すべての病院やクリニックの待合室にPepperを! 医療機関向け「疾患啓発健康チェック」を無料でリリース

病院やクリニックの待合室では、Pepperの声かけによってさまざまな成果が出はじめている。湘南厚木病院の実証実験では、2週間で約1,000人以上が待合室等に設置したPepperに触れあい、検診チェックに回答したり、情報に耳を傾けた。
ソフトバンクロボティクスは、医療分野向けの疾患啓発アプリとコンテンツ「疾患啓発健康チェック」を「Pepper for Biz」向けに無料提供(追加料金なしでの提供)を開始することを発表。申込みは6月末日より開始する。

疾患啓発健康チェックの操作画面。ソフトバンクロボティクスは簡単な質問に回答するだけで疾患や健康のチェックができるアプリ「疾患啓発健康チェック」を無償で提供開始する

「疾患啓発健康チェック」は病院やクリニック等が、Pepper for Bizを導入してすぐに待合室で活用できるように開発されたもの。来院者はPepperと、会話や胸のタブレットを使って簡単なQ&Aに回答する。それによって疾患チェックや健康チェックを行い、チェックの結果がよくない場合は医師の診察や検診を促したりする。また、疾患に関する情報をPepperが解説することで、注意喚起や検診への関心を持つなど、啓蒙を促すことができる。医療コンテンツは医師らが監修したものを用いている。


このリリースに伴い、6月28日には東京汐留のソフトバンク本社において、「Pepper for Biz 2.0 医療業界向けセミナー」が開催され、多くの医療関係者らが足を運んだ。

Pepper for Biz 2.0 医療業界向けセミナーでは、実際のアプリに触れることができる


成果を上げる待合室のPepper

医療業界向けセミナーではソフトバンクロボティクスが、Pepperを導入した病院やクリニックが「業務効率化や工数の削減」と「Pepperによる疾患啓発」において成果をあげていることを説明した。また、複数のユースケースが具体的に紹介された。

待合室ではPepperがいくつかの活用方法で成果をあげはじめている。そのポイント2つだ (※クリックして拡大)

ひとつめのユースケースは、内科、婦人科、心療内科の外来検診を行う「大手町さくらクリニックin豊洲」の事例だ。同クリニックでは、待合室のPepperが乳がん検診の啓発活動を行うアプリを作成した。その結果、通常のマンモグラフィーによる乳がん検診に加えて、がんを発見できる可能性がより高い超音波による検診を受診する人が増えたと言う。しかも、Pepper導入前と比較して約3倍の増加だ。

医師に代わり、患者へ医療行為の事前説明をPepperが行う(「ペップレ」を使用)

また、医師から患者に対して医療行為の事前説明や検査結果の詳細説明が必要となるケースは多い。従来は診察中にすべてを説明するのに時間がかかってしまい、その結果、ひとりあたりにかかる診察時間が長くなってしまう傾向があった。そこで、汎用性のある情報や専門用語、事前に伝えておける情報はPepperが患者に対して解説しておく方法を導入した。医師からは個別の情報や、専門用語等の解説を省いた説明で済むようになったため、Pepper導入前は1日あたり説明時間が90分かかっていたのに対して、Pepper導入後は2/3の60分で済むようになった。それによって、同じ時間でより多くの患者を診察できるようになったと言う。

事前説明である程度の知識が得られるため、医師による検診結果の説明が2/3に短縮

大手町さくらクリニックの業務効率化の例。Pepperによる啓蒙の結果か、がん発見率が高い超音波の検診受診者が3倍に増加

同様の事例は富山大学附属病院でも見られた。報道によれば、白内障手術のインフォームド・コンセント(事前説明)をある程度はPepperが行うことにした。それまでは、1からすべての情報をスタッフが説明していたが、患者ひとりにつき約30分が必要だった。




睡眠時無呼吸症候群の検診を啓発

沖縄徳州会 湘南厚木病院(神奈川県厚木市)の事例では、待合室のPepperが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の注意喚起やSASの疑いがある人には検診の勧めを行っている。同病院では従来、SASの検診を促すポスターを壁に掲示してきたが、ほとんど受診者はいなかったと言う。
そこで、Pepperのアプリを制作し、アプリによって健康チェックやSASについての解説を行い、疾患啓蒙を行ったところ、54%の患者がSASの検査を希望すると回答した。実際には導入した1月は5名の患者が予約を行った。

