スケッチを瞬時に絶景画像に変換する「NVIDIA Canvas」AIで美しくリアルなアート作品の制作を支援

落書きからフォトリアルな風景画像が仕上がる。そんなことができるアプリがある。NVIDIA Researchチームが開発した「GauGAN」はディープラーニング モデルを使い、ラフスケッチを目を見張るような風景画像に変換するもので、世界中の展示会でクリエイターから高い注目を浴びた。

このツールをもとに構築されたNVIDIA Canvasでは、クリエイターが色ではなく素材を使って描画し、ブラシの軌跡をAIが本物そっくりの画像に変換する。描画した結果がまるで写真のような画像として表示されるため、想像したものが具現化されるのを待つ必要はない。なお、NVIDIA RTX GPUのユーザーであれば、無料のベータ版の提供が開始されたNVIDIA Canvasアプリを通じて、誰でもリアルタイムのペイントツール「GauGAN」を使用できる。


NVIDIA Canvasとは

NVIDIA Canvasはクリエイティブなビジョンの実現の支援を目的としたハードウェアとソフトウェアのツールをクリエイターに提供するプログラム「NVIDIA Studio」の一部。
ユーザーはまず草や雲など、実在する素材を集めたパレットを使って、シンプルな形や線を描く。するとAIモデルが即座に目を奪うような画像を表示する。4つの形状を手早く描いただけで、雄大な山脈が現れる。線を数本追加すれば美しい草原が生まれ、池を描き込めば、水辺の木や岩などの近くにある要素が水面に映り込む様子が現れる。素材を替え、雪を草に変更すれば、画像全体が素晴らしい雪景色から南国の楽園へと変貌する。


線や形は数秒でまるで本物のような風景画像に変換される

このツールにはスタイル フィルターがあり、生成した画像を特定の画家のスタイルに変換することができる。NVIDIA Canvas は別々の画像をつなぎ合わせたり、テクスチャを切り貼りしたりするだけでなく、アーティストのようにまったく新しい画像を制作する。

自身のデジタルアート作品をレベルアップしたいアーティストなら作品を.psdファイルとして保存し、Adobe Photoshopにインポートすることで、さらに完成度を高めたり、他の作品と組み合わせたりすることができるなど、創作の可能性は無限にある。


NVIDIA Canvasは短時間でアイデアを生み出すのに役立つ

プロジェクトの立ち上げ時にまっさらなキャンバスに向かうのは大変な作業。NVIDIA Canvasはアーティストが短時間でアイデアを生み出すのに役立つ他、幅広い分野のクリエイターやデザイナーの時間節約にもつながる。たとえば、広告キャンペーンの商品のビジュアルの仕上げに追われているアートディレクター。風景がシーン完成の決め手になるとする。NVIDIA Canvasで数回クリックすれば美しい画像が何枚も作成できる。このツールであっという間にクライアントに複数の選択肢を提示することができ、ビジュアルの最終化までの貴重な時間を節約できる。


NVIDIA Canvasには画像の印象を修正する9種類のスタイルがあり、素材は空や山から、川、石まで15種類がある。別のレイヤーに描画すれば、各要素を分離することが可能。ゼロから描くこともできれば、新たなヒントを得るためにアプリで用意された風景をベースに修正を加えていくこともできる。

NVIDIA Canvasで落書きを素晴らしい風景画に変えることができる

NVIDIA Canvasは敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれるAI技術を使用している。GANは生成ネットワークと識別ネットワークで構成され、生成ネットワークは素材マップを画像に変換する。識別ネットワークは現実の池や湖に反射があることを知っており、生成ネットワークに信憑性のある模倣画像を作成するよう指示する。アーティストにリアルな画像を提供するために、GANはNVIDIA DGX システムで500万以上の画像を使って学習されている。

AIを活用するNVIDIA Canvasには15種類の素材が用意されている

【動画】Introducing the NVIDIA Canvas App – Paint With AI | NVIDIA Studio

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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