“香り×AI”による次世代教育を小学校1年生が体験 感じ方、表現の違いを学び感性や表現力を育む 愛知教育大学 野田敦敬学長が監修

嗅覚のデジタライゼーションによって新たな顧客体験を提案するSCENTMATIC株式会社(以下、セントマティック)は、関西国際学園グループのさくらインターナショナルスクール 東京・日本橋校にて、2021年11月18日(木)小学校1年生の授業で、世界初の「カオリウム実験教室」のトライアル授業を実施したことを発表した。

「KAORIUM」(カオリウム)は香りの特徴を言語化するAIシステムで、セントマティックが開発している。今回は国立大学法人 愛知教育大学 野田敦敬学長監修のもと、科学教育を行う株式会社リバネスとセントマティックが協力し、小学校低学年の生活科向け教育プログラムとして実施した。


小学校「生活科」の中でほとんどなかった「嗅覚」による体験授業

小学校「生活科」は児童が商店街に行って社会の仕組みを学んだり、植物を育てて理科の知識を得たりなど実体験を通して学ぶ授業。この科目では五感を用いて自然や生活について学ぶことを重視している。しかし、教育現場の課題として「嗅覚」についての具体的な取り組みがないという点があげられている。そこで、香りの特徴を言語化する最先端のAIシステム「カオリウム」を使い、子供たちが実際に香りを言葉にしていく体験を通して、生活科で重視されている「見つける、比べる、例える」体験がとして取り入れられないかと期待されている。


今回の実験教室ではまず児童に3つの香り瓶を選んでもらい、香りを嗅いで言葉にしてもらった。次にカオリウムを使って同じ香りを言葉にする。AIがたくさんの表現を提示することによって、1つの香りには様々な表現があるということ、人によってその感じ方は異なるということを体感する。この授業の目的は嗅覚情報よって見える世界が広がるという現象を学び、それを言葉にすることで感性や表現力を育む。また、副次的な効果として、嗅覚情報を言語化したときに個人差が生まれることを知ってもらい、個人差を楽しむ心を育むことも狙っている。




実際に授業を体験した生徒たちからは、以下のようなコメントが上がった。

・あまり香りのこと考えたことなかったけど、どういう香りかを考えるのが楽しかった

・花のにおいだと思っていたのに、本当は木のにおいだとわかってびっくりした

・香りを言葉にするのは、最初難しかったけど、だんだん慣れてきたから、もっと他の香りでもやってみたい

・香りは一緒だけど、自分の香りの感じ方と、他の人の感じ方が違うのがよくわかった

最後のコメントにもあるように、同じ香りでも人それぞれ「あっさり」、「静か」、「クリア」、「スーッとする」など、感じ方の違いに気づき驚いている生徒や、中には「今日は植物の香りだったけど、マスカットや、キャベツ、パンケーキでも言葉にしてみたい」と、好奇心が刺激されて授業後のおやつで試している生徒もいたという。


今回の講師を担当したリバネスの伊地知聡氏は、「今回は、自分と友達は感じ方が違うこと、違いを受け入れることに重点を置いて実施しました。テクノロジーが発展する未来に向けて感受性を養う次世代教育が求められる中、五感の中でも扱われづらかった「嗅覚」によるカリキュラムは、小学校高学年向けに総合学習の時間にも取り入れることもできると思います。香りを言葉にするのは、大人でもあまり経験してきていません。子供の頃から初期セッティングすることで広がる可能性を追求していきたい。学校からのフィードバックをもらいながら、実際の教育現場のニーズに合わせて向上させていきたい」と、今後の期待と意気込みを感じられるコメントを述べた。


次世代社会における「嗅覚・感性」の可能性

4K・8Kや、ハイレゾなど「視覚」や「聴覚」向けのサービスやテクノロジーで占められている現代の日常生活に比べ、「嗅覚」を意識する機会は稀。不快なにおいは消臭することが推奨されるなど、嗅覚情報が活かされていない。そのため、五感の中で未知数な「嗅覚」の可能性について、近年注目が増してきた。「嗅覚」は香りと記憶が結びつくなど、脳の性質により、心理学的な効果ももたらすことが分かっている。記憶と結びついた嗅覚情報、個人特有の感性を喚起し、好きなにおいを嗅いだときには元気が湧いてきたりする。

「カオリウム実験教室」は全国の公立・私立小学校の生活科向けワークショップ型教材として展開していく予定。季節に合わせた内容や、食育など教育現場に合わせ、日々の生活の中に必ずある「香り」に着目し、世界初の「香りとAI」による新しい教育プログラム開発に挑んでいく。


国立大学法人 愛知教育大学 野田学長からのコメント


人間が本能として持つ「嗅覚」については、小学校教育の中で学ぶ機会がございません。生活科の課題として挙げられる“日々の生活からの気付きの質を高めること”、また“生活科での学びを言葉に表現し伝える力”に対して、カオリウムは五感の中でも「嗅覚」という今までにないアプローチによる新しい授業になるプログラムとして期待をしています。季節の変化や生活の中に必ずある「香り」は、1年生の生活科にある「四季の変化と季節によって変わる生活」や2年生の「まちたんけん」の授業の中で、「春の香り、秋の香り」だったり「まちの香りたんけん」だったりと、生命の尊さや自然事象について体験的に学習し、同時に表現力を養うことができます。


セントマティック 代表取締役 栗栖俊治のコメント氏


マイナスをゼロにする利便性の追求だけではなく、ゼロからプラスにすることで暮らしは豊かになります。香りに ITを融合させた新しい体験は、個人特有の香りの感じ方といった感性のデジタライズ化を実現し、香りを通して暮らしを豊かにするサービスへと貢献できると考えております。


香りと言葉を変換するAIシステム「KAORIUM」とは

KAORIUMは香り香りと言葉を相互に変換するAIシステム。最先端のテクノロジーによって、曖昧で捉えにくい香りの印象を言葉で可視化したり、ある言葉に紐づく香りを導き出すことを可能にする。そのため、一人ひとりの嗜好を分析し、その人に合った香りを開発することが可能。また、言葉を意識しながら香りを深く味わう体験は左右両脳を活性化し、まだ見ぬ感性への気付きをもたらす。香りと言葉をつなぐ今までにない体験が生み出す価値は、フレグランスの世界にとどまらず、感性教育、飲食体験、購買体験など様々な分野に新しいビジネスチャンスを生み出すものとして、その可能性に大きな期待が寄せられている。




ABOUT THE AUTHOR / 

山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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