Pepperによる睡眠時無呼吸症候群(SAS)の解説を聞いて、約54%が「検診を受診したくなった」と感じ、実際に初月は検診の申込みが5件あったと言う

この施策をきっかけにSASの検査を受ける人が増加し、導入の3ヶ月後の本年3月は15件に増えたと言う。




「疾患啓発健康チェック」を6月末より追加料金なしでリリース

こうした成果を受けて、ソフトバンクロボティクスはPepper for Bizに「疾患啓発健康チェック」(コンテンツとアプリのパッケージ)を用意し、追加料金なしで提供することにした。

これによって、病院やクリニックでは「Pepper for Biz」を導入して簡単な手続きをするだけで待合室でPepperを稼働させることができる。来院者は待ち時間を利用して疾患啓発アプリで疾病や健康のチェックができるようになる。病院側としては、来院者に疾病や健康に関する関心を促すことができるとともに、健康診断の受診や診察につなげることができる。

当初は疾患啓発用のコンテンツとして、内科、眼科、泌尿器科向けが用意される。6月末に疾患コンテンツが8種類、健康コンテンツが13種類で、月々新しいコンテンツを追加していく予定だ。
利用するにはユーザーがウェブページ(6/30中に公開予定)から必要なコンテンツを選択してソフトバンクロボティクスに申請する。すると後日、Pepper for Bizの基本アプリである「ヒアリング・レコメンド・クーポン」と呼ばれる設定画面にアップロードするファイルがメールで送付されるカタチだ。
更に2017年冬頃にはシステム側の大幅なアップデートが予定されていて、ウェブページ上から利用したいコンテンツをユーザーが直接選択するだけで組込できるようになる予定だ。

当初コンテンツは26種類。グレー表示のものは7月後半にコンテンツが追加される予定のもの

申請したコンテンツはメニューに組み込まれたアプリとして提供される。設定などの手間はいらない

申請は6月末日より「Pepper for Biz 疾患啓発健康チェック」のホームページで行えるようになる予定

医療機関以外の業種でも申請することができるが、一部のコンテンツは医療機関のみに提供が制限されているものもあると言う。なお、疾患啓発健康チェックの結果をプリンタで印刷することもできる(別途、小型プリンタを病院側で用意する:市販されているものでよい)。プリントした結果を医師に提出すれば、診察がよりスムースに勧められるだろう。





今後はPepperの業務別パッケージを拡大、導入セミナーも全国で積極的に展開

Pepper for Bizは導入企業が2,000社を超えた。

今後はさまざまな業務別にパッケージを用意することで、導入を簡単にしていく方針だ。その第一弾として医療分野を選択した理由は、既に実証実験などの実績があり、医療関係者からの協力が多数得られたことがあげられる。

ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 事業企画統括部 事業企画部 ソリューション企画課 藤井健氏

病院・クリニック数は全国に約11万件と言われ(コンビニが約5.5万件:参考)、市場規模としては小さくない。ソフトバンクロボティクスでは、Pepper for Bizを導入してすぐに利用できる業界別のコンテンツを用意することで、導入の敷居を下げるとともに、ロボットの実用性をアピールするねらいだ。医療分野においては疾患と健康の啓発コンテンツが最適だと判断し、まずはこのパッケージをしっかり活用してもらえるように努めていくという。
同社は内科、眼科、泌尿器科以外にも今後は拡充していく予定で、コンテンツもまた順次拡大していく予定だ。

ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 事業推進部 事業推進課 村本佳駿氏

ちなみに湘南厚木病院の実証実験では、2週間で約1,000人以上が待合室等のPepperに触れあい、回答したり、情報に耳を傾けたと言う。単純計算で一日70人以上になり、待合室でのPepperの注目度はとても高いと言える。時間をもてあましている待合室で、Pepperが「健康チェックをしてみませんか」と呼びかけられたら、そしてそれが医師らによる監修のものであったなら、あなたもやってみたくなるのではないだろうか。

次回「Pepper for Biz 2.0 医療業界向けセミナー」は7/13に東京で追加開催の回が予定されている。また、大坂、名古屋、福岡でも開催が予定されている。また、セミナーは医療業界向けだけではなく「顔を覚えて人に寄り添うPepper活用セミナー!」なども予定されている。セミナーのスケジュールは下記のホームページ「Pepper for Biz セミナー&マンツーマン相談」で確認できる。

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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