ヴイストン株式会社は、同社製研究開発用台車ロボットへの搭載に適したROS対応のロボットアーム「AMIR 740(アミル ななひゃくよんじゅう)」を発売することを2022年7月1日に発表した。
同社が製造販売している、メガローバーシリーズ、メカナムローバーシリーズに代表される研究開発用台車ロボットは、自律制御、自動運搬などの研究用途に適した開発者向けのプラットフォームで、十分な可搬重量と機動性を備えているほか、ハードウェア、ソフトウェアの両面から、実際に研究や開発を行うユーザー側の自由度が高くなるよう配慮して設計されており、運搬や配送のためのロボット開発のみならず、教育教材、展示用途、清掃や配膳、測量や調査といった様々な用途におけるロボット研究のベース機材として、多くの開発現場に導入されている。
同社では「AMIR 740」の発売を通して、ロボットが活躍できる場をいっそう拡大させると共に、数多くの研究、開発プロジェクトをさらに加速、深化させていくことを支援して行くと述べている。
現在、公式Webショップにて同ロボット(本体販売価格770,000円/消費税込み)の注文を受け付けており、単体での注文の他、ベースとなる研究開発用台車ロボットの本体とセットでの販売も可能だ。
(※冒頭の画像:別売の研究開発用台車ロボット「メガローバーF120A」への「台車用ロボットアームAMIR 740」搭載例)
■【動画】ROS対応 台車用ロボットアーム AMIR(アミル)740 製品紹介【可搬重量2kg・最大リーチ740mm】
同ロボットの主な特徴
台車ロボットへの搭載に対応し、単体での使用も可能な同ロボットのアームの可搬重量は2kgを実現。最大で90mmの幅まで開くグリッパーを活用することにより、ロボット開発の可能性を大きく拡張する。
台車ロボットへの搭載に対応、単体での使用も可能
「AMIR 740」は、同社製の研究開発用台車ロボットの天板に搭載できるように設計されている。拡張機器用電源基板「VS-WRC054」と合わせて搭載することにより、台車ロボットに内蔵されたバッテリーから同ロボットに給電することが可能。自律移動や自動運搬などの用途において大きな自由度が得られる。また、AMIR 740を単体のロボットアームとして運用することも可能です。AMIR 740には、専用の直流安定化電源と非常停止スイッチが付属されるため、AC100Vの電源から給電し動作させることが可能だ。なお、研究開発用台車ロボット「メガローバーF120A」への搭載と運用を確認しているが、あらゆる姿勢、把持物体において転倒しないことを実現しているものではなく、運用においては、対象物体の重量や、台車ロボットおよびロボットアームを含めた全体の重心位置を確認すると共に、動作時の周囲の安全確保も入念に実施する必要がある。
アームを搭載することによる可能性の拡大
同製品を同社製の研究開発用台車ロボットに搭載することで、台車ロボットという機動力にロボットアームという「手先」が付加されることとなる。台車ロボットには、LiDAR(LRF)やデプスカメラ、またそれらを制御する「ROS PCオプション」などの豊富な機材を同時に搭載可能なので、各種センサーによる計測とPCによる処理、ROSを経由した制御などを統合して活用することができる。物体を持ち上げて運搬する用途や対象物に触れる用途など、台車ロボット単独では実現が困難であった研究、開発のプロジェクトを推進することを可能とする。ユーザー側の活用次第では、画像処理や各種センサーによる測距と組み合わせた自律型ピッキングロボットシステムの構築や、搬送用台車とロボットアームとを統合的に運用するモデルなど、高度で複雑な開発プロジェクトを、より実用化に近い形で研究、実装することが期待できる。
90mmまで開くグリッパーを標準搭載
AMIR740には、90mmの幅まで開くグリッパーが標準搭載。台車ロボットの移動性能とロボットアームの姿勢制御を活用し、様々な物体を把持することが可能だ。
アームの可搬重量2kg、最大リーチ740mmを実現
アルミニウム製の頑丈な構造とDCモーターの駆動力を活用することにより、アーム単体としての可搬重量2kgを実現。最大リーチは、軸1の回転中心から手先の中心までで740mmを実現しており、最大リーチ時でも2kgの可搬重量を維持する。ロボットアームとして実用的なサイズと耐久性、可搬重量を実現した。
Arduino IDEでプログラム可能
同製品にはロボット用制御ボード「VS-WRC058」が搭載されており、Arduino IDEを用いて制御プログラムを作成することができる。サンプルコードはArduinoライブラリーの形で製品に付属し提供されるので、ユーザー自身の手でファームウェアのカスタマイズを実施することも可能だ。なお、VS-WRC058をArduino IDEを用いてプログラミングする場合、Arduino IDE 1.8.13以上が動作する環境が必要となる。
ROSによる制御に対応
AMIR 740は、ROS(ROS1)による制御に対応。同社製の「ROS PCオプション」など、ROSが動作するデバイスとWi-FiまたはUSBケーブルで接続することで、ROSから本製品に対して目標位置と移動速度指令値を与えられるほか、同製品からは各軸のエンコーダー値を取得することができる。また、3Dシミュレーターである「Gazebo」用のモデルが標準で付属しており、モーションプランニングフレームワークである「MoveIt」にも対応。制御が複雑になりがちな多関節ロボットアームでありながら、GUI上で容易に操作、シミュレーションを行うことができ、シミュレーター上で検証を繰り返してからプログラムを実機へと反映させることで、合理的で迅速な開発が可能だ。(ROSを動作させるデバイスは別途用意する必要がある。)
▼【ROS使用時の推奨動作環境】
OS | Ubuntu 20.04(64bit) |
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ROS | ROS Noetic |
CPU | AMD Ryzen5 3550H |
RAM | 16GB |
ストレージ | M.2 SSD 250GB |
グラフィック | Radeon Vega 8 Graphics |
備考 | ※上記条件を満たしていても、相性などにより、正常に動作しない場合がある。 ※仮想環境は、タイムラグにより安全な制御が行えない場合があり、推奨していない。 |
▼本体仕様
本体重量 | 約7.1kg |
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可搬重量 | 2kg |
本体材質 | アルミニウム |
自由度 | 6軸(5軸+1グリッパー) |
入力電源 | 24V 10A |
把持範囲 | 90mm |
モーター | DCモーター×6 |
動作速度 | 最大60deg/s |
動作角度等 | J1(根元ヨー軸):±170度 J2(根元ピッチ軸):-135度~0度 J3(肘ピッチ軸):0度~+160度 J4(手先ピッチ軸):-75度~+120度 J5(手先ロール軸):±158度 グリッパー:90mm(開) |
エンコーダー | インクリメンタルエンコーダー |
制御基板 | VS-WRC058 |
インターフェース | USBシリアル、Wi-Fi(IEEE802.11b/11g/11n) |
SDK | VS-WRC058用 Arduinoライブラリー、ROSパッケージ |
付属品 | 直流安定化電源、固定用クランプ×2、非常停止スイッチ |
備考 | 同製品は屋内専用であり、屋外での使用は想定していない。また、製品の仕様は予告なく変更となる場合がある。 |
ヴイストン株式会社