人の手や指の滑らかな動きと力強さを実現した韓国のヒューマノイド「ALLEX」 動画を公開

韓国を拠点に置くWIRobotics(ワイアイロボティクス)は、2025年8月にヒューマノイド「ALLEX」の動画をYouTUBEで公開した。WIRoboticsは2021年6月にサムスンのロボティクス開発チーム出身の4人のエンジニアによって設立された。We Innovate Roboticsの略称で、「人のための技術、生活の質の向上」をビジョンに掲げて、実験室や産業現場を超えたロボットの日常的な採用を目指している。


WIRoboticsは、これまで背中や腰をサポートする装着型ロボット(ウェアラブルロボット)や、ウェアラブル歩行支援ロボット等で知られていたが、「ALLEX」で上半身のヒューマノイド(セミヒューマノイド)に参入した。


ALLEXは「ALL-EXperience」の略で、視覚認識や位置制御だけでなく、人間のように「力、接触、衝撃」などの物理的刺激に応答する能力が特徴だ。
同社独自のメカニズムと制御技術により開発されたALLEXは、従来のヒューマノイドロボットの限界を超える新たな基準を確立する、としている。


15自由度を持つ高精度ロボットハンドを搭載

技術的に最も大きな「ALLEX」の特徴は、15自由度の高精度ロボットハンド。このハンドは人間の手とほぼ同サイズで、触覚センサーなしでも100gf(1N)という微細な力を検知し、指先の繰り返し精度は0.3mm以下を実現しているという。


指先力は40N、フック把持力は30kg以上と、人間サイズの高自由度ロボットハンドとしては世界クラスの把持性能を示している。


また、新開発の超低摩擦・高負荷アクチュエータにより、従来の協働ロボットアームと比較して10倍以上低い摩擦と回転慣性を実現しているともされる。
重力補償機構を備えた上半身と組み合わせることで、安全な相互作用、高負荷動作、精密制御を可能にしている。


軽量構造も特徴の一つで、ハンドは約700g、肩から下の組み立て部分は約5kgと軽量でありながら、片手で3kg以上の荷物を扱うことができる。これは20kg以上の中型協働ロボットに匹敵する作業能力だ。


WIRoboticsの共同CEO兼CTOであるキム・ヨンジェ氏は次のようにコメントしている。
「ALLEXは単に人間の動きを模倣するだけでなく、真に現実世界を体験し応答する初のロボットです」
同社は2030年までに誰もが日常生活で使用できる汎用ヒューマノイドプラットフォームの提供を目標として掲げている。

同社は今後、ALLEXをモジュラープラットフォームとして展開し、アーム、ハンド、ボディ、リーダーシステムを個別または組み合わせて供給する予定だ。
また、物理AI企業のRLWRLDとの戦略的パートナーシップを通じてALLEXの知能開発を進めており、MIT、UIUC、UMass、KIST、Maxonなどの国内外の研究機関や企業との協力も拡大している。


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神崎 洋治
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神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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