株式会社情報工場と国立大学法人九州大学は調べ学習における学習行動パターンが知識の広がりにどう影響するかについて、2020年11月より共同研究を開始したことを発表した。
同研究は九州大学の授業「課題協学」内のテーマ「人間社会におけるデータの利用:2030年のデータ利用サービスをデザインする」において、様々な資料を調べる「調べ学習」で取った学習行動と、それにより知識がどのように広がったかをデータ化・分析し、学習者が効果的に知識を広げることのできるパターンを見出すもの。
どんな学習が効果的に知識を広げるか
昨今の変化の激しい時代には、新たな知識を学び、それらを組み合わせて柔軟な発想を生むことが必要とされている。一方、これまでWebや図書館、知識コンテンツなどを含む多様な情報に対して、どのような学習行動が効果的に知識を広げるかについては分析されていなかった。同研究は学生向けのみならず、社会人向け学習プログラムにおける効果的な学習環境のデザイン、構築に貢献するとともに、学習行動に対する効果測定としてもこれまでにない示唆を得られるとしている。
研究方法
具体的には学生はWeb検索・図書館等における資料閲覧、情報工場が運営する書籍ダイジェスト配信サービス「SERENDIP」のダイジェスト閲覧の3つを用いて調べ学習を複数回にわたって行う。全ての回の学習行動履歴を記録し、各調べ学習の終了後、学生は調べ学習のテーマに関連する概念(知識)を線でつないだ図(概念地図)を調べ学習の成果として作成する。
これらの実験データから各学生が行った調べ学習における行動履歴の時系列データをディープラーニングまたは統計的手法でクラスタリング(データ間の類似度にもとづいて、データをグループ分けする手法)したうえ、カテゴリ分けを行う。その上で、行動履歴のカテゴリごとの知識の広がりの違いを分析、どのような行動パターンが知識の広がりに貢献するかを考察する。
共同研究の概要
期間 | 2020年11月12日~2021年3月31日 |
---|---|
研究対象者 | 九州大学の学生のうち研究参加に同意した学生20~40名(予定) |
使用物 | Google Chromeがインストールされたパソコン、Google Chromeの拡張能History Master、SERENDIPダイジェストを設置したWebサーバ、インターネット、図書館の資料、SERENDIPダイジェスト |
九州大学と情報工場について
九州大学は2013年度より学生が自身のパソコンを授業で用いるシステムBYODの導入をはじめ学習環境のデジタル化を実施し、最近では学習履歴やラーニングアナリティクスといった教育データの活用など先進的な取り組みを行っている。「能動的学習能力」を礎に自律的な改革を続けていることから、学生だけではなく就職人気企業からも評価が高い教育機関。
個人用の PC やタットを活用すること。九州大学は、国立の総合大学として初めて、2013年度の新入生からPC必携とした
ラーニングアナリティクス
情報通信技術(ICT)を用いて、 教員や学生からどのような情報を獲得し、どのように分析・フィードバックすれば、どのように学習・教育が促進されるかを研究する分野
情報工場は視野を広げ新しい発想のきっかけとなる情報を提供することをミッションに、ビジネスからリベラルアーツ、ベストセラーから隠れた名著まで様々な分野の良書をダイジェストにして配信する「SERENDIP」(セレンディップ)を運営している。イノベーションを創出する発想とひらめきのある組織文化を醸成するツールとして多くの企業に利用される一方、近年では、人材育成研修プログラムの一環としても活用が増えている。
九州大学 基幹教育院・教授 ラーニングアナリティクスセンター長 木實 新一氏からのコメント
本研究で得られる知見をもとに、能動的な学びを効率的に支援し「アクティブラーナー」を育成することのできる学習環境やツールの実現に貢献したいと思っています。
ABOUT THE AUTHOR /
山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。