スマートスピーカーでの購入、言い間違えはどうなる? 経産省が「AIスピーカーを利用した電子商取引」のルールを発表

平成30年5月21日「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂案において、「AIスピーカーを利用した電子商取引」についての項目が追加された。

AIスピーカー(スマートスピーカー)の国内普及を踏まえて、音声を通じたコマースが広がる前に問題になりそうな論点について経済産業省として事前に見解を盛り込んだ資料となっている。業界関係者必見の資料として今回その概要を紹介したい。

今回追加される論点は2つあり、1つ目がAIスピーカーが音声を誤認識した場合、 2つ目がAIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合。それぞれの見解は以下の通り。



AIスピーカーが音声を誤認識した場合

【論点】
AIスピーカーが実際には発注がないのに発注があったと誤認識して発注処理をした場合、ユーザーにはどのような救済が与えられるか。
ここで、AIスピーカーを提供する事業者と、AIスピーカーを介して受注サービスを提供する事業者は同一であるとする。

【例】
・AIスピーカーがテレビのドラマ中での AIスピーカーを使った発注の場面の音を拾って注文してしまった。
・幼児が母親にお菓子をねだっている音声をお菓子の発注と誤認識して注文してしまった。

【見解】
発注者が実際には注文を行っていないケースでは、法律行為としての注文の意思表示はなかったと解釈されるので、AIスピーカーを通じた契約は成立していない。
事業者としては、契約が成立しない事態を防ぐために、AIスピーカーが認識した注文内容をユーザーに通知し、ユーザーから確認が得られた場合に注文を確定するという確認措置を講じることが有用である。

ユーザーにとってもAIスピーカー事業者にとっても、音声だけで完結させず、一度メールなどで確認するプロセスを組み入れることは重要だ。テレビや子供による影響だけでなく、人間に聞こえない声によるハッキング事例、極端な例ではオウムによる注文など想定外の事案も実際に起きているからだ。



AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合

【論点】
発注者が AIスピーカーで音声発注をしようとして、うっかり言い間違えをしてしまったため、発注者の意図と異なる物品が発注された場合に発注者にどのような救済が与えられるのか。
ここで、AIスピーカーを提供する事業者と、AIスピーカーを介して受注サービスを提供する事業者は同一であるとする。

【例】
・「タイヤ」を注文しようとして「ダイヤ」と言ってしまった。
・子供が好きなキャラクターのおもちゃを注文しようとしたら、記憶間違いで似たような名前の全く別のキャラクターのおもちゃを注文してしまった。

【見解】
発注者の言い間違いは表示上の錯誤であり、売買の目的物は売買契約の重要な要素であるから、これに関する錯誤は法律行為の要素の錯誤として民法第95条本文により無効となる。
但し、発注者に重過失がある場合には、民法第95条但し書きにより、発注者から錯誤を主張することはできない(なお、AIスピーカーによる発注には、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律の適用はない。)

AIスピーカーを日常使っているユーザーであればわかると思うが、現状指示したコマンドが100%確実に伝わらないことも多い。周りのノイズや、マイクと発話者の距離、声の調子などで常に安定した音声認識ができるとはいえないのだ。論点ではユーザーの言い間違えとなっているが、実際のところ、AIスピーカー側の聞き取り間違えのほうがよほど多いと思われる。いずれにせよ、トラブルとならないような仕組みがユーザーにもAIスピーカー事業者側にも必要だという見解は正しいだろう。

僕はこう思った:

実際、国内で音声コマースを経験しているユーザーはまだ少ないと思いますが、今後大きく普及されることが予想されるジャンルとして問題が起こる前に国としての見解が発表されたことはありがたいですね。この見解を踏まえて事業者側もユーザーとトラブルを起こさないように事前に対応を進めてくれることを期待します。


関連記事(スマートスピーカー / AIスピーカー関連)
ロボスタ / 音声アシスタント特集


ABOUT THE AUTHOR / 

中橋 義博
中橋 義博

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。

PR

連載・コラム