NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、米ラスベガスで開催された「CES 2026」の基調講演で、次世代AIチップからクラウドAI、自動運転AIモデル、産業ロボティクス、AIエージェントまで、同社の新たなロードマップを一挙に公開した。

キーワードは 「フィジカルAI」。AIがスクリーン(デジタル世界)の中から実世界へ進出する新時代を象徴する発表となり、フィジカルAI時代の本格到来を宣言した。

■ 1. 新AIアーキテクチュア「Vera Rubin」へ
新CPU「Vera」と新GPU「Rubin」を軸に構成される「Vera Rubin プラットフォーム」が披露された。「NVIDIA Vera」は、AIシステム向けの「NVIDIA GPU」とシームレスに連携する。
NVIDIAの発表によれば、「NVIDIA Vera CPU」は、データ移動とエージェント型推論向けに構築され、新しいGPU「Rubin」を含めてシステム全体において、データ、メモリ、ワークフローを調整するように設計されている。

RubinのスペックはBlackwell世代から大幅に進化。推論性能では最大5倍、トークンあたりのコストは最大1/10へ削減するとしている。
2026年後半の提供を予定し、生成AI・フィジカルAI・ロボティクス領域に向けた新基盤となる。

■ 2. データセンター向けAIスーパーコンピュータ「Vera Rubin NVL72」
「Vera CPU」と「Rubin GPU」を統合した次世代の大規模AIサーバー構成「Vera Rubin NVL72」も発表された。これは6つの主要チップを緊密に統合したAIインフラ基盤であり、AI推論・訓練の両方を大規模・高効率で実行できる設計。より高密度・低消費電力で大規模モデルの訓練・推論を実行でき、クラウドAIやロボティクスの基幹インフラとして位置づけられている。


■ 3. フィジカルAIの本格推進
講演では、AIが産業・ロボティクス・ヘルスケアなど「現実世界で動くAI」時代が本格化すると強調。新世代AIチップとモデル群は、ロボット、倉庫物流、自律走行、医療現場まで広範に応用される見込みだ。


NVIDIAは、多くの業界でAIを推進させるための新たなオープンモデル、データ、ツールを発表した。
これらのモデルは、エージェント型AI向けの「NVIDIA Nemotron」ファミリー、フィジカルAI向けの「NVIDIA Cosmos」プラットフォーム、自動運転車開発向けの新しい「NVIDIA Alpamayo」ファミリー、ロボティクス向けの「NVIDIA Isaac GR00T」、バイオメディカル向けの「NVIDIA Clara」を網羅している。同社は「あらゆる分野の企業が現実世界のAI システムを開発するためのツール」を提供する、としている。
NVIDIA は、オープンソースのトレーニング・フレームワーク、10兆個の言語トレーニング・トークン、50万のロボットの軌跡、45万5000件のタンパク質構造、100テラバイトにのぼる車両センサー・データなどを、世界最大級のオープン・マルチモーダル・データコレクションしてい提供する。これは「言語、ロボット、科学研究、自動運転車におけるイノベーションを加速するために重要となる、かつてない規模の多様なオープンリソース」と表現。
また、Bosch、CodeRabbit、CrowdStrike、Cohesity、Fortinet、Franka Robotics、Humanoid、Palantir、Salesforce、ServiceNow、日立、Uber といった主要なテクノロジ企業が、NVIDIA のオープンモデル・テクノロジーを採用し、その技術を基盤として開発を進めているとした。
次世代AIモデル群「Cosmos」をマルチ分野に展開
「Cosmos」をフィジカルAIや自動運転、医療AI、産業AI、生活AIなど幅広い領域で利用可能なワールド基盤モデルとして紹介した。NVIDIAのAIモデル戦略が単なる特化型の枠を超え、物理世界全体を理解する方向へ進化していることを示唆した。
Cosmos世界モデル
「Cosmosオープン世界基盤モデル」では、ロボットやAIエージェントが現実世界をより正確に認識、理解し、インタラクションすることを支援する新しいリーズニングVLMとして「Cosmos Reason 2」をリリース。
多様な環境や条件で大規模な合成ビデオを生成する先進的なモデル「Cosmos Transfer 2.5」と「Cosmos Predict 2.5」を発表した。
導入事例として、Salesforce、Milestone、日立、Uber、VAST Data、Encord は、交通情報と職場の生産性向上のためのAIエージェントに「Cosmos Reason」を使用していることを発表した。
Isaac GR00T
ヒューマノイド向けに構築されたオープンなリーズニング視覚言語アクション (VLA) モデル「Isaac GR00T」では「N1.6」を発表。全身制御を可能にし「NVIDIA Cosmos Reason 」を活用してリーズニングとコンテキスト理解を向上させるとしている。
Franka Robotics、Humanoid、NEURA Roboticsが、「Isaac GR00T」を活用して、本番環境に実装する前段階でロボットの新しい動作をシミュレーション、トレーニング、検証していることを紹介した。(関連記事「NVIDIA「ロボティクスのChatGPT」宣言!フィジカルAI向け新技術をCESで発表」)

NVIDIA Blueprint
ビデオ解析・推論、スマートシティ関連の「NVIDIA Metropolis」プラットフォームの一部では、ビデオ検索および要約のための「NVIDIA Blueprint」を、大量の録画ビデオやライブ ビデオを分析して運用効率と公共の安全を向上させる視覚AIエージェントを構築するためのリファレンスワークフローとして紹介している。
■Scaling Industrial AI and Digital Twins With Siemens and NVIDIA
■ 4. 自動運転向けオープンAIモデル群「Alpamayo」発表
今回最も注目された新技術・新ファミリーのひとつが、NVIDIAの自動運転向け新AIモデルファミリー 「Alpamayo」(アルパマヨ) だ。

Alpamayo 1(Hugging Face公開):
100億パラメータ級のリーズニング型教師モデル
推論型VLAモデル(蒸留版):
車載・エッジ向けの軽量VLA(Vision-Language-Action)モデル
AlpaSim:オープンソースの自動運転向け物理シミュレータ
Physical AI Open Dataset:1,700時間以上の実走データセット
突発事象(ロングテール)への対応を強化し、自動運転の“考える力”を飛躍的に高める構成になっている。(関連記事「NVIDIA、CESで自動運転AI「Alpamayo」ファミリー発表 リーズニングAIと推論型VLAを組み合わせたオープンモデル」)
■ 5. 自動運転領域の実装例:Mercedes-Benz との連携
NVIDIAは、Mercedes-Benzの新型CLAに同社のDRIVE AVを導入する計画も紹介。
フィジカルAIモデルと次世代自動運転アーキテクチャが、量産車レベルへ到達しつつあることを示した(関連記事「NVIDIAの自動運転ソフト「DRIVE AV」、メルセデス新型CLAに初搭載へ フルスタック自動運転ソフトを量産車に本格展開する事例に」)。

■ 6. DLSS 4.5 などグラフィックス領域のアップデート
ゲーム・グラフィックス分野では、DLSSの新バージョン 「DLSS 4.5」 が公表され、AIによるマルチフレーム生成など最新技術が披露された。
■ まとめ:NVIDIAは“AIデジタル時代”から“フィジカルAI時代”へ
今回のCES 2026は、NVIDIAが自動運転・ロボティクス・産業AIまで、AIをリアルワールドへ展開する「フィジカルAI時代」の本格到来を宣言した場となった。
次世代チップ「Vera Rubin」、自動運転AI「Alpamayo」、そして包括的なフィジカルAIインフラが揃い、AIが実世界に展開するための準備が整ったといえる。







