くはま寿司でも、Pepperは受付と呼び出し、席の配置の案内を担当していて、混雑時に特に素晴らしい活躍をしている)。
「注文」と「会計」はタブレットなどを活用してほぼ自動化している店は多く、「キッチン」も実は自動化が進み、コックのいない飲食店も多い。最終的に残っているのは「配膳」だが、吉田氏は近いうちにロボット化ができるのではないか、ロボットが移動する分野も今後はもっとやっていきたい、と続けた。

「ステップ3」は手で作業する業務。
モノをピックアップするのはロボットではまだ技術的に難しいため、これはしばらく挑戦が続きそうだ。

業種別にパッケージ構成、Pepper for Bizを即戦力に

Pepper for Bizでは、小売、ホテル、病院、教育の4業種に関しては実践と成功事例から様々なことがわかってきた。そのノウハウをパッケージにしてコンテンツを用意し、4業種の店舗や現場では、Pepperを導入したその日から業務に役立てられるソリューションとして展開していく。

小売、ホテル、病院、教育の4分野ですぐに役立つPepperを提案

小売業では、以前ロボスタでも「メルセデス・ベンツのショールームでの事例」でお伝えした「SMSアプリ」がパッケージの代表例だ。

ユーザーのスマートフォンの電話番号をPepperのタブレットに入力してもらうだけで、FacebookやLINEのお友達登録やアンケート回答のページに案内することができる。ユーザーにとっても手間がかからず、記念品やクーポンが受け取れるので反応は良い。

マックスバリュ九州の導入例では、ある期間、LINEの友達登録募集を募るキャンペーンを行ったところ、人間のスタッフでは226件の成果だったところをPepperは1624件を収集したと言う。

導入事例では10日間で約1,400名のお友達登録をPepperが獲得した

また、LINEなどのお友達登録に比べて、氏名や住所、生年月日などの入力が伴う会員登録はユーザーにとって手間がかかって不便だ。そこをPepperの「自動会員登録アプリ」が解決する。
Pepperの腕に装着した装置に免許証をセットすると、Pepperが免許証から名前や住所、生年月日等、必要な情報を自動で読み取り、仮登録を行うことができるパッケージだ。その後、本登録を作業してもらえば完了となる。

免許証に記載の情報を読み込むPepper

実践ではPepperがスムーズなアテンドを行うことで、多くの会員登録数を収集できたと言う。

VFジャパンの導入事例として、レジ横で1,000円の割引クーポンを訴求したこともあり、二週間で281件を収集した実績が紹介された。免許証などはスタッフにはなるべく見せたくないけれど、ロボットになら見せてくれるというユーザー心理があるのかもしれない。


このように、業務に絞ってではあるが、実績のあるアプリをベースに業務に役立つPepperを前面に押し出したパッケージを展開していく。

Pepperの導入企業は2,000社を超え、同社は業務活用のレベルを更に引き上げていく考えだ。
なお、冒頭でも触れたが、本年11月にPepper Worldの次のステップとしてのイベント「ロボットワールド」(仮称)の開催も検討しているとのこと。ビジネス分野でのロボット活用は、Pepperの枠を超えていくべきだとと考えているのかもしれない。
このイベントについては正式発表前のものなので、公式のアナウンスを楽しみに待ちたい。

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ロボスタ編集部

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