「乗務員がいないバス」の実現に向け、BOLDLYが岐⾩県初「ハンドルがない⾃動運転バス」公道実証実験 信号協調や顔認証も導入

ソフトバンク株式会社の⼦会社であるBOLDLY株式会社は、岐阜市の「乗務員がいないバス」の実⽤化に向けた取り組みとして、岐⾩市街地において2021年10⽉23⽇から31⽇まで実施する⾃動運転バスの実証実験に関する業務を同市から受託した。

同実証では、2021年5⽉に開庁した岐⾩市役所の新庁舎とJR岐⾩駅の間の往復約5キロメートルなどをハンドルがない⾃動運転⾞両「NAVYA ARMA」が運⾏する。公道でハンドルがない⾃動運転バスの実証実験を行うのは岐阜県では初となる。

【自動運転バスの走行ルート】




同実証実験の概要

⼀部の交差点では、通信により交通信号機と協調すること(信号協調)で、「NAVYA ARMA」が信号機の色などの情報を取得し、信号を通過するタイミングを⾃動で判断して⾛⾏する。


さらに、「乗務員がいないバス」の実現に向けて、岐⾩市役所内に設置した同社の⾃動運転⾞両運⾏プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を利⽤して、⾃動運転バスの運⾏状況や⾞内の様⼦の遠隔監視や、乗⾞運賃のキャッシュレス決済を⾒据えた顔認証による乗客の確認と擬似決済の実験を⾏う。同社は同実証への参画を通して、⾃動運転バスの社会受容性をさらに⾼めるとともに、新たな技術の検証を進めると述べている。なお、同実証では、岐⾩ダイハツ販売株式会社の協⼒の下、「アバター」を用いた非対面での乗⾞案内を⾏い、新型コロナウイルス感染症の拡大防止などに貢献する取り組みも行う予定だ。

【Dispatcher画面】

【遠隔監視の様子】



受託業務の内容
・ 走行ルートの提案および企画立案
・ 走行環境や通信環境など自動走行に必要な情報の調査
・ 自動運転車両「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」の貸与
・ 「NAVYA ARMA」の設定および⾛⾏ルートのマッピング
・ 行政との調整
・ 運転手の派遣
・ 自動運転バスの運行管理
・ 信号協調システムの設置および交通信号機と⾞両との連携設定
・ 顔認証システムとの連携



信号協調に関する実証の実績について

同社は、自動運転バスの信号協調に関する実証を過去に6回実施しており、今回は7回目となる。

・沖縄県石垣市  (2017年:内閣府 沖縄自動運転バス実証実験 )
・茨城県日立市  (2018年:ひたちBRT )
・千葉県柏市   (2019年〜現在:東京大学 柏キャンパス )
・神奈川県藤沢市 (2019年:神奈川県ロボット共生社会推進事業 )
・千葉県千葉市  (2019年:CEATEC 2019 )
・福岡県北九州市 (2020年:経済産業省・国土交通省による中型自動運転バス実証 )
・岐阜県岐阜市  (2021年:本実証 )




自動運転バスの実用化に向けて必要な信号協調技術

自動運転バスの信号協調の方法は、「通信方式」「カメラ方式」の2種類がある。「通信方式」では、交通信号機や信号機管制センターから自動運転バスに対して、信号機の表示切り替えタイミングをあらかじめ配信することが可能。そのため、自動運転バスは、自車の速度や位置情報を基に、通過する予定の信号の灯火色を予測し、余裕を持ってスムーズに加減速を行うことができ、乗客に快適な乗り心地を提供することができる。一方、「カメラ方式」は、カメラの死⾓や逆光により、信号機の灯火色を確実に認識することが難しいという課題がある。さらに「カメラ方式」の場合は、信号現示情報(現在の灯火色)に頼るため急制動が起こりやすいという特性があり、乗客の転倒などの車内事故につながる危険について鑑み、同社は、過去6回の実証を通して、自動運転バスには「通信方式」が必須であると結論づけている。





今後の課題

信号協調の普及には、政府による信号協調方式の標準化の議論が完了すること、各都道府県警への予算配分などが行われること、設備の維持管理主体が明確化されていくことなどが必要だ。しかし、現状ではこれらを完了するまでのロードマップが政府から示されていない。これが、「通信方式」による信号協調は、実証を通してすでに技術が確立されているにも関わらず、社会実装が進まない理由となっている。同実証においても、ルート上の全信号で信号協調を行うことに対する技術的な制約はなかったが、「通信方式」による信号協調の社会実装のめどが立っていないために、同実証において設置する信号協調用機器の維持管理や撤去費用などの理由で、最低限の2カ所に絞って信号協調を実施することにした。
経済産業省は、「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」において、2025年までに40カ所以上で無人自動運転サービスを展開するという⽬標を掲げています。こうした政府の動きを念頭に、同社では、すでに茨城県境町や「HANEDA INNOVATION CITY」で自動運転バスの実用化を達成しているが、上記の理由でいまだ信号協調の実装は実現できていないため、今後も政府などとの連携を図りながら、自動運転バスの実用化を推進し、交通課題の解決に取り組んでいく予定だ。

【NAVYA ARMA】
関連サイト
BOLDLY株式会社

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