NTTとTBS、大規模スポーツ中継の完全リモート制作をIOWN APNで実現 放送DX新時代へ

NTT株式会社とNTTドコモビジネス株式会社、NTT東日本株式会社は2025年9月24日、TBSテレビと共同で構築したリモートプロダクションセンターを活用し、大規模スポーツイベントの地上波生放送中継番組でのリモートプロダクションに成功したと発表した。通信にはIOWN APNを使用した。
リモートプロダクションセンターと国立競技場を繋ぐ
今回の取り組みでは、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新規に構築した「リモートプロダクションセンター」と国立競技場を、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(IOWN APN)で接続しました。これにより、制作拠点にとらわれない柔軟な設備環境を実現し、放送各社がめざす規模や距離にとらわれないリモートのライブプロダクションを可能にした。
背景として、映像制作におけるリモートプロダクションなどの映像・音声プロダクションDXは、中継車で多くの機器を現地に用意し、多くのスタッフを現地に派遣する必要があるという業務効率化の課題があった。さらに人口減少による映像・音声系技術者数の不足といった社会課題の解決にも寄与することが期待される。
この取り組みの主なポイント
まず、リモートプロダクションセンターでは、スイッチャーパネルやミキサーなどの映像音声機器をIOWN APNで接続することで、リモートプロダクションを実現。また、大規模スポーツイベントの生放送中継番組における国内で過去最大規模のIOWN APNを用いた非圧縮伝送によるリモートプロダクションに成功している。
IOWN APNの活用により、リモート拠点の映像20チャンネルのリアルタイム送受信を実現した。生放送での無瞬断を実現するため、標準規格のひとつであるSMPTE ST2022-7の機器構成と、IOWN APN回線の物理ルートの完全異ルート化を実現。IOWN APNの超低遅延とゆらぎなしの特性により、ルートの遅延差約60μsの高い安定性を実現した。
更に、5Gスライシングを活用した会場内映像伝送により、会場内観客の様子を機動力の高いIP中継機器で撮影し、混雑環境下でも安定した通信を確保して、撮影映像を地上波生放送で活用した。
本取り組みの成果まとめ
1.リモートプロダクションセンターの構築と運用
TBSテレビとNTTドコモビジネスが新たにリモートプロダクションセンターを共同で立ち上げ、ロード競技や国立競技場内の特設コメンタリーブースの撮影映像と音声をリアルタイムにリモートプロダクションセンターに伝送し、遠隔でのプロダクションを可能とした。
映像や音声、カメラの制御信号やタリー(カメラやモニタについている、録画中・配信中であることを視覚的に示すためのランプ)の伝送の他に、リアルタイム性や揺らぎのない安定した操作が求められるカメラや照明の遠隔コントロールなど、国内で過去最大級の規模のイベントをリモートプロダクションできる環境を構築しました。
5Gスライシング(5G SAにおいてネットワークを仮想的に分割(スライシング)し幅広いニーズに対応したネットワークが提供できる技術)を活用した会場内映像伝送により、会場内観客の様子を、機動力の高いIP中継機器で撮影。混雑環境下でも安定した通信を確保し、撮影映像を地上波生放送で活用しました。
2.大容量、低遅延、ゆらぎなしのIOWN APN
過去最大規模の生放送大規模スポーツイベント中継において、リモート拠点の映像20チャネルのリアルタイム送受信を実現しました。
生放送での無瞬断を実現するために、標準規格のひとつである「SMPTE ST2022-7」の機器構成と、IOWN APN回線の物理ルートの完全異ルート化を実現しました。IOWN APNの超低遅延とゆらぎなしの特性により遅延の変動が発生しない確定遅延で、ルートの遅延差約60μsの高い安定性を実現しました。「SMPTE ST2022-7」とは、IPネットワーク上で放送番組素材信号を伝送する際のネットワーク冗長性(Hitless Protection)に関するSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers:米国映画テレビ技術者協会)の標準規格。
IOWN APNのゆらぎなしの特性による装置間のPTP(マイクロ秒(百万分の一秒)単位の高精度な時刻同期を実現するネットワークの時刻同期規格)を用いた安定した時刻同期で、9日間にわたるイベントを一度もトラブルなく完遂した。
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