最新のAI・ロボット技術を組み合わせた「AIスーツケース」実証実験の動画を公開 視覚障がい者の移動を支援 社会実装を目指す

アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エム、三菱自動車工業の5社で設立した「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム」(以下、コンソーシアム)は、AIスーツケースの社会実装を目指した実証実験を開始することを発表した。

AIスーツケースはカメラをはじめとした様々なセンサーから得られる情報と、最新のAI・ロボット技術を組み合わせることで、視覚障がい者が自立して街を移動し自然なコミュニケーションを開始することを助ける統合ソリューション。


AIスーツケースのスーツケース部分は「グローブ・トロッター」提供のスーツケースを土台として吉本英樹氏(Tangent Design and Invention Ltd)がデザイン

実証実験では搭載機能の性能や使いやすさを評価・検証することで、共生社会の実現に向けた取り組みを進めていく。具体的には三井不動産が管理運営する商業施設コレド室町3をはじめ、国内の商業施設、公共交通機関、大学構内などへ拡大していくことを目指す。期間は2020年11月12日から2021年4月30日までを予定。なお、コレド室町3で先駆けて実施した関係者のみによるデモンストレーションの様子が動画にて公開された。


AIスーツケースの機能

移動を支援する基本機能
・位置情報と地図情報から目的地までの最適ルートを探索する機能
・音声や触覚などによる情報提示を交えながら誘導する機能
・映像およびセンサーの情報から障害物を認識し避ける機能





行動やコミュニケーションを支援する独自機能
・位置情報とクラウド上の知識情報から、周囲のお店の案内や買い物の支援を実現する音声対話機能

・映像から知人を認識し、表情や行動などから相手の状況を判断し、円滑なコミュニケーションを支援する機能

・映像およびセンサーの情報から周囲の行動を認識し、「行列に並ぶ」といった、その場に応じた社会的な行動を支援する機能





追加機能(下記の上から3つは新型コロナウイルス感染症対策として追加)
・映像およびセンサーの情報から人とのソーシャルディスタンスを確保しながら誘導する機能

・映像からマスク着用有無を判定し音声と触覚(振動)で知らせることで、ユーザーの状況に応じた行動を支援する機能

・マスク着用時でも映像から知人[HT6] を認識し、円滑なコミュニケーションを支援する機能

・商品タグのRFIDをスマートフォンで読み取らせることで、手に取った商品の情報を音声で伝え、買い物を支援する機能(RFID導入店舗に限定)

実証実験期間における顔認識は、本人の了承および個人の顔データを含めた情報取得を認めている施設等でのみ実施する。また、撮影した画像データは技術開発のみに利用し、実証実験後はデータを削除する




新たな協業

慶應義塾大学と早稲田大学が賛助会員として参画し、AIスーツケースをプラットフォームとした研究活動を行う。社会福祉法人日本点字図書館と公益財団法人日本盲導犬協会が実証実験に参画し、視覚障がい者の移動支援や技術的課題の解決に向けた知見を提供する。


今後の展望

コンソーシアムは視覚障がい者の実社会におけるアクセシビリティと生活の質向上を目的として、AIスーツケースのさらなる開発と、社会実装に向けた実証実験とデモンストレーションを実施している。コンソーシアムはこの活動を通じて、障がいのある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら共に生きる「共生社会」の実現を目指していくとしている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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