自動運転車が信号やセンサーと連携してスムーズに右折 交差点やT字路で実証実験 日本総合研究所や名古屋大学、沖電気ら

IHI、あいおいニッセイ同和損害保険、沖電気工業、名古屋大学、日本自動車研究所、日本総合研究所は、自動運転車両を用いた路車間通信の実証実験を実施する。場所は神戸市北区筑紫が丘、期間は2020年3月16日から3月25日まで。

実証実験では、ヤマハ製ゴルフカーをベースにした自動運転車両が、交差点での右折や合流をする際に、死角からの飛び出しなどに備えたり、発進・停止や加減速のタイミングを最適化させるための車載センサーと、道路側センサーの協調によるしくみを検証する。自動運転システムは名古屋大学が開発したもの。

写真:名古屋大学提供


条件の異なる交差点で検証

具体的には、自動運転車両の死角領域を含めた道路側センサーのセンシング状況や精度を評価すると共に、他の車両に不快感を与えない、安全で円滑な自動運転車両の挙動のあり方を検証する。また、これらの評価を条件の異なる複数の交差点で実施することにより、交差点の違いによるリスクの違いも可視化する。


A.信号あり交差点(十字路)での右折

信号交差点において、実証車両の右折挙動を検証。実証実験は、対向車線を直線走行してくる通過車両(名古屋大学関係者が運転)の有無に分けて行う。実証車両は、車載センサーおよび道路側センサーからの取得情報を活用して通過車両や一般車両、歩行者等の有無を判断。通過車両や一般車両、歩行者等が存在する場合は、それらの挙動(速度、加速度等)に応じて右折する。評価は、右折による交通流の妨害の程度によって判断する。





B.信号なし交差点(十字路、T字路)での直進、右折

信号のない交差点(十字路およびT字路)において、実証車両の交差点通過挙動を検証。実証実験は、優先道路側の対角車線を走行する通過車両の有無に分けて行う。実証車両は車載センサーおよび道路側センサーから取得した情報から対角車線を走行する通過車両や一般車両、歩行者等の有無を判断。優先道路側の対角車線を走行する通過車両や一般車両、歩行者等が存在する場合は、それらの挙動(速度、加速度等)に応じて加減速または停止を行う。評価は、交差点通過タイミングによる交通流の妨害の程度によって判断する。



今回の実証実験は、日本総合研究所主催の「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」が取り組んでいる、住宅地での移動サービス向けの運行設計領域「ODD」の検討・定義の一環。コンソーシアムには実験に参加する企業の他、関西電力、ダイハツ工業、菱電商事、神戸市、神戸空港タクシー、みなと観光バスなどがメンバーとして参加している。

■まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアムとは、、、
住宅地をはじめとした限定地域内において、自動運転技術を活用して高齢者などの近隣移動をサポートするサービスの事業構想を策定することを目的に2018年に日本総研が設立した産官学民によるコンソーシアム。自治会、自治体を含む産官学民が連携して、サービスの社会実装に必要なシステムの仕様や事業仮説について検討している。

ODDとは自動運転システムが正常に作動する前提となる設計上の走行環境に係る特有の条件のこと。ODDに含まれる走行環境条件としては、例えば次のものが挙げられる。

■ODDに含まれる走行環境条件
・道路条件(高速道路、一般道、車線数、車線の有無、自動運転車の専用道路 等)
・地理条件(都市部、山間部、ジオフェンスの設定 等)
・環境条件(天候、夜間制限 等)
・その他の条件(速度制限、信号情報等のインフラ協調の要否、特定された経路のみに限定すること、保安要員の乗車要否等)

実証実験の結果を踏まえながら、各参加団体はODDの精緻化を進めると共に、最適な自動運転車両の走行方法と道路側センサーのあり方について、さらに検討していく。なお、実証実験の役割分担は以下の通り。

■実証実験での役割分担(プレスリリースより引用)
株式会社IHI
本実証実験では、一般ドライバー向け安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support System)用として開発された交通流データ収集・分析技術を活用し、実証車両の交差点右折支援を行います。公道に設置したレーザセンサーが検知した交差点周辺の対向車両および歩行者の位置・速度情報を、専用の無線回線を介してリアルタイムで実証車両に通知します。

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
当社は、テレマティクス自動車保険のパイオニアとして、運転挙動のデータや事故時の映像データ等を活用した安全運転促進に関する独自のノウハウを蓄積しています。本実証実験では、それらのノウハウを活用し、自動運転車両の安全・安心な走行ルート設計の在り方について検討します。

沖電気工業株式会社
当社は、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)や車両動態解析による渋滞予測技術や映像・電波・レーザなどのセンシング技術を有しています。本実証実験では、交差点に設置したレーザセンサーが周辺の歩行者や車両などの交通状況を検知し、通信を用いて実証車両にリアルタイムで通知することで走行支援を行います。

国立大学法人名古屋大学
ゴルフカーをベースとした自動運転車両のほか、独自に開発した自動走行用のソフトウェアを提供します。本実証実験では、これまで自動運転車両単体では不可能であった死角領域における対向車両や歩行者の検出を、インフラと協調することで可能にする、交差点の自動右折通過機能におけるセンシング領域の実証を行います。

一般財団法人日本自動車研究所
高度な自動運転を一般公道で実用化するには、利便性と安全性を高いレベルで両立することが必要となります。そのための走行コースの交通実態の把握、自動走行する上でのリスクアセスメント、最終的には許容できない危険を発生させないための方策の実装に至るまで、一連のプロセスや技術の検討と実証実験を通じて、安全性確保の手法を具体化します。

株式会社日本総合研究所
本実証実験では、地域住民が安心して利用・参加できる自動移動サービスの実現を目的に、コンセプト立案から推進支援までの総合的なプロデュースを実施します。また、本実証地におけるサービスの実装に必要なODDの作成をとりまとめると共に、他地域への展開も見据え、簡易にODDを設計できる仕組みを構築します。
関連サイト
日本総合研究所

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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