アクセンチュアは、工場や倉庫をソフトウェアが主導する次世代型のスマート施設へと進化させるクラウドソリューション「フィジカルAIオーケストレーター(Physical AI Orchestrator)」を発表した。このソリューションは、NVIDIA Omniverse、NVIDIA Metropolis、およびアクセンチュアのAIプラットフォーム「AI Refinery」を組み合わせたもの。
ソフトウェア主導型のスマート施設では、デジタル上で実際の自動化設備や工場、倉庫を忠実に再現する。これにより不具合が生じた際もデジタルツイン上で問題を検知し、プロセス変更やその影響をリアルタイムかつ正確にシミュレーションできる。その結果に基づき、AIエージェントが具体的な指示を出し、現場が需要や品質、スケジュールの変化に柔軟に対応できるようにする。
フィジカルAIオーケストレーターを活用することで、コンベヤーや産業用ロボット、移動型ロボット、さらに工場や倉庫のレイアウトなどをリアルタイムにデジタルツイン上で構築し、実際の設備を連動させることが可能になる。
具体的な活用事例として、ネットワークおよびデータソリューションを提供するベルデン社は、工場や倉庫での作業員の安全対策として本ソリューションを活用したシステムを開発した。稼働中の作業を止めることなくロボット周辺に「仮想安全フェンス」を設置し、人がフェンス内に入るとロボットが自動的に停止または迂回する。さらに、エッジAIを活用することで作業員や車両、ロボットの動きや設備の経路をセンチメートル単位で検知・モデル化し、フォークリフトが不意に後進するといった想定外の状況にも対応する。本ソリューションは、自動車メーカーの倉庫内で歩行者安全対策として導入される予定である。
あるライフサイエンス企業では、バイオ医薬品やワクチンの理想的な製造条件を実際の設備を使うよりも迅速に検証できるようになった。保存サイクルと乾燥プロセス全体をシミュレーションし、さまざまな温度・圧力を検証した結果、逸脱がいつ、どこで、なぜ発生したかを正確に把握できるようになり、バッチ間のばらつきが減少し、製品の保存期間の延長に貢献した。
ある消費財メーカーは、倉庫のスループットを向上させ、設備投資の削減に成功した。倉庫業務のデジタルツインを構築し、作業員の動き、ピッキング率、コンベヤーシステムを分析することで、スループットのばらつきや非効率なレイアウトを特定した。それを基にレイアウト設計や人員配分を見直し、コンベヤーの流れを最適化することでスループットを20%向上させた。さらに、試行錯誤を重ねて設計を繰り返す必要がなくなり、設備投資を15%削減した